- L is B(145A) はノンデスクワーカー向けビジネスチャット「direct」を中核に、現場DXの最後の一マイルを埋めるSaaS企業
- 国内ノンデスクワーカーは約3,000万人規模の巨大未開拓市場で、IPOによる資金調達が成長を加速
- 高い継続率とARRの右肩上がりが魅力。一方で先行投資フェーズ特有の赤字リスクも抱える
2024年3月、東証グロース市場に新たな星が誕生しました。株式会社L is B(145A)(以下、L is B)。数あるSaaS企業の一つに見えるかもしれませんが、その事業領域に踏み込むと、日本の産業構造の根深い課題に真正面から挑む類まれなポテンシャルを秘めた企業であることが見えてきます。
同社のターゲットはノンデスクワーカー——建設・運輸・小売・製造・インフラなどオフィス外の「現場」で働く人々です。国内で約3,000万人以上を占めるとされるこの巨大な労働市場は、これまで本格的なIT化の恩恵を受けてきませんでした。L is Bは、現場向けビジネスチャット「direct(ダイレクト)」という強力な武器でこのフロンティアに切り込みます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式社名 | 株式会社L is B(エルイズビー) |
| 証券コード | 145A |
| 市場区分 | 東証グロース |
| 上場日 | 2024年3月28日 |
| 本社所在地 | 東京都千代田区 |
| 設立 | 2010年 |
| 代表者 | 横井 太輔(CEO) |
| 主力プロダクト | 現場向けビジネスチャット「direct」 / direct Shop |
| ターゲット業界 | 建設・運輸・小売・製造・インフラ・自治体ほか |
【企業概要】「現場」への深い洞察が生んだ、ユニークなSaaSカンパニー
- ガラケー時代から「現場の通信」を磨き続けてきたDNAを保有
- 2本柱はビジネスチャット directと生産性向上ソリューション direct Shop
- 創業時の「多様な働き方を支援する」という理念が一貫した経営軸
設立と沿革:ガラケー時代から「現場」へと続く20年の蓄積
L is Bの設立は2010年。ルーツはさらに遡り、ケータイ時代の業務系システム開発で培われた「現場の通信を止めない」技術ノウハウが起点です。スマートフォン普及期に「direct」をリリースし、純粋な現場発のコミュニケーション基盤として進化させてきました。
事業内容:現場DXを推進する2本柱
| 事業ライン | 提供価値 | 主な顧客層 |
|---|---|---|
| direct(ビジネスチャット) | 現場と本部、現場同士のリアルタイム連携。写真・動画・位置情報など現場特化機能 | 建設・運輸・小売・製造・インフラ |
| direct Shop(業務効率化ソリューション) | 報告書テンプレート、シフト管理、KPI集計などをチャット起点で実装 | 多店舗運営・自治体・施設管理 |
| プラットフォーム連携(kintone等) | サイボウズ(4776)のkintoneと連携した拡張ソリューション | バックオフィス連携を重視する大企業 |
企業理念:「多様な働き方を支援し、だれもが自分らしく活躍できる世界へ」
同社の理念は「多様な働き方の支援」。これは単なるスローガンではなく、ノンデスクワーカーという「これまで届かなかった人々」に情報インフラを届けるという経営判断と一致しています。ESG的視点でも、社会課題解決型の事業として評価できる構造です。
【ビジネスモデルの詳細分析】なぜ「direct」は現場の心を掴むのか
- 課金はID課金型のサブスクリプションで、利用者が増えるほど売上が積み上がる
- 解約率の低さとクロスセルによるARPU上昇がARR成長を支える
- 通信キャリアやSIerとのアライアンスがエンタープライズ攻略の要
収益構造:ID課金 × ARRで描かれる美しいSaaSモデル
| 指標 | 位置付け | L is Bでの特徴 |
|---|---|---|
| ARR(年間経常収益) | SaaSの基礎体力指標 | 右肩上がりで成長中、現場大規模導入で1社あたりARPUが大きい |
| 解約率(Churn Rate) | 事業の質を示す重要指標 | 業務インフラ化により低水準で推移 |
| ARPU | 顧客単価の指標 | direct Shopなどクロスセルで上昇余地 |
| LTV / CAC | ユニットエコノミクス | エンタープライズ案件は長期回収・高LTV型 |
競合優位性:現場ラストワンマイルを埋める3つの武器
競合となる汎用ビジネスチャット(Slack、Microsoft Teams、NRI(4307)系の各種ツールなど)と異なり、L is Bは「現場前提」で機能設計されています。
| 観点 | 汎用チャット(Slack/Teams 等) | L is B(145A) の direct |
|---|---|---|
| UI/UX | デスクワーカー前提 | 片手・手袋・粉塵環境を想定したUI |
| 通信環境 | 常時オンライン前提 | 低帯域・断続通信下でも崩れにくい設計 |
| 業務テンプレート | 汎用的 | 日報・点検・写真報告など現場特化テンプレ |
| 導入支援 | セルフサーブ寄り | オンサイト導入支援とパートナー連携 |
バリューチェーンとエコシステム:パートナー戦略
通信キャリア(NTTドコモ系列)や大手SIerと連携し、自社単独では届かない大企業の現場への共同提案を進めています。またサイボウズ(4776)のkintone連携ソリューション「direct on kintone」によって、現場のリアルタイム性とバックオフィスのDB機能を一気通貫で結ぶアーキテクチャを実現しています。
【直近の業績・財務状況】IPOで加速する成長ストーリー
- 売上高は年率20%超の成長レンジを継続
- 先行投資フェーズのため営業利益はまだ不安定だが、ARRと粗利率は堅調
- IPO調達資金が、人材採用と販管費の積極投資を支える
業績推移(イメージ・要点)
| 年度 | 売上高(イメージ) | 営業損益 | ARR成長率 | 主なトピック |
|---|---|---|---|---|
| 2022/12期 | 約20億円水準 | 黒字化前後 | 高水準成長 | 現場SaaSとしてプロダクト整備 |
| 2023/12期 | 前年比+20%以上 | 先行投資で変動 | 加速 | 大手導入の積み上げ |
| 2024/12期 | 上場後の最初の通期 | 人員投資強化 | 継続成長 | IPO調達資金の本格投下 |
※ 個別数値は公式IR資料(決算短信・有価証券報告書)を最終ソースとして必ずご確認ください。
PL分析:粗利率の高さと販管費の重さ
SaaSモデル特有の高粗利率が確認できます。一方で先行投資のため販管費比率は重く、営業利益率は今後の効率化と顧客単価上昇にかかっています。
BS分析:IPOで強化された自己資本
IPOによる調達で自己資本比率が向上し、攻めの投資余力が拡大。設備依存度が低いSaaS事業の特性上、調達資金は人材・マーケに重点配分される構造です。
CF分析:SaaSらしい前受金の積み上がり
年契約を主軸とするSaaSにおいては、営業CFが先行的に積み上がるのが特徴。契約負債(前受収益)の動きとARRの動きを併せて見ると、実質成長エンジンの状態を把握できます。
【市場環境・業界ポジション】3,000万人が待つブルーオーシャン
- 国内ノンデスクワーカーは約3,000万人と推計され、デスクワーカーに匹敵
- 人手不足・2024年問題・働き方改革によりDX投資ニーズが構造的に上昇
- 汎用チャットでは取りこぼされる現場固有要件にL is Bは特化
ノンデスクワーカー市場の規模感
| 業界 | 推定従事者規模 | DXの主要課題 | L is Bの提供価値 |
|---|---|---|---|
| 建設 | 約500万人規模 | 高齢化・属人化・分散現場 | 写真報告・図面共有・現場間連携 |
| 運輸・物流 | 約350万人規模 | 2024年問題・労務管理 | 配車・運行情報・荷主連携 |
| 小売・店舗 | 約700万人規模 | 多店舗オペレーション | シフト・本部指示の即時伝達 |
| 製造 | 約900万人規模 | 工程連携・設備保全 | ライン報告・保全記録の即時化 |
| インフラ・自治体 | 約300万人規模 | BCP・現場安全 | 災害時連携・現場点検 |
競合比較とユニークなポジショニング
デスクワーカー領域ではNRI(4307)やサイボウズ(4776)など強力なプレイヤーが存在しますが、現場ラストワンマイルに特化した上場SaaSという観点では、L is Bのポジションは国内ではかなりユニークです。
【技術・製品・サービスの深堀り】信頼と実績が支えるプラットフォーム
- 通信途絶・低帯域に強い現場前提のアーキテクチャ
- API/連携を前提としたプラットフォーム化志向
- 多数の導入事例で蓄積された現場ノウハウのフィードバックループ
「direct」を支える技術的優位性
| 技術要素 | 具体内容 | 現場価値 |
|---|---|---|
| 通信レイヤー | 低帯域・断続通信に強い設計 | 山間部・地下・屋内でも実用 |
| 権限管理 | 会社・部署・現場単位の細粒度制御 | 情報統制とBCPに対応 |
| 業務テンプレ | 日報・点検・写真報告 | 入力工数を最小化 |
| API/Webhook | 基幹システムとの連携 | サイボウズ(4776)kintone連携など |
導入事例にみる価値の提供
建設業の大手から地方の中堅運輸事業者、自治体や独立系小売チェーンまで、業界横断で実装可能という汎用性を備えています。これは業界カスタマイズ前提のSI型ベンダーとの大きな違いです。
【経営陣・組織力の評価】現場への情熱とビジョンが牽引
- 創業者CEO横井太輔氏の一貫した現場主義
- プロダクト・カスタマーサクセス・パートナー営業の三位一体組織
- IPO後の急速な人員拡大が今後のガバナンス課題
横井太輔CEOのリーダーシップ
現場の声から逃げないという姿勢が、プロダクトの細部に至るまで一貫しています。IPO以降は組織として攻めるための仕組み化が次の課題です。
組織拡大と今後の課題
急速な採用拡大に伴い、カルチャーの希釈リスクや中間管理職の育成、コンプライアンス体制の高度化など、上場企業として求められる水準への適応が重要となります。
【中長期戦略・成長ストーリー】プラットフォーム化への壮大な構想
- directを現場ワーカーのスーパーアプリ化する構想
- API/連携ソリューションでエコシステム拡大
- 海外展開・隣接領域M&Aは中長期の選択肢
成長ドライバーの整理
| 成長軸 | 具体施策 | インパクトの方向性 |
|---|---|---|
| ARPU向上 | direct Shop等のクロスセル | 既存顧客内の単価上昇 |
| 顧客数拡大 | パートナー経由の大企業攻略 | ID課金の絶対量拡大 |
| 業界深耕 | 建設・運輸・小売の業界別ソリューション | 業界シェアの確立 |
| プラットフォーム化 | サードパーティ連携 | ロックイン強化 |
| M&A・隣接領域 | 労務・安全衛生・IoT連携 | 領域拡張 |
究極のゴール:現場ワーカーのスーパーアプリ
最終的には、チャットを起点に勤怠・報告・指示・教育・安全管理までを一気通貫でカバーする現場ワーカーのスーパーアプリを目指しています。
【リスク要因・課題】成長の裏に潜む注意点
- 先行投資フェーズの赤字耐性
- 大手企業(Microsoft Teams等)との競合圧力
- グロース市場特有の株価ボラティリティ
リスクマトリクス
| リスク | 発生可能性 | インパクト | 主な対応策 |
|---|---|---|---|
| 先行投資による赤字長期化 | 中 | 中 | KPI(ARR・解約率)開示で投資家コミュニケーション |
| 汎用チャットとの競合 | 中 | 高 | 現場特化機能と業界深耕 |
| 人材採用競争 | 高 | 中 | ストックオプション・働き方多様化 |
| 特定業界依存 | 中 | 中 | 業界横断展開・パートナー多様化 |
| 上場直後のVC売却 | 中 | 中 | 中長期保有層の獲得・IR強化 |
【総合評価・投資判断まとめ】D.D.の最終結論
- 現場DX×大型未開拓市場という構造的追い風
- 高粗利SaaSのKPI(ARR・解約率)で進捗が見える
- 先行投資フェーズの株価ボラは許容できる投資家向き
総合スコア(D.D.独自評価)
| 評価軸 | スコア(5点満点) | コメント |
|---|---|---|
| 市場性 | ★★★★★ | ノンデスクワーカー市場の構造的拡大 |
| 競合優位性 | ★★★★ | 現場前提プロダクトの独自性 |
| 財務健全性 | ★★★ | IPO後の自己資本強化、PLは投資フェーズ |
| 経営陣 | ★★★★ | 一貫した現場主義 |
| 成長性 | ★★★★★ | ARPU・顧客数双方に伸びしろ |
| リスク耐性 | ★★★ | 競合圧力と先行投資 |
結論として、L is B(145A)は中期での構造的成長を狙う長期投資家に向く銘柄です。短期的なボラティリティを承知のうえで、ARRと解約率を毎四半期トラッキングしながら積み上げる戦略が有効でしょう。
関連銘柄・あわせて読みたい記事
同じく現場・店舗DX領域で注目される銘柄として、NSグループ(471A)(冠婚葬祭DX)や、プラットフォーム連携で重要なサイボウズ(4776)も合わせて押さえておきたいところです。
Q. L is B(145A)はどんな会社ですか?
L is B(145A)は、建設・運輸・小売・製造などのノンデスクワーカー向けにビジネスチャット「direct」を提供するSaaS企業です。2024年3月に東証グロース市場へ上場しました。
Q. 競合と何が違うのですか?
SlackやMicrosoft Teamsなど汎用チャットがデスクワーカー前提なのに対し、directは低帯域や手袋環境など現場前提でUIと機能を設計している点が大きく異なります。
Q. 投資する際にウォッチすべき指標は?
ARR(年間経常収益)の成長率、解約率(チャーン)、ARPU、営業利益率の4点が主要KPIです。SaaS銘柄として四半期ごとの動きを追うのが有効です。
Q. リスクは何ですか?
先行投資による赤字長期化、汎用チャット大手との競合、IPO後の人材採用競争、グロース市場特有の株価ボラティリティが主なリスクです。
Q. どんな投資家に向いていますか?
短期的な株価ボラを許容できる、構造的成長テーマを長期で取りに行く投資家に向きます。ARRや解約率を継続トラッキングできる方が望ましいです。


















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