大企業より「中堅下請け」が儲かる時代へ、日経が報じた”産業ピラミッド中間層”への資金シフトを読み解く

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本記事の要点
  • ピラミッドの真ん中に、初めて光が当たり始めた
  • このニュースに反応したら、たぶん負ける
  • 私が今、産業ピラミッドの中央をどう見ているか
  • ここからどう転んでも、慌てないための3つの地図

産業ピラミッドの中間層に何が起きているのか、何を見て、何を捨てればいいのかを整理します

マーケットアナリスト
価格転嫁率が5割を超えたのは、過去30年で見ても画期的な数字ですね。
目次

ピラミッドの真ん中に、初めて光が当たり始めた

価格転嫁率が、ついに5割を超えました。

それだけの話なのに、私はこの数字を見た瞬間、しばらく画面から目を離せませんでした。 日本の中小企業が、コスト上昇分のうち半分以上を売値に乗せられるようになった。 言葉にすればそれだけですが、これは30年以上当たり前だった景色を変える数字です。

正直、私はこのニュースを最初に見た時、すぐには動きませんでした。 「日経が大きく報じる頃には、もう手遅れだろう」と思ったからです。 過去に何度も、メディアの大特集を見て買って、天井を掴んだ経験があります。

ただ、調べていくうちに、これは一過性のテーマではなく、もっと深い地殻変動かもしれない、と感じ始めました。 今この記事を開いてくれているあなたも、たぶん同じです。 「日経が中堅下請けを取り上げた」と見て、気にはなる。でも飛びつくのは怖い。 かといって、何もしないと取り残される気もする。

その「気にはなるけど踏み込めない」感覚に、私はずっと付き合ってきました。 だから今日は、いきなり結論や銘柄の話はしません。 まずノイズと本物のシグナルを仕分けます。 次に、私が今この産業構造の変化をどう読んでいるかを、前提込みで開示します。 そして最後に、過去に似たテーマで失敗した自分の記憶を踏まえて、明日からの構え方をお渡しします。

派手な銘柄推奨はありません。 代わりに、自分の頭で判断するための材料を、できるだけ等身大の言葉で置いていきます。


このニュースに反応したら、たぶん負ける

「中堅下請けが儲かる時代へ」というメッセージは、正しい部分と危ない部分が混ざっています。 私が今「これは無視していい」と判断しているノイズが3つあります。

ひとつ目は、日経本紙の特集が出たという事実そのものです。 これは情報の鮮度ではなく、むしろ、すでに広がりきった話の終着駅に近い、と私は見ています。 過去のテーマ株を振り返っても、全国紙の経済面を飾った時には、賢いお金は半年前から仕込みを終えていました。 「日経で見た」を買い理由にすると、たいてい高値で誰かに引き取らされる側になります。

ふたつ目は、SNSで急に増える「中堅下請け関連10選」のたぐいのリストです。 これは「乗り遅れたくない」という焦りを煽ってくる情報の典型例です。 作り手は閲覧数が欲しいだけで、あなたの口座残高には責任を取りません。 リストを見て心拍数が上がった時こそ、ブラウザを閉じる練習をした方がいいと思っています。

三つ目は、個別企業の決算速報の見出しです。 「過去最高益」「上方修正」という単語は、それだけ見ると魅力的に映ります。 しかし、その数字が産業構造の変化によるものか、円安や一時要因によるものか、見出しからは分かりません。 速報の見出しに反応する取引は、私の経験上、ほとんどがその週のうちに後悔に変わります。

一方で、私が今、本気で追いかけているシグナルが3つあります。

ひとつ目は、中小企業庁と公正取引委員会が出している価格転嫁の実態調査です。 これは半年に一度更新され、業種別・コスト項目別に転嫁率が出ています。 労務費の転嫁率が、原材料費の転嫁率を超えるかどうか、私はそこを毎回確認しています。 労務費まで通る世界になれば、これは本物の構造変化だと判断します。

ふたつ目は、東証スタンダード市場とTOPIXの相対パフォーマンスです。 中堅・中小が集まる市場が、大型株中心のTOPIXを上回り続けているかどうか。 これが3か月以上継続するなら、資金シフトは「気のせい」ではなく実勢になっています。 私はこれを月初に一度、チャートで重ねて確認するようにしています。

三つ目は、毎月勤労統計の所定内給与の伸びです。 ここが2%台で粘るなら、人手不足由来の値上げ圧力は続きます。 逆にこの数字が失速し始めたら、今語られている「中間層の時代」という物語の根っこが揺らぎます。 給与統計はテーマ株の話と無関係に見えて、実は土台です。

私が今、産業ピラミッドの中央をどう見ているか

まず事実から並べます。

中小企業の価格転嫁率は、ここ数年で明確に上がりました。 公的な調査では、コスト上昇分のおよそ半分前後を売値に乗せられている、という水準まで来ています。 数年前は3割そこそこでしたから、これは小さくない変化です。 ただし、業種によるバラつきは相変わらず大きいままです。

同時に、所定内給与の伸びは2%台で定着しつつあります。 人手不足は構造的で、コロナ後に一度緩んだ後、再び強くなりました。 特に物流、建設、製造現場の中堅企業では、求人を出しても人が集まらないという声が日常になっています。 人を確保するには給料を上げる、給料を上げるには値段を上げる、という循環が回り始めています。

ここからが私の解釈です。

私はこの変化を、単なる「インフレが来た」という話ではなく、価格決定権の地殻変動だと見ています。 これまで日本の産業ピラミッドは、頂点の大企業が事実上の値決めをしていました。 中堅・中小は、コストが上がっても「うちの都合は飲み込んでくれ」と言われるのが当たり前でした。 それが、人手不足と政策的な後押しで、ようやく逆転の芽が出てきた、というのが私の読みです。

ただし、ここに前提があります。 ひとつは、人手不足が今後も続くこと。 もうひとつは、政府の価格転嫁支援の姿勢が、政権が変わっても維持されること。 そして三つ目は、日本銀行が急激な利上げで景気を冷やしすぎないこと。 この3つが揃って初めて、中間層への資金シフトは持続する、と私は考えています。

逆に言えば、所定内給与の伸びが1%台に失速したら、私はこの見立てを一段引きます。 公正取引委員会の指導が骨抜きになる兆しが出ても、同じです。 日銀が市場予想を超える利上げに動いた時も、構図は変わります。 「状況を見て」ではなく、見るべき数字とラインをここで決めておくのが、私の習慣です。

正直、ここは私も迷う部分があります。 「価格決定権の地殻変動」という言い方は、振り返ると大袈裟だった、ということもあり得ます。 ただ、3つの前提が同時に崩れない限り、流れの方向そのものは変わりにくい、というのが今の私のスタンスです。 前提が変われば、私はためらわず判断を変えるつもりです。

では、この解釈が正しいなら、読者はどう構えればいいのか。

ひとつは、中堅以下の企業すべてが恩恵を受けるわけではない、と理解しておくことです。 価格転嫁ができるのは、技術や立地や供給網の中で、簡単には他社に置き換えられない位置を持つ企業だけです。 頂点の大企業に「あんたじゃないと困る」と言わせられる企業を見極める、という地味な作業が要ります。 逆に、誰でも作れるものを作っている下請けは、構造変化の恩恵を受けにくい、と私は見ています。

もうひとつは、すでに大きく上げた銘柄を慌てて追わないことです。 構造変化が本物だとしても、株価は先回りして動きます。 「これから上がる」のではなく「もう上がっている」場面に飛び乗ると、最後の数十%を取りに行って、最初の数十%を失う、ということが起きます。 急がなくていい、というのが、この相場に対する私のスタンスです。

ここからどう転んでも、慌てないための3つの地図

私はこの先の展開を、3つのシナリオで持っています。 どれが当たるかは分かりません。だからこそ、それぞれに「やること」と「やらないこと」を決めています。

中間層に静かに資金が移り続ける場合

人手不足が続き、価格転嫁の流れも維持されると、緩やかに中堅企業の利益率が改善していきます。 東証スタンダード市場の相対パフォーマンスが、TOPIXを上回り続ける状態がしばらく続くはずです。

このシナリオでやることは、価格決定権を持つ中堅企業に、3〜5回に分けてゆっくり資金を入れていくことです。 1か月に1回、決まった日に少しずつ買い増していく形を、私は使っています。

このシナリオでやってはいけないのは、勢いに乗って一括で大きく入ることです。 構造変化はゆっくり進むので、急ぐ必要がありません。 急ぐ気持ちが出てきた時は、たぶん感情が判断を乗っ取り始めています。

このシナリオで毎月見るのは、中小企業庁の価格転嫁実態調査と、所定内給与の伸びです。 どちらか一方でも失速したら、買いの手を止めます。

想定が外れて、中間層が再び絞られる場合

世界景気が冷え込み、大企業が「やっぱり下請けに泣いてもらう」モードに戻ると、価格転嫁の流れは止まります。 人手不足も、解雇増加で一時的に緩むかもしれません。

このシナリオでやることは、保有している中堅企業株のポジションを段階的に減らし、現金比率を上げることです。 全部売る必要はありません。半分にするだけでも、心の余裕が変わります。

このシナリオでやってはいけないのは、戻りを期待してナンピンすることです。 構造の前提が崩れた時のナンピンは、傷を深くするだけです。 私は何度かこれで痛い目を見ました。

このシナリオの確認材料は、企業倒産件数、有効求人倍率の急落、そして公正取引委員会の指導件数の停滞です。 ひとつだけでなく、複数が同時に動いた時に、シナリオ転換だと判断します。

どちらとも言えず、判断材料が足りない場合

統計はまだら模様で、価格転嫁は進んだ業種と止まった業種に分かれる、という展開もあり得ます。 これが、実は一番厄介なシナリオです。

このシナリオでやることは、ポジションを大きく動かさないことです。 新規投資は半分のサイズに抑え、残り半分は様子を見るための余白として残します。

このシナリオでやってはいけないのは、退屈に耐えられず、関係ないテーマに手を出すことです。 私はこのパターンで何度も損を増やしてきました。 判断材料が足りない時に動くのが、一番事故ります。

このシナリオで見るべきは、業種別の転嫁率の格差です。 全業種一律で進むのではなく、特定の業種だけ進む状態が続くなら、それは中間層の物語の中に「勝ち組と負け組」があるということです。 そうなると、銘柄選定の難易度が一段上がります。

ピラミッドの階層従来の収益性足元の変化
大企業(頂点)高い横ばい
中堅下請け(中間)低い急回復
小規模下請け(底辺)赤字すれすれ転嫁開始

私が中堅株で天井を掴んだ、あの夏のこと

数年前の夏でした。 日経の朝刊で、半導体関連の中堅装置メーカーが大きく取り上げられていました。 人手不足、技術優位、価格転嫁、海外受注の急増。 全部そろっている、と私は思いました。

その銘柄は、すでに半年で4割ほど上がっていました。 本来なら、私はこれを見て「もう乗れない」と判断するはずでした。 でも、その日に限って、私の頭の中で別の声がしたのです。 「これは構造変化だ。半年で4割なら、ここから倍になっても不思議じゃない」と。

正直に書きます。 あの時、買い注文のボタンに指を置いた瞬間、私は「乗り遅れたくない」という焦りに支配されていました。 普段は分割で入るのに、その日はなぜか、用意していた予算の半分をいきなり一括で入れました。 理屈をつければ「強い銘柄は調整を待たずに買え」となります。 本音は、ただの焦りでした。

買った翌週、株価はさらに5%上げました。 私は得意になっていました。 「やっぱり構造変化を読めた者の勝ちだ」と思いました。 スマホで含み益を見るのが、その頃の楽しみになっていました。 通勤電車の中、信号待ち、寝る前。何度も口座を開いていた記憶があります。

しかし、その2週間後でした。 為替が逆方向に振れ、海外の半導体大手が設備投資の見直しを発表しました。 私が買った銘柄は、3週間で2割下げました。 含み益はあっという間に含み損に変わりました。 画面を開くのが少しずつ億劫になっていく、あの感覚を今でも覚えています。

ここで、私はまた間違えます。 「これは一時的な調整だ。構造の話は変わっていない」と自分に言い聞かせて、ナンピンしました。 予算のもう半分を、ここで投入したのです。 その後、株価は底からさらに15%下げ、私は損切りをずるずる先延ばしして、最終的にトータルで2割超のマイナスで撤退しました。

何が間違いだったのか、今でも考えます。

判断そのものは、半分は合っていたと思います。 中堅企業に資金が入る流れは、その後も実際に続きました。 ただ、私が買った具体的な銘柄は、すでに先回りされすぎていました。 そして、私のサイズ取りは、間違いなく過大でした。

それ以上に痛かったのは、ナンピンの判断です。 構造の話は変わっていないから、と自分に言い訳した瞬間、私はもう投資家ではなく、自分の判断を正当化したい人になっていました。 今でもあのナンピンの注文画面を思い出すと、胃のあたりが少し重くなります。 あの夜、画面を消した後の沈黙は、自分でもよく覚えています。

得たものは、痛みと一緒に来た、いくつかのルールです。 全国紙が大きく取り上げた銘柄は、最低でも2週間は触らない。 分割で入ると決めたら、その日の感情で一括に切り替えない。 含み損になった後のナンピンは、別の銘柄を買う以上に厳しい基準を自分に課す。 これらは全部、あの夏の代償として身についたものです。 だから私は今、こういう運用ルールを持って相場と向き合っています。

同じ間違いを繰り返さないための、私の運用ルール

抽象的な精神論は書きません。 具体的な数字と、その数字にした理由をセットで置きます。

現金比率は3〜5割を基準にする

私は今、現金とそれに近い資産の比率を、運用資金全体の30〜50%で動かしています。 構造変化が見えていて、なおかつ統計の追い風があるときは30%寄り。 判断材料が混ざっているときや、相場全体が走りすぎているときは50%寄り。

100%投資しないのか、と聞かれることがあります。 答えはシンプルで、間違えた時に動けるお金がないと、もう一度立ち上がれないからです。 あの夏の失敗の後、私は「いつでも追加投資できる現金を持っていなかったこと」も痛みのひとつだったと気づきました。 全力で買っていたから、底値で買い直す余裕もなかったのです。

中堅株は3〜5回に分けて、1か月以上かけて入る

新規で買う時は、3回から5回に分割します。 間隔は最低でも1週間、できれば2週間以上空けます。 合計で1か月以上かけて、当初想定したサイズまで持っていきます。

なぜ分割なのか。 一括で入ると、買った直後の値動きで自分の判断が揺れるからです。 上がれば「もっと買えばよかった」と欲が出て、下がれば「間違えたかも」と不安になる。 分割で入っていると、上がれば残りを高く、下がれば残りを安く買うだけ、と冷静に処理できます。

あの夏、私が一括で入って痛んだ後悔は、今も分割の習慣の根っこにあります。

撤退の3点セットを、買う前に決める

これが私の運用で最も大切にしている部分です。 価格、時間、前提の3つで撤退基準を持ちます。

価格の基準は、買値からのマイナス幅ではなく、その銘柄の意味のあるラインを使います。 たとえば、直近の安値を明確に下回ったら、です。 これは銘柄ごとに違うので、買う前にチャートを開いて自分で決めておきます。 「マイナス10%で損切り」のような一律ルールは、私には合いませんでした。

時間の基準は、私の場合、3か月から6か月です。 買ってから6か月経っても想定した方向にまったく動かないなら、私の見立てが何かしら間違っている可能性が高い。 含み損であってもなくても、一度ポジションを軽くして、頭を冷やします。

前提の基準は、最初に挙げたシグナルと連動させます。 所定内給与の伸びが1%台に落ち込んだら、価格転嫁の指標が後退したら、政府の支援姿勢に大きな変化が出たら。 このうち2つ以上が同時に起きたら、私は銘柄を問わず、中間層テーマのポジション全体を見直します。

3つのうち、どれかひとつでも引っかかったら撤退、というのが私のルールです。 ここを甘くすると、前回のナンピン地獄をもう一度繰り返すことになります。

判断に迷ったら、ポジションを半分にしてください

これは初心者の方に向けた、最も重要な救命具です。 判断に迷ったら、ポジションを半分にしてください。 間違えてもダメージが半分になります。迷いは市場からのサインです。

「半分」が大事なのは、ゼロにしないからです。 完全に降りてしまうと、戻ってきた時にまたゼロから怖さと戦うことになります。 半分残すと、相場との接点が残ります。 半分なら、間違えた時の損失も、寝られる範囲に収まります。

投資リサーチャー
産業ピラミッドの中間層が、ようやく光を浴び始めました。

あの夏の失敗から作った、3つの行動ルール

最後に、あの夏の代償として身につけたルールをそのまま置いておきます。

ひとつ、全国紙やテレビで大きく取り上げられた銘柄は、最低2週間は買い注文を入れない。 ふたつ、含み損が出ている銘柄を買い増す時は、新規投資より厳しい審査を自分に課す。 三つ、買い注文の前に、撤退ラインの3点セットをノートに書いてから発注する。

これらはどれも、心構えではなく行動ルールです。 心構えは破れますが、行動ルールは「やる/やらない」で測れるので、自分を客観視しやすくなります。

スマホを開く前に、この5つを確認してください

ここまでをひとつのチェックリストにまとめます。 ポジションを動かす前に、自分に問いかけてみてください。

ひとつ目。私が今買おうとしているのは、価格決定権を持つ中堅企業ですか、それとも誰でも代替できる下請けですか。

ふたつ目。直近の中小企業庁の価格転嫁調査で、その業種の転嫁率は上向いていますか、下向いていますか。

三つ目。所定内給与の伸びは、過去3か月で2%以上をキープしていますか。

四つ目。買う前に、価格・時間・前提の3つの撤退ラインを書き出しましたか。

五つ目。今このタイミングで一括で入ろうとしていませんか。分割の予定はありますか。

5つすべてに自信を持って答えられないなら、ポジションは半分のサイズで始めるのが安全です。 自信を持って答えられても、半分から始めて悪いことはありません。

そして、自分に当てはめて答えてほしい問いも置いておきます。

あなたが今買おうとしているポジションは、最悪のシナリオで資金全体の何%の損失になりますか。 そのポジションが3か月動かなかった時、あなたは退屈に耐えられますか。 今あなたを動かしているのは、構造の理解ですか、それとも乗り遅れたくないという感情ですか。

答えに詰まった項目があれば、そこがあなたの一番弱いところです。

「結局それってタイミング投資では?」という問いへの返事

ここまで読んで、こう感じた人がいるかもしれません。 「構造変化と言いながら、結局は買う時期や撤退ラインの話ばかりで、タイミング投資と何が違うのか」と。 この指摘は、もっともだと思います。

正直に書きます。 私のやり方は、純粋な長期インデックス投資から見れば、タイミングを取りに行っている要素を含みます。 「絶対にタイミングを読まない」という流派から見れば、ノイズの多い行動に見えるはずです。

ただ、私がやろうとしているのは、当てに行くタイミングではなく、外した時に生き残るタイミングです。 入る時期を当てるのは、私には無理だと諦めています。 そのかわり、撤退ラインで損失の最大値を制御することはできます。 これは、未来を当てる技術ではなく、未来が読めない自分を守る技術です。

もうひとつ。 インデックスを淡々と積み立てるアプローチは、私もとても有効だと思っています。 むしろ、ここで書いてきたような中間層シフトの話に時間を使うつもりがない人にとっては、世界株や日本株のインデックスを毎月一定額買い続ける方が、結果として勝率が高い可能性が高いです。

私のやり方が向いているのは、市場の構造を観察するのが好きで、自分のルールを書いて守れる人だけです。 そうでない人にとっては、テーマ株を追うより、インデックスを買って忘れる方が、ずっと健全です。 これは譲歩ではなく、本気でそう思っています。

機関投資家がもう動いている、という前提で考える

最後に、需給の話を短く加えます。

中堅・中小企業株の上昇が話題になり始めた時、私が真っ先に確認するのは、海外勢と国内機関投資家の動向です。 東証が公開している投資部門別売買動向を見ると、ここしばらく、中型・小型株への買い越しは特定の主体に偏っているように見えます。 推測になりますが、グローバルに割安な日本株を物色する流れの中で、すでに大型株は買われすぎ、次の段の中型に資金が回っている可能性があります。

それが何を意味するか。 個人投資家が「中堅下請けが熱い」と気づいた段階で、機関の主要な仕込みは終盤に入っている可能性が高い、ということです。 だからといって、もう何も買えないわけではありません。 構造変化が本物なら、機関の最初の波の後にも、第二波、第三波の動きはあります。

ただ、最初の急騰局面で派手にエントリーするのと、第二波の押し目を辛抱強く待つのとでは、リスクの大きさがまったく違います。 この記事で繰り返し「急がなくていい」と書いてきたのは、需給の現実から見ても、急ぐと不利になりやすいからです。 私自身、この相場では、追いかける動きより、待つ動きを増やしています。

明日、画面を開いたら見てほしいたったひとつの数字

ここまで長くお付き合いいただきました。 持ち帰ってほしいことは、3つに絞ります。

ひとつ。中堅下請けへの資金シフトは、ニュースイベントではなく、人手不足と政策と賃金が重なった構造変化として見るべきものです。物語の根っこは、毎月勤労統計と価格転嫁実態調査にあります。

ふたつ。すべての中堅企業が恩恵を受けるわけではありません。価格決定権を持つ位置にいる企業を見極める作業は、地味で時間がかかります。急がない、を行動ルールに落としてください。

三つ。買う前に、価格・時間・前提の3つの撤退ラインを書き出してください。書き出さないなら、買わない方がたぶん儲かります。

明日スマホを開いたら、まず、所定内給与の最新の伸びをひとつだけ確認してみてください。 その数字が2%台で粘っているなら、この記事の前提はまだ生きています。 1%台に沈み始めているなら、私はもう一度、自分の見立てを点検し直します。

派手な勝ち方の話ではなく、退場しない話をしました。 読み終えた後、あなたが今のポジションを少しだけ静かに見直す気になってくれたなら、書いた意味があります。 焦らず、急がず、生き残ってください。

本記事は投資助言を目的としたものではありません。 記載された内容は筆者個人の見解であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。 投資に関する最終判断は、ご自身の責任において行ってください。


マーケットアナリスト
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この記事を書いた人

「日本個別株デューデリジェンスセンター」運営者。日本の個別株に特化した投資リサーチを専門とし、銘柄分析・企業デューデリジェンス・業界動向・IPO分析を中心に2,800本超の分析レポートを執筆。ファンダメンタルズ分析とデータドリブンなアプローチで、個人投資家の意思決定をサポートしています。毎日更新の分析レポートを通じて、プロ水準のリサーチを個人投資家に届けることをミッションとしています。

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