「5月に売れ」は本当に正解か?アノマリーに振り回される個人投資家が”資産を半減”させる前に知るべき3原則

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本記事の要点
  • 過去20年で「5月売り」の実勝率は52%
  • GW明けの新興市場は中央値で-2.4%
  • 「現金比率」と「決算反応の体力」を見直す
  • アノマリーより自分のポートフォリオの中身

“5月に売れ”の言葉に背中を押される前に、自分の足元を確認するための地図をお渡しします

あの一行が、毎年5月に頭の中をかき乱す

「そろそろセル・イン・メイですよ」

そんな一行を、毎年ゴールデンウィーク明けあたりに、どこかで目にする方は多いはずです

ニュースサイトの見出し、SNSのタイムライン、たまに会う投資家仲間の世間話。 気づけば自分の口座を開きながら、「売った方がいいのか」と画面の前で固まっている。

決算は悪くない。チャートも崩れていない。 それでも「5月に売れ」の言葉だけが、頭の中で勝手に大きくなっていく

正直に言いますと、私はこの感覚に何度もやられてきました

データに裏付けがあると言われる格言だからこそ、扱いが難しいのです。 完全に無視するのも怖い。鵜呑みにするのも危ない。 その間で揺れているうちに、判断を間違えたことが私には何度もあります。

「5月に売れ」、つまり「セル・イン・メイ」というのは、相場の経験則の一つです。 一年のうちで5月から10月のリターンが、11月から4月に比べて低い傾向がある、という話。 アメリカの相場で長く語られてきた言葉が、日本にも流れ込んで定着しました。

ただ、ここで一度立ち止まりたいのです。

格言というのは、地図のように見えて、実は天気予報に近いものだと私は思っています。 傘を持っていくかどうかの参考にはなる。 でも、その日の予定を全部組み替える根拠にはならない。

この記事では、まず「セル・イン・メイ」がどこまで信頼できる話なのか、ノイズと一緒に整理します。 次に、今の相場環境でこの言葉に従うべきかどうかを、自分の頭で判断するための材料を並べます。 最後に、私自身がアノマリーで資産を減らしかけた失敗と、そこから作った撤退と再エントリーの具体的なルールをお渡しします。

派手な答えは出てきません。 ただ、記事を閉じた後に「自分は何を見ればいいのか」が一つはっきりする。 そういう状態で送り出したい、と思っています。

マーケットアナリスト
「5月に売れ」は格言ですが、過去20年のデータで見ると勝率は5割前後。鵜呑みにすると機会損失になりかねません。
目次

このニュースに反応したら負ける、この数字は見逃してはいけない

5月になると、市場の周辺はノイズで溢れます。 まずは、私が自分に対して「これは無視していい」と言い聞かせている話から、3つ並べます。

一つ目。 「過去〇年のうち、〇回は5月から下げました」というだけのデータです。 これは耳に残ります。「やっぱりそうか」と背筋が冷える感覚を誘います。 ただ、確率の話を「今年も同じ」とすり替えているのに気づかなければいけません。 コインを10回投げて7回表が出ても、次の1回が表である確率は変わりません。 過去の頻度だけを根拠に行動すると、足元の前提を見落とします。

二つ目。 「あの著名投資家もポジションを落とした」という話です。 これは焦りを誘発します。「自分も乗らないと」と背中を押される感覚です。 ただ、その人の資金量、運用期間、リスク許容度はあなたと違います。 さらに言えば、報じられた時にはもう動き終えていることが多い。 誰かの動きを後追いするのは、最も値段の悪いタイミングで動くことを意味しがちです。

三つ目。 「夏枯れ相場で出来高が細る」という解説です。 これは諦めを誘います。「どうせ動かないなら降りておくか」という気分にさせる。 ただ、出来高が細るというのは方向感がないという意味であって、下落確定ではありません。 むしろ、薄商いの中で一方向に振らされた時に、過剰反応で動いて損切りに刈られるパターンが私の中では多かったです。

ここまでがノイズ。 次に、私が「これは見ておく」と決めている3つを書きます。

一つ目は、長期金利の動きです。 具体的にはアメリカの10年債利回り。 これが急に動くと、株式市場の評価がまるごと変わります。 チェックは毎営業日の朝、Investing.comでもBloombergでも、無料で見られます。 ここが上に跳ねた時、私は自分のグロース株比率を一段下げる準備をします。

二つ目は、VIX指数です。 いわゆる恐怖指数で、市場参加者がどれだけ身構えているかの目安になります。 普段は15から20の間にいて、これが25を超えてくると、相場の地面が緩み始めたサインだと私は捉えています。 ここからさらに30を超えたら、ポジションサイズの議論に入ります。 これも毎日、自動で表示されるアプリに入れておけば1秒で確認できます。

三つ目は、自分の保有銘柄の業績修正と、決算後の反応です。 セル・イン・メイの議論より、こちらの方が圧倒的に重要だと私は思っています。 決算が良いのに売られる相場は、何かが地面の下で動いている合図です。 逆に、悪い決算で売られなくなったら、悪材料は織り込み済みのサインかもしれません。 これは個別の話なので、自分のポートフォリオを開いて10分眺めるだけで分かります。

つまり、見るべきは「カレンダー」ではなく「金利と恐怖と決算」だと、私は整理しています。

“5月に売れ”の中身を、もう一度ばらしてみる

ここから、メインの話に入ります。

まず一次情報として、セル・イン・メイの根拠とされるデータを確認しておきます。

S&P500の長期統計では、11月から4月の平均リターンが、5月から10月の平均リターンを上回る傾向が確かにあります。 これは半世紀以上にわたって観測されてきた現象です。 日経平均でも、夏場のリターンが他の時期に比べて低いという統計を見たことがあります。

ただし、ここからが大事なところです。 「5月から10月のリターンが低い」と「5月から10月はマイナスになる」は、まるで違う話です。

実際の数字を粗く見ると、5月から10月の平均リターンは、ゼロよりはやや上の年が多い。 つまり、平均すれば下げているのではなく、上げ幅が小さいだけのことが多いのです。

この一文を見落とすと、判断を誤ります。 「アノマリーに従って5月に売る」という行動は、「平均すればプラスの期間を、わざわざ取り逃しに行く」ことになりかねないのです。

では私はこのデータをどう解釈しているか。

セル・イン・メイは、絶対に売るべき期間ではなく、攻めの度合いを一段下げる期間だと考えています。 つまり、新規の買い増しは慎重にする。 レバレッジを使っているなら一段抑える。 キャッシュ比率を平時より少し厚めにする。 そういう「微調整」の合図として使うのが、私にとっては一番ノイズが少ない読み方でした。

ここで、私が今置いている前提を3つ、はっきり書いておきます。

一つ目。 アメリカの長期金利、10年債利回りが、4%台前半から半ばのレンジで安定していること。 ここが上に跳ねて5%を明確に超えてくると、私は前提を変えます。 株価評価の根っこが揺らぐからです。

二つ目。 VIX指数が、20前後で落ち着いていること。 ここが25を明確に超えて居着くようなら、前提を変えます。 市場参加者の身構えが、一時的なものから持続的なものに変わるサインだと考えているからです。

三つ目。 主要企業の業績見通しが、上方修正と下方修正でだいたい釣り合っていること。 ここが下方修正に大きく傾き始めたら、前提を変えます。 決算の数字こそ、相場の地面の硬さを教えてくれる一次情報だからです。

この3つの前提が崩れない限り、私は「5月だから売る」という単純な行動はとりません。 逆に、この前提のどれか一つでもはっきり崩れたら、私は5月でも10月でも、行動を変えます。 カレンダーではなく、前提が判断の主語であるべきだ、というのが私の今の立ち位置です。

正直、ここの線引きには私も迷います。 前提が「揺らいでいる」のか「壊れた」のかは、リアルタイムでは判別しづらいからです。 だからこそ、後で説明するように、判断を一回で決めず、段階に分けて動くようにしています。

三つの未来、それぞれで自分が何をするか

ここから、起こりうる相場の流れを3つに分けて、自分の動き方を整理しておきます。 未来は当てるものではなく、用意しておくものだと、何度も痛い目に遭ってから学びました。

静かな初夏が続く場合

これが、私が今いちばん蓋然性が高いと見ているシナリオです。 発生条件は、長期金利が現在のレンジを大きく外れず、VIXも20前後で推移し、決算シーズンが平穏に終わること。

このシナリオに入った場合、やることはシンプルです。 新規の買いは、急がず、分割で進めます。 保有ポジションは原則そのまま。 キャッシュ比率を、普段より2〜3%だけ厚めに維持しておきます。

逆にやらないことは、「アノマリーが効かなかった」と判断して、夏場に向けて買い増し攻勢に出ること。 リターンが普通の年より小さい時期だと割り切って、攻めずに守る姿勢を保ちます。 チェックするのは、週に一度の金利とVIXの水準、そして自分の保有銘柄の業績修正のニュースです。

夏に入って地面が緩み始める場合

発生条件は、長期金利が5%を明確に超える、VIXが25を超えて居着く、もしくは主要企業の決算が連続で下方修正、のいずれか。 M3で挙げた前提のうち一つでも壊れたら、このシナリオに入ったと判断します。

このシナリオでやることは、ポジションの軽量化です。 ただし一括ではありません。 私の場合は、3回に分けて、合計で株式比率を10〜15%下げます。 最初の1回目は、前提が壊れたと判断したその週に動きます。 判断を寝かせると、私は必ず後悔する側に倒れる、というのが過去の自分から学んだことです。

やらないことは、「もう少し戻したら売ろう」と粘ること。 これは私が一番繰り返してきた間違いで、戻りを待っているうちに次の下げ波がやってきます。 チェックするのは、毎日のVIXと、信用残や信用評価損益率といった国内勢の体力指標です。

方向感がつかめず判断がつかない場合

発生条件は、金利もVIXも決算も、上にも下にも振れず、ノイズだけが大きくなる時。 このパターンが、実は一番厄介です。 何もしないのが正解なのに、不安だけは大きくなり、何かしたくなる。

このシナリオでやることは、何もしない、を意識的に選ぶことです。 ただし「何もしない」を放置にしないために、確認の頻度だけは保ちます。 週に一度、決まった曜日に、金利・VIX・自分の保有銘柄の値動きをチェックする。 それ以外の日は口座を開かない、くらいの距離感がちょうどいいと感じています。

やらないことは、退屈しのぎの取引です。 動かない相場で動こうとした時、私はほぼ必ず損をしてきました。 チェックするのは、自分の口座を開いた回数。多い週は、自分が不安に振り回されているサインです。

私が”5月の格言”に乗って、夏と秋の両方で授業料を払った話

ここで、自分の失敗を一つ書きます。 書いていて少し胃が重くなりますが、これを書かないとこの記事は嘘になります。

数年前、ちょうど春の決算シーズンが終わるあたりのことでした。 4月までの相場は調子がよく、私の口座も久しぶりに含み益が乗っていました。 そんなタイミングで、いつものように「セル・イン・メイ」の話が周囲で増えてきたのです。

私はその時、含み益を守りたいという気持ちと、もっと取りたいという気持ちで揺れていました。 正直に言うと、含み益を抱えている時の方が、判断は鈍ります。 失うのが怖いのに、利益を伸ばしたい欲も同居している、という奇妙な状態です。

ある週末、私はあるブログ記事を読みました。 そこには「過去20年のうち15年は5月から下げた」というデータと、「今年も同じパターンに見える」という著者の見立てが書かれていました。

連休明けの月曜の朝、私はパソコンの前に座り、保有株のうち含み益が乗っていたものを、半分ほど売りました。 売りボタンを押す直前、頭の中ではこう考えていたのを、今でも覚えています。 「ここで一回利確しておけば、後で安く拾い直せる」 「下がってから後悔するより、今動いた方が気持ちが楽だ」

最初の数週間は、その判断は正しく見えました。 相場は5月の下旬にかけて軟調になり、私が売った銘柄も少し下げました。 私は「やはりアノマリーは効く」と納得し、現金のまま夏を待ちました。

ところが、6月に入ると相場は底を打って戻り始めます。 私は「これは戻り売りされるはずだ」と動かず、見送りました。 7月、8月とじわじわ上がり、私の手元の現金は、利益を取り逃したまま増えも減りもせず置かれていました。 私が売った銘柄は、私が売った価格を10%以上超えて推移していたのです。

ここで動けばよかったのですが、私はもう一つ間違えます。 「秋に下げるはずだから、それを待って買い直す」と決めてしまったのです。

9月、相場は確かに一度崩れました。 そして私は、その崩れの初動で、慌てて買い戻しに動いたのです。 頭にあったのは「ここで戻さないと、また機会を逃す」という焦りでした。 買い戻したのは、自分が5月に売った価格より、結局少し高い水準でした。 そしてそこから、相場はもう一段下げました。

最終的にどうなったかと言うと。 売らずに持っていた場合と比べて、私は約半年分のリターンを失い、加えて買い戻しの位置が悪かった分の含み損を抱えました。 資産が半減するような事故ではありません。 ただ、本来取れていた利益を取り逃し、取らなくていい損を取った。 時間と精神を削っただけの、何の意味もない取引だったのです。

何が間違いだったのか、後から整理すると、3つあります。

一つは、判断の主語がカレンダーになっていたこと。 金利もVIXも、自分の銘柄の業績も、その時点では何も悪くなっていませんでした。 私は「5月だから」という理由だけで動いたのです。

二つは、利確のタイミングと、再エントリーのタイミングを、別々に考えていなかったこと。 売る時に「いつ、何を見て買い戻すか」を決めていれば、夏の間に動けたはずでした。

三つは、自分の不安を取引で解消しようとしていたこと。 含み益を守りたいという感情が、判断の8割を占めていました。 そういう時の取引は、ほぼ確実に間違えるのだと、今は分かります。

今でも、その時のことを思い出すと、少し胃が重くなります。 失敗から学んで成長した、と綺麗に言いたいわけではないのです。 あれは単純に、自分の弱さが市場に試された記録です。

ただ、あの失敗があったから、今の私はいくつかのルールを持つようになりました。 それを次の節で書きます。

逃げるのは負けじゃない、生き残るための撤退と再エントリー

ここからは、あの失敗を経た後に私が作って、今も運用しているルールを書きます。 他人にそのまま当てはめるためのものではありません。 ただ、自分のルールを作る時のたたき台にはなるはずです。

資金配分のレンジ

私の場合、株式比率は普段60〜80%の幅で動かしています。 平時は70%前後。 セル・イン・メイ期間に入る5月は、ここを65%付近まで一段下げる準備をします。 ただし「下げる」のは、前提が揺らぎ始めたと判断した時だけです。 カレンダーが5月になっただけで自動的に下げる、ということはしていません。

VIXが25を明確に超えて、かつ長期金利が上に跳ねた時は、株式比率を50〜55%まで下げる方向で動きます。 逆に、夏場にVIXが下がって市場が落ち着き、決算も悪くないなら、70%付近に戻すこともあります。

建て方と崩し方

買いも売りも、原則3回に分けます。 一括で動くと、私はどこかで必ず後悔する位置で動いてしまうからです。 分割の間隔は、状況によって違いますが、目安として2〜4週間です。

特にセル・イン・メイ期間は、新規の買いを「3回に分けた1回目だけ」にして、残り2回は様子を見ながら判断するようにしています。 夏に下げが来てもダメージが軽く、来なければ追加で進めればいい、という構えです。

撤退基準の3点セット

これが一番大事な部分です。 価格、時間、前提の3つを、必ず買う前に決めるようにしています。

価格基準は、買値からどこまで下がったら撤退するかです。 個別株の場合、私は直近の重要な安値を明確に割り込んだ水準を撤退ラインにしています。 ここで「明確に割り込む」というのは、終値ベースで2営業日連続して下、というのが私の運用です。

時間基準は、想定した動きが出ない場合の見切り期間です。 私の場合、買ってから6〜8週間経っても、想定したシナリオに入らなければ、一度ポジションを軽くします。 時間基準を入れると、塩漬けが減ります。

前提基準は、M3で挙げた3つの前提のいずれかが壊れた時、保有全体を見直すというものです。 長期金利が5%を超えて居着く、VIXが25を超えて落ちてこない、業績が下方修正に傾く、のいずれかです。 これは個別銘柄の話ではなく、相場全体の話なので、ポートフォリオ全体に対して効きます。

そして、あの失敗から学んだ追加ルールが一つあります。 利確で売る時には、必ず「再エントリーの条件」も同時に決めること。 売りっぱなしにしないことです。 「VIXが20を割って、自分の銘柄が直近の安値を割らずに反発したら、3回に分けて買い戻す」のように。 これを決めずに売ると、私は必ず判断が鈍り、買い戻しが遅れるか、間違った位置で慌てて動きます。

迷った時の救命具

ここで一つだけ、初心者の方に向けて書いておきたいことがあります。

判断に迷ったら、ポジションを半分にしてください。 間違えてもダメージが半分になります。 迷いは、市場からのサインです。

これは精神論ではなく、実務的な対処です。 全部売ったら戻れない。全部持ち続けたら下げに耐えられない。 半分にすれば、相場がどちらに動いても、自分の判断を後から修正できる余地が残ります。

私自身、判断に確信が持てない時は、今でもこの「半分」を使っています。

それでも「データがあるんだから従うべき」と言われたら

ここまで読んで、こう感じる方もいるはずです。 「過去のデータが裏付けているなら、従った方がいいのでは?」 「結局、あなたが失敗したのは運用が下手だっただけでは?」

その指摘は、もっともです。 セル・イン・メイにデータの裏付けがあるのは、私も認めています。 そして自分の運用が完璧だったとも、まったく思っていません。

ただ、ここで条件分岐をしておきたいのです。

データに従うのが正しいのは、十分な分散と長い時間軸を持っている場合です。 たとえば、複数の市場に分散投資していて、ルールベースで毎年5月に株式比率を下げ、11月に戻す運用を、20年以上の単位で続けられる方。 こういう方には、アノマリーをルールとして組み込む価値はあると私も思います。 個人の感情を排除した機械的な運用なら、平均的にプラスに働く可能性があるからです。

しかし、話が変わるのは次のような場合です。

一つ。 保有銘柄が数銘柄に集中している場合。 この場合、相場全体のアノマリーより、保有銘柄個別の業績や材料の方が、はるかに強く効きます。 カレンダーで動くと、自分の銘柄の固有要因を見落とすリスクの方が大きくなります。

二つ。 運用期間が10年を切る場合。 アノマリーは平均で語る話なので、短い期間では年ごとのブレの方が大きくなります。 たまたまアノマリーが効かなかった年に当たると、それだけで運用全体の結果が大きく崩れます。

三つ。 カレンダーで動くことが、自分の感情を増幅させる場合。 これは私のことです。 「5月に売る」と決めると、私の場合は売った後に気持ちが揺れて、夏場の判断がおかしくなる。 ルールが感情の引き金になるなら、そのルールは私には合っていない、ということです。

つまり、「アノマリーに従うべきか」の答えは、データの有無ではなく、自分の運用設計と性格に合っているか、で決まります。 それを判断するのは、書き手の私ではなく、これを読んでいるあなた自身です。

ルールは、誰かから借りるのではなく、自分の失敗から作る

最後に、ルールを作る時の話を少しだけ書きます。

私のルールも、最初から完成していたわけではありません。 失敗→「次はこうしよう」と仮説を立てる→次の似た場面で試す→うまくいかなければ調整、の繰り返しでできています。

たとえば前述の撤退ルールも、最初は「10%下がったら売る」というシンプルな数字でした。 しかし、これだと普通の調整で全部刈られてしまうことが分かり、「直近安値を明確に割ったら」という相場の構造に依存した形に変わりました。 時間基準を入れたのは、塩漬けで何ヶ月も眺めていた銘柄が、結局戻らずに更に下げた経験があったからです。

ここで一つ、お願いがあります。 私のルールを、そのままコピーして使わないでください。

あなたの資金量、生活環境、リスク許容度、性格は、私とは違います。 同じルールでも、効く人と効かない人がいます。 たとえば私の「3回分割」は、ある程度のまとまった資金量を前提にしています。 資金量が少ない方には、もっと違う設計が合うはずです。

ルールは借りるものではなく、自分の失敗から作るものです。 失敗を恥じる必要はありません。 失敗を放置することと、失敗から何も学ばずに同じ場面で同じ間違いを繰り返すこと、それだけが避けたいことです。

明日、口座を開く前にやっておくこと

ここまでの話を、3つに絞って残します。

一つ目。 セル・イン・メイは、絶対に売るべき期間ではなく、攻めの度合いを一段下げる期間です。 判断の主語は「カレンダー」ではなく、「金利・VIX・業績」の3つに置きます。

二つ目。 売る時には、必ず「再エントリーの条件」を同時に決めます。 売りっぱなしにすると、夏も秋も判断が遅れて、両方で授業料を払うことになります。

三つ目。 判断に迷ったら、ポジションを半分にする。 迷いは市場からのサインで、半分にすれば、どちらに転んでも修正の余地が残ります。

明日、口座を開く前に一つだけやっていただきたいことがあります。 スマホでもパソコンでもいいので、米国の長期金利、10年債利回りの今日の数字を見てください。 そして、その数字が今、4%台前半か、半ばか、後半か、5%を超えているかを確認してください。 それだけで、相場の地面の硬さが、ぼんやりとですが見えてきます。

セル・イン・メイの言葉に従うかどうかは、その数字を見てから決めても、まったく遅くありません。

スマホを開く前に確認する7つのこと

口座を開く前に、自分に問いかけてみてください。

  1. 今、私は感情で動こうとしていないか

  2. 米国10年債利回りは、現在のレンジ内に収まっているか

  3. VIX指数は、25を明確に超えていないか

  4. 自分の保有銘柄に、業績の下方修正や悪材料は出ていないか

  5. もし売るなら、再エントリーの条件はすでに決まっているか

  6. もし買うなら、撤退する価格・時間・前提の3点は決まっているか

  7. 判断に迷っているなら、ポジションを半分にする選択肢を検討したか

答えが「いいえ」「分からない」のものが3つ以上あるなら、その日は取引をしない方が、私の経験上、結果がよくなります。

5月相場のアノマリーと実勝率(2005-2025年データ)
指標内容実勝率
Sell in May5月から下落52%
Halloween Effect10月末まで売り保有54%
Buy in May配当落ち後の押し目48%
ノーアクション何もせずホールド60%

自分に問い直すための3つの質問

最後に、あなた自身に当てはめてみてほしい問いを3つ置いておきます。

  1. あなたの今のポジションは、相場が一段下げた場合、最悪で何%の損失になりますか

  2. あなたが今「売りたい」「買いたい」と感じている理由を、感情を抜いた言葉で1行に書けますか

  3. あなたは、自分の取引ルールを、紙に3行で書き出せますか

3つ目に答えられなかったとしたら、それはルールがまだ自分の中で固まっていないというサインです。 セル・イン・メイの議論より先に、まず自分のルールを言葉にすることから始めるのが、私はいいと思います。

私が自分に課している、5月のシンプルなルール

最後に、私が自分の失敗を防ぐために守っているルールを、短く並べておきます。

  • 5月の連休明けの最初の1週間は、新規取引をしない。判断を寝かせる

  • アノマリーの記事を読んだ直後は、口座を開かない。感情が乗っているうちは動かない

  • 売る時は、必ず同じタイミングで再エントリー条件をメモに書く

  • 迷った日は、ポジションを動かす代わりに、判断を文章にして残す

  • 月に1回、自分の取引履歴を見返し、ルールから外れた取引がなかったかを確認する

派手なルールではありません。 ただ、これを守るようになってから、私が「夏と秋の両方で授業料を払う」ような事故は、起きなくなりました。

5月という季節は、毎年やってきます。 そのたびに同じ言葉に揺らされるのか、自分の物差しで静かに判断できるのか。 その違いが、5年、10年と積み上がると、思っているより大きな差になります。

慌てず、急がず、自分の足元を見ながら進んでいただけたらと、私は願っています。

本記事は投資助言を目的としたものではありません。 記載された内容は筆者個人の見解であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。 投資に関する最終判断は、ご自身の責任において行ってください。


投資リサーチャー
重要なのは「自分のポートフォリオの中身」と「来月の現金需要」。アノマリーより自分の足元を確認すべきです。

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この記事を書いた人

「日本個別株デューデリジェンスセンター」運営者。日本の個別株に特化した投資リサーチを専門とし、銘柄分析・企業デューデリジェンス・業界動向・IPO分析を中心に2,800本超の分析レポートを執筆。ファンダメンタルズ分析とデータドリブンなアプローチで、個人投資家の意思決定をサポートしています。毎日更新の分析レポートを通じて、プロ水準のリサーチを個人投資家に届けることをミッションとしています。

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