エグゼクティブサマリー
城南進学研究社(4720)は、1961年の「城南予備校」設立以来、日本の教育業界において長年にわたり事業を展開してきた企業である。伝統的な予備校事業から、個別指導、オンライン学習、幼児教育へと事業領域を拡大し、現在は「総合教育ソリューション企業」としての地位確立を目指している。しかし、近年の業績は厳しく、連続的な赤字計上や財務基盤の悪化に直面している。
直近の2025年3月期決算では、売上高56億23百万円(前期比3.9%減)、営業損失2億30百万円、純損失4億20百万円と、減収減益に加え赤字幅も拡大した。不採算教室の整理に伴う特別損失の計上も影響している。同社は2024年3月期から2026年3月期までを対象とする中期経営計画を策定し、「学びの個別最適化と教室力の強化」「付加価値の高い幼少教育事業の新展開」「教育格差を是正する教育ソリューション事業の積極的展開」「攻めの収益構造改革」「理念経営を具現化する人財の育成」を5つの柱としている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | 城南進学研究社(4720) |
| 証券コード | 4720(東証スタンダード) |
| 設立 | 1961年4月(城南予備校として創業) |
| 本社所在地 | 神奈川県川崎市 |
| 主な事業 | 個別指導塾、オンライン学習、幼児教育、EdTech |
| 代表ブランド | 城南コベッツ、デキタス、くぼたのうけん |
| 売上高(2025年3月期) | 56億23百万円 |
| 営業損益(2025年3月期) | ▲2億30百万円 |
| 自己資本比率 | 27.5%(前期38.6%から低下) |
| 時価総額区分 | 小型株(スタンダード市場) |
I. 企業概要とビジネスモデル
A. 設立経緯と事業の変遷
同社は、1961年4月に「城南予備校」として神奈川県川崎市で創業し、大学受験予備校事業を開始した。1982年9月には株式会社城南進学研究社として法人化され、以来、教育市場の変化に対応しながら事業を拡大してきた。主な歴史的転換点としては、1999年4月の日本証券業協会への株式店頭登録(現東証スタンダード市場上場)、2002年の個別指導塾事業への参入、そして近年のオンライン学習や幼児教育分野への進出が挙げられる。
長年にわたり受験指導で培ってきたノウハウとブランド力を基盤としつつも、少子化や教育ニーズの多様化といった外部環境の変化を受け、同社は「総合教育ソリューション企業」への転換を志向している。この変革は、教育コンテンツのデジタル化、個別最適化された学習プログラムの提供、さらには教育格差の是正といった社会的課題への対応も視野に入れた戦略的な動きと解釈できる。
| 年 | 主な出来事 |
|---|---|
| 1961年 | 神奈川県川崎市で「城南予備校」創業 |
| 1982年 | 株式会社城南進学研究社として法人化 |
| 1999年 | 日本証券業協会へ店頭登録(現東証スタンダード) |
| 2002年 | 個別指導塾「城南コベッツ」参入 |
| 2010年代 | オンライン教材「デキタス」開発・幼児教育参入 |
| 2023年 | 中期経営計画策定、理念経営人財育成委員会発足 |
| 2025年 | 「城南予備校DUO」→「城南予備校オンライン」完全移行 |
B. 主要事業セグメント
同社は、多岐にわたる教育サービスを複数のブランドで展開している。予備校・個別指導セグメントでは、「城南予備校オンライン」がプロ講師の授業を全国へ配信し、「城南コベッツ」がAI教材「atama+」を活用した個別最適化学習を提供している。「城南医志塾」や「城南AO対策塾」など専門特化型指導も運営する。
デジタル学習ソリューションとしては、小中学生向けオンライン教材「デキタス」を学校・法人向けにも提供。教育格差解消を目指す「みんなにまなびをプロジェクト」や、法人向けポータルサイト「みんなのまなびライブラリー」も展開し、BtoBtoCモデルの新収益源を模索している。
幼児教育分野は中期経営計画で最も注力する成長領域であり、0歳からの脳育プログラム「くぼたのうけん」、STEAM教育の「キッズブレインパーク」(FC展開開始)、算数教室「りんご塾」、認可保育所「城南ルミナ保育園」「ふぇありぃ保育園」を運営する。語学教育では「Zoo-phonics Academy」や法人向け英語研修のアイベックも擁する。
| 事業領域 | 主要ブランド | 特徴・戦略 |
|---|---|---|
| 個別指導 | 城南コベッツ | AI教材「atama+」活用、FC展開 |
| オンライン予備校 | 城南予備校オンライン | プロ講師の映像授業を全国配信 |
| 幼児教育 | くぼたのうけん | 0歳~脳育プログラム、独自メソッド |
| STEAM教育 | キッズブレインパーク | 2025年3月期よりFC展開開始 |
| 算数教室 | りんご塾 | 思考力・問題解決型、コベッツ併設 |
| デジタル教材 | デキタス | 小中向けBtoC+不登校支援BtoB |
| 法人ソリューション | まなびライブラリー | BtoBtoCポータル、教育格差是正 |
| 語学教育 | Zoo-phonics / アイベック | 子供英語スクール+法人研修 |
II. 詳細財務実績分析
A. 過去5年間の財務トレンド
過去5年間の財務状況は厳しい経営環境を反映している。売上高は2022年3月期の62億54百万円から2025年3月期には56億23百万円へと減少傾向にある。営業利益は2024年3月期に30百万円の黒字を確保したものの、2025年3月期には2億30百万円の赤字に転落した。ROEは2025年3月期で-25.4%と極めて低い水準にある。
| 指標 | 2021/3 | 2022/3 | 2023/3 | 2024/3 | 2025/3 | 2026/3(予) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高(百万円) | 5,805 | 6,254 | 6,126 | 5,851 | 5,623 | 6,208 |
| 営業利益(百万円) | ▲207 | 17 | ▲162 | 30 | ▲230 | — |
| 純利益(百万円) | ▲169 | ▲80 | ▲175 | ▲122 | ▲420 | — |
| EPS(円) | ▲24.2 | ▲11.5 | ▲25.1 | ▲17.5 | ▲60.3 | — |
| 自己資本比率 | 44.5% | 41.8% | 39.8% | 38.6% | 27.5% | — |
| ROE | ▲5.4% | ▲2.1% | ▲4.5% | ▲6.5% | ▲25.4% | — |
| 配当(円) | 5 | 5 | 0 | 0 | 0 | 5(予) |
B. 2025年3月期決算の詳細
2025年3月期の連結業績は、売上高56億23百万円(前期比3.9%減)、営業損失2億30百万円(前期は30百万円の営業利益)、純損失4億20百万円(前期は1億22百万円の純損失)となった。不採算教場の整理に伴う減損損失1億9百万円を特別損失として計上したことが大きく影響している。四半期ごとの推移を見ても赤字基調が継続しており、特に第4四半期(2025年1月~3月)は営業損失2億10百万円、売上高営業利益率は-16.1%にまで悪化した。
C. 貸借対照表とキャッシュ・フロー
2025年3月期末の財務体質の悪化が顕著である。総資産52億30百万円に対し負債合計は37億91百万円(前期比26.7%増)と急増。長期借入金が4億45百万円増加したことが主因である。純資産は14億38百万円(前期比23.6%減)、自己資本比率は27.5%へ大幅低下した。
キャッシュ・フローでは、営業CFが68百万円のマイナス(前期は70百万円のプラス)に転落。投資CFは1億65百万円の支出超過、財務CFは長期借入8億5百万円により4億1百万円の収入超過となった。期末現金残高は15億60百万円を維持しているが、本業でキャッシュを生み出せていない状況は重大な懸念材料である。
| キャッシュ・フロー区分 | 2024/3 | 2025/3 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 営業CF(百万円) | +70 | ▲68 | ▲138 |
| 投資CF(百万円) | ▲120 | ▲165 | ▲45 |
| 財務CF(百万円) | +150 | +401 | +251 |
| 期末現金残高(百万円) | 1,392 | 1,560 | +168 |
III. 中期経営計画と成長戦略
同社は厳しい経営環境を打開するため、5つの基本戦略を柱とする中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)を推進している。第1の柱「学びの個別最適化と教室力の強化」では、AI教材「atama+」やオンライン教材「デキタス」を活用し、「フリープラン・スタディ」(定額通い放題)で学習量と質の向上を図る。第2の柱「付加価値の高い幼少教育事業の新展開」では、「キッズブレインパーク」のFC展開や「くぼたのうけん」のオンラインコンテンツ拡大を進める。
第3の柱は「教育格差を是正する教育ソリューション事業」で、FC展開の推進と「みんなのまなびライブラリー」による法人向けサービス拡大が中心。第4の柱「攻めの収益構造改革」では、不採算教室の整理統合、RPA導入による業務効率化、DX推進に取り組む。第5の柱は「理念経営を具現化する人財の育成」で、成果主義の新人事制度導入(2025年4月)や次世代リーダー育成を推進する。
戦略的提携にも積極的で、明光ネットワークジャパンとは「りんご塾」などのブランド相互展開を、学研ホールディングスとはメタバースを用いたオンライン自習室の試運営などを進めている。2026年3月期の財務目標は売上高62億8百万円、営業利益率10%と設定されているが、現状の営業利益率(計画値0.4%)からの大幅改善が必要であり、達成のハードルは極めて高い。
| 指標 | 2025/3実績 | 2026/3目標 | 必要改善幅 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,623百万円 | 6,208百万円 | +10.4% |
| 営業利益率 | ▲4.1% | 10.0% | +14.1pt |
| 営業利益 | ▲230百万円 | 約621百万円 | +851百万円 |
| 配当 | 0円 | 5円 | 復配 |
IV. 事業運営ハイライトと競争環境
生徒数動向では、個別指導部門の高校生の減少が課題だが、小学生向けは「りんご塾」の導入効果で増加している。大学入試制度の変化(総合型・学校推薦型選抜の拡大)が従来型の受験指導需要を変質させていることが背景にある。「城南コベッツ」の「フリープラン・スタディ」は、指導満足度98.9%、成績アップ実感93.5%と高い評価を得ており、AI教材「atama+」による個別最適化学習も進んでいる。
FC事業は成長の柱だが、オーナーの高齢化や後継者問題、一部教室の品質管理が課題である。競争環境は厳しく、ナガセ(9733)の東進ハイスクール、学研ホールディングス(9470)、ベネッセホールディングス(9783)の進研ゼミなど大手に加え、atama plus(非上場)やスタディサプリ(リクルート(6098))などEdTechスタートアップも台頭。少子化が進む中で、市場パイの縮小と競争激化の二重苦に直面している。
| 企業名 | コード | 主力事業 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 城南進学研究社(4720) | 4720 | 個別指導・幼児教育 | EdTech転換中、小型株 |
| ナガセ(9733) | 9733 | 東進ハイスクール | 映像授業の大手、高収益 |
| 学研HD(9470) | 9470 | 学研教室・出版 | 総合教育グループ |
| ベネッセHD(9783) | 9783 | 進研ゼミ・たまひよ | 通信教育最大手 |
| リクルート(6098) | 6098 | スタディサプリ | EdTechプラットフォーム |
| 明光ネットワークジャパン | — | 明光義塾 | 個別指導FC最大手(提携先) |
V. リスク分析とSWOT
| リスク要因 | 影響度 | 発生可能性 | 対応策 |
|---|---|---|---|
| 少子化の進行 | ★★★★★ | ★★★★★ | 幼児教育・EdTech強化 |
| 競争激化 | ★★★★ | ★★★★★ | AI活用・独自プログラム開発 |
| 財務体質の悪化 | ★★★★★ | ★★★★ | 不採算整理・構造改革 |
| 中計実行リスク | ★★★★ | ★★★★ | 段階的KPI管理・提携推進 |
| 入試制度変化 | ★★★ | ★★★★ | 推薦・AO対策塾の展開 |
| FC品質管理 | ★★★ | ★★★ | 研修体制強化・品質モニタリング |
| 人材確保 | ★★★ | ★★★ | 新人事制度・講師育成組織 |
| 風評リスク | ★★★ | ★★ | ブランド管理・CS向上 |
| SWOT | 内容 |
|---|---|
| 強み | 「城南」ブランド認知度 / 幼児~社会人の多様なポートフォリオ / 独自プログラム(くぼたのうけん・デキタス) / AI教材活用 |
| 弱み | 連続赤字・財務悪化 / 伝統事業の生徒数減少 / FC教室の品質ばらつき / 高コスト構造 |
| 機会 | EdTech市場拡大 / 幼児教育・早期教育の需要増 / BtoB教育ソリューション / 教育格差是正への社会的ニーズ |
| 脅威 | 少子化の加速 / 大手・EdTech企業の競合激化 / 入試制度変更 / 景気悪化による教育支出削減 |
VI. 投資見通しと総括
城南進学研究社(4720)の投資プロファイルは、ハイリスク・ハイリターンの再建型銘柄と位置づけられる。フィスコのレポートは、中期経営計画の方向性自体は合理的と評価しつつも、財務目標の達成には多くの不確実性が伴うとの見方を示している。
株価のカタリストとしては、中期経営計画の目標達成(特に2026年3月期の黒字化と復配)、新規事業(幼児教育・EdTech)の成長加速、戦略的提携の具体的成果が挙げられる。一方で逆風要因としては、中期経営計画の未達、少子化の加速、自己資本比率のさらなる低下、不採算事業の追加的な減損損失計上などがある。
| 成長ドライバー | 時間軸 | インパクト | 実現可能性 |
|---|---|---|---|
| 幼児教育FC展開 | 短期~中期 | ★★★★ | 中 |
| デキタスBtoB拡大 | 中期 | ★★★ | 中~高 |
| 不採算教室整理完了 | 短期 | ★★★★ | 高 |
| AI活用による教室生産性向上 | 中期 | ★★★ | 中 |
| 戦略的提携の成果創出 | 中期~長期 | ★★★★ | 低~中 |
| 復配(年5円) | 短期 | ★★★★★ | 中 |
総合的に、同社は日本の教育業界における構造的変化の中で、伝統的な強みを活かしつつ新たな事業モデルへの転換を図っている最中にある。中期経営計画に掲げた戦略の方向性は合理的であるが、その実行の確実性は依然として不透明であり、投資判断にあたっては中計進捗の四半期ごとのモニタリングが不可欠である。特に2026年3月期の業績が、同社の中長期的な企業価値を見極める上での重要な分水嶺となるだろう。
| KPI | 2024/3 | 2025/3 | トレンド | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高成長率 | ▲4.5% | ▲3.9% | → | ⚠️ 減収継続 |
| 営業利益率 | 0.5% | ▲4.1% | ↓↓ | 🔴 大幅悪化 |
| 自己資本比率 | 38.6% | 27.5% | ↓↓ | 🔴 危険水域 |
| 営業CF | +70百万 | ▲68百万 | ↓↓ | 🔴 マイナス転落 |
| ROE | ▲6.5% | ▲25.4% | ↓↓ | 🔴 深刻 |
| 配当 | 0円 | 0円 | → | ⚠️ 無配継続 |
城南進学研究社(4720)はどんな会社ですか?
城南予備校を母体とする総合教育企業です。個別指導塾「城南コベッツ」、オンライン教材「デキタス」、幼児教育「くぼたのうけん」など幅広い教育サービスを展開しています。現在はEdTechと幼児教育を成長の柱とした中期経営計画を推進中です。
城南進学研究社の業績・財務状況は?
2025年3月期は売上高56億23百万円(前期比3.9%減)、営業損失2億30百万円、純損失4億20百万円と赤字が拡大しました。自己資本比率も27.5%まで低下しており、財務体質の悪化が深刻な状況です。2026年3月期には黒字化と復配を目指しています。
城南進学研究社の中期経営計画の内容は?
2024年3月期~2026年3月期を対象に、「学びの個別最適化」「幼少教育の新展開」「教育ソリューション」「収益構造改革」「人財育成」の5つの柱を掲げています。最終年度の目標は売上高62億8百万円、営業利益率10%ですが、現状からの大幅改善が必要であり、達成には高い不確実性が伴います。
城南進学研究社の投資リスクは?
少子化による市場縮小、連続赤字と財務体質の悪化、中期経営計画の実行リスク、大手・EdTech企業との競争激化が主なリスクです。一方、幼児教育やEdTech分野の成長、戦略的提携の成果が実現すれば、株価の大幅な見直しの可能性もある再建型投資案件です。
城南進学研究社の競合企業は?
ナガセ(東進ハイスクール)、学研ホールディングス、ベネッセホールディングス(進研ゼミ)が主な大手競合です。またリクルート(スタディサプリ)やatama plusなどのEdTechスタートアップも台頭しており、競争環境は厳しさを増しています。
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