新NISAの含み益、今すぐ利確すべき? 円安とトランプ関税に揺れる相場での「正しい逃げ方」

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本記事の要点
  • いま個人投資家が直面している「3つの不安」
  • 不安その1 歴史的高値圏の日本株と、ふくらんだ含み益
  • 不安その2 乱高下する円相場と、円高反転リスク
  • 不安その3 トランプ関税と「脱米国」の地政学

2026年5月、日本株はちょっとした歴史的な季節を迎えました。日経平均株価は5月7日に1日で3,320円高という過去最大の上げ幅を記録し、その後も上昇を続け、5月29日には終値ではじめて6万6,000円を超えました。わずか1カ月で7,000円以上も水準を切り上げた計算になります。

新NISAでコツコツ積み立ててきた方も、個別株に挑戦してきた方も、口座の評価額を見て「こんなに増えたのか」と驚いている時期ではないでしょうか。同時に、こうも思っているかもしれません。「これだけ上がったのだから、いったん利確(利益確定の売り)しておくべきでは?」「円安もトランプ関税も不安だし、含み益が消える前に逃げたほうがいいのでは?」と。

この記事では、その「利確すべきか問題」を、できるだけ冷静に整理していきます。結論から言えば、利確に万人共通の「正解」はありません。けれども、判断を支える「考え方の軸」と、新NISAという制度ならではの「正しい逃げ方」は確かに存在します。相場の熱と不安に流されず、自分なりの答えを出すための材料をお届けします。

あらかじめお伝えしておくと、この記事はどこかの局面で「今が売り時だ」「この株を買え」と断言するものではありません。相場の先行きは、プロでも外します。お渡ししたいのは、答えそのものよりも、答えにたどり着くための「考え方の地図」です。新NISAでコツコツ資産を育ててきた方や、はじめてまとまった含み益を前に落ち着かない気持ちになっている方が、自分の頭で納得して動けるようになること。それがこの記事のゴールです。

なお、記事中の株価・指数・業績などの数字は執筆時点のものです。相場は日々動きますので、実際に判断される際は必ず最新の情報をご確認ください。

いま個人投資家が直面している「3つの不安」

「利確すべきか」という問いの背景には、必ず「何かが怖い」という気持ちがあります。まずはその不安の正体を、3つに分けて言語化しておきましょう。正体が見えれば、対処のしようも見えてきます。

不安その1 歴史的高値圏の日本株と、ふくらんだ含み益

最初の不安は、シンプルに「上がりすぎではないか」という高所恐怖です。これは気のせいではなく、データもそれを裏づけています。

野村證券の分析によると、2026年4月・5月の日経平均の上昇は、半導体やデータセンター関連のごく一部の銘柄が主導したもので、日経平均とTOPIXの比率を示すNT倍率は16倍超と過去最高水準に達しました。日経平均の予想PER(株価収益率)は22倍前後と高めで、上昇が一部の銘柄に集中している点が指摘されています。

日経平均株価の見通しを上方修正 上振れシナリオでは2026年末に7万円台突破へ 野村證券ストラテジストが解説 | NOMURA ウェルスタイル – 野村の投資&マネーライフ 直近の日経平均株価とNT倍率(日経平均株価÷TOPIX(東証株価指数))の上昇を踏まえ、日経平均株価の指数見通しを上方修正 www.nomura.co.jp

この「歴史的な株高」が何によって支えられているのかについては、わかりやすい解説もあります。連休明けの急騰局面を振り返った日本経済新聞の記事では、過去最大の上げ幅を記録した背景が読み解かれています。

日経平均株価の歴史的上昇の背景は(馬渕磨理子) – 日本経済新聞 2026年5月7日、連休明けの日本市場は歴史的な一日となりました。日経平均株価は前営業日比3320円高という過去最大の上げ www.nikkei.com

強気の見方も健在です。三井住友DSアセットマネジメントは2026年5月の時点で日経平均の年末予想を6万8,100円に上方修正し、四半期ごとの想定レンジの上限を7万円超に置いています。企業業績は「まずまず良好」で、日本株全体としての過熱感はそれほど高くないという評価です。

6万5000円突破で最高値を更新した日経平均株価の今後を展望する www.smd-am.co.jp

つまり、いまの相場には「まだ上がる」という強気と、「一部に偏った上げで過熱気味」という慎重論が同居しています。あなたの含み益が大きくふくらんでいるのは喜ばしいことですが、その含み益が「相場全体の地力」によるものなのか、「AI・半導体という一部テーマの熱狂」によるものなのかで、リスクの性質はかなり変わってきます。ここは後の銘柄選びの話にもつながる、大事な論点です。

不安その2 乱高下する円相場と、円高反転リスク

2つ目の不安は為替です。2026年に入ってからのドル円相場は、はっきり言って荒れ模様でした。野村證券によれば、年明け後に一時1ドル159円台半ばまで円安が進んだあと、1月末にかけて152円台前半まで戻すなど、大きく振れています。野村は2026年末の予想を1ドル147円50銭、2027年末を140円とし、緩やかな円高・ドル安をメインシナリオに置いています。

2026年末の米ドル円相場見通しを円安方向に修正 消費税減税を巡る議論が焦点 野村證券・後藤祐二朗 | NOMURA ウェルスタイル – 野村の投資&マネーライフ 2026年入り後の米ドル円相場は乱高下し、一時1米ドル=159円台半ばまで上昇した後、1月末にかけて152円台前半まで調整 www.nomura.co.jp

三井住友DSアセットマネジメントも、目先はドル高・円安に振れやすいものの、時間の経過とともに緩やかに円高方向へ転じていくと見ています。背景には、拡張的な財政政策をとる高市政権と、日銀の緩やかな利上げペースを材料にした投機的な円売りがあると分析されています。ただし、日米の金利差がある程度残ることや、家計による海外資産への分散投資などの構造変化から、大幅に円高が進む可能性は低いとも指摘されています。

2026年のドル円相場見通し www.smd-am.co.jp

ここで個人投資家が押さえておきたいのは、「円安はドル円だけの話ではない」という点です。外為どっとコムの専門家分析では、円はユーロやポンドに対しても弱く、円安が日米金利差だけでは説明しきれない局面に入っているとされています。日銀が利上げを進めても、その到達点(ターミナルレート)が意識されれば、円高圧力は市場が期待するほど強まらない可能性もあるという見立てです。

【ドル円見通し総まとめ】円安はいつまで続くのか?2人のプロが読むドル円相場の行方 2026年5月13日 – 外為どっとコム マネ育チャンネル 2026年のドル円相場展望:円安が続く理由とドル円・ユーロ円の動向を為替のプロが徹底分析。今後のドル円相場の見通しをお届け www.gaitame.com

なぜ為替が利確の話と関わるのか。それは、円安が日本株、とくに輸出企業やインバウンド(訪日外国人)関連の株価を押し上げる強力な追い風になってきたからです。逆に言えば、もし予想どおりに円高へ反転すれば、その追い風は逆風に変わります。あなたの含み益のうち「円安のおかげで乗った分」がどれくらいあるのか。これは利確を考えるうえで無視できない要素です。円安の仕組みと生活への影響を平易にまとめた解説も参考になります。

【2026年】円安はいつまで続く?今後の見通し・生活への影響と対策をわかりやすく解説|七十七銀行 「円安はいつまで続くの?」2022年以降、円安が続き、物価高や家計負担が増えています。本記事では、円安が続く理由・終わる条 www.77bank.co.jp


不安その3 トランプ関税と「脱米国」の地政学

3つ目は、トランプ関税に代表される地政学リスクです。これはやや複雑なので、時系列で整理しておきましょう。

2025年4月、トランプ政権が発表した「相互関税」が世界の株式市場を直撃しました。いわゆる「トランプ関税ショック」です。その後の交渉を経て、日本に課される相互関税は原則15%の水準に落ち着きました。

ところが2026年2月、状況がさらにややこしくなります。米最高裁が、IEEPA(国際緊急経済権限法)にもとづく関税措置を違法と判断したのです。これを受けてホワイトハウスは、IEEPAに代わる措置として通商法122条にもとづく関税(当初10%、その後15%への引き上げを表明)を150日間課す方針を示しました。150日を超えて継続するには議会の承認が必要とされ、関税の先行きには不透明感が残っています。

トランプ関税「違法」判決でも影響は限定的か 今後は関税還付の有無などにも注目 野村證券・小清水直和 | NOMURA ウェルスタイル – 野村の投資&マネーライフ 2月20日、米最高裁はIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税措置を違法とする判決を下しました。同日、ホワイトハウスは www.nomura.co.jp

さらにやっかいなのが、鉄鋼・アルミや自動車・同部品を対象とする通商拡大法232条にもとづく追加関税です。ジェトロ(日本貿易振興機構)の分析によれば、232条の対象品目は定期的に拡大するしくみが作られ、複数の分野で調査が進められています。232条による関税は相互関税に優先して課されるため、相互関税が相対的に低めの日本企業にとっても、新たな負担となりうる点が指摘されています。

トランプ関税後の日本企業による対米投資動向 | 第2次トランプ政権下の新潮流を読み解く – 特集 – 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 世界最大の市場である米国は、日本企業の投資先として重要だ。だが、トランプ政権発足以降、ビジネス環境は不確実性が増し、足元で www.jetro.go.jp

一方で、この関税の混乱はマネーの流れも変えました。野村證券は、ドルベースのリターンで日本株や欧州株、新興国株が米国株を上回る「脱米国」の流れが崩れにくいと見ています。米国上場の日本株ETFへの資金流入も目立っているとのことです。

トランプ関税の違憲判決後も「脱米国」続くか 日本企業の対米環境は基本的に変わらず 野村證券ストラテジストが解説 | NOMURA ウェルスタイル – 野村の投資&マネーライフ 2月20日、米最高裁はIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税措置を違法とする判決を下しました。同日、ホワイトハウスは www.nomura.co.jp

そして、こうした関税やイラン情勢などの地政学イベントのたびに株価が急落し、また戻すという展開が、トランプ政権の2期目では「日常」になりつつあります。SBI証券は、トランプ2.0で株価変動の常態化が起きていると指摘しています。

株価ショックの常態化 ― トランプ2.0で変わった株価変動と投資の注意点|SBI証券 投資情報メディア ■ 3月第2週(3/9-3/13)の株式市場動向日経平均株価の3/13(金)終値は53,819円61銭で、前週末比-1,8 go.sbisec.co.jp

要するに、いまの相場は「歴史的高値・円安進行・関税の不確実性・地政学イベントの常態化」が同時に進む、神経をすり減らす環境です。含み益を抱えた個人投資家が「逃げたほうがいいのでは」と感じるのは、ごく自然なことなのです。

「利確すべき?」の前に知っておきたい、新NISAの3つの特殊ルール

ここで一度、相場から離れて「制度」の話をします。なぜなら、新NISAは課税口座(特定口座など)とは利確のソロバン勘定がまるで違うからです。同じ「売る」でも、意味合いが変わります。この特殊性を理解しないまま売買すると、せっかくの非課税メリットを取りこぼしてしまいます。

ルールその1 利益が出ても税金ゼロ、でも「損も通算できない」

新NISAの最大の魅力は言うまでもなく、運用益、つまり売却益・配当金・分配金にかかる税金がゼロになることです。通常の課税口座なら利益の約20%(20.315%)が税金で持っていかれますから、これは非常に大きい。100万円の含み益を利確しても、課税口座なら手取りは約80万円ですが、NISAなら100万円まるごと手元に残ります。利確のハードルが、税金の分だけ低いとも言えます。新NISAの全体像はこちらの解説がまとまっています。

新NISAの「6つのメリット・4つのデメリット」を解説!売却益・配当金などが非課税で、売却しても翌年に非課税投資枠が復活するなどメリットは多いが注意点も 日経平均株価が史上初の4万円台を突破。好調なのは日本株だけでなく、世界の株式市場全体も上昇している。この勢いを見て「新NI diamond.jp

ただし、メリットの裏側には注意点もあります。NISA口座内で出た損失は、課税口座の利益と相殺する「損益通算」ができません。翌年以降に損失を繰り越す「繰越控除」も使えません。課税口座なら、ある銘柄の損で別の銘柄の益を打ち消して税負担を減らせますが、NISAではそれができないのです。「非課税である代わりに、損失はなかったことにされる」と理解しておくとよいでしょう。

ルールその2 売った分の枠は「翌年」復活する(簿価ベース)

新NISAが旧NISAと決定的に違うのが、売却すると非課税の枠が復活する点です。生涯にわたって非課税で保有できる上限(非課税保有限度額)は、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて1,800万円、このうち成長投資枠は単独で1,200万円までと決められています。マネイロの解説によれば、商品を売却するとその取得価格分だけ枠が空き、翌年以降に再利用できるようになります。

新NISAで非課税枠が復活する仕組みとは?ケース別の活用法と図でわかる仕組みを解説|マネイロメディア|資産運用とお金の情報サイト マネーのイロイロに、自信を持てる決断を。マネイロは、NISA運用から老後資金準備まで、あなたの状況に合った解決策が見つかる moneiro.jp

ここで重要なのが「簿価残高方式」、つまり買ったときの値段(取得価格)で枠を管理するという点です。たとえば100万円で買った投資信託が150万円に値上がりし、それを売ったとします。このとき復活する枠は、値上がり後の150万円ではなく、買ったときの100万円分です。七十七銀行の解説でも、評価額がどう変化しても限度額に影響はなく、あくまで投資元本の金額で管理されると説明されています。

新NISAの上限額と再利用ルールを解説!賢く非課税投資しよう|七十七銀行 新NISAは生涯の保有限度額が1,800万円(うち、成長投資枠の上限額は1,200万円まで)あり、非課税枠の再利用も可能で www.77bank.co.jp

この「翌年復活する」という性質は、利確の心理的なハードルをさらに下げてくれます。一度売っても、枠そのものが消えてなくなるわけではないからです。会社設立のミチシルベの解説でも、非課税期間が無期限化されたことで、旧NISAのように「期限が来るから売るか迷う」必要がなくなり、売却のタイミングを自分で自由に決められるようになったと整理されています。

新NISAは売却後に枠復活する?仕組みと活用法を解説【2026年】 | 会社設立のミチシルベ 新NISAで商品を売却したら投資枠が復活すると聞いたけれど、本当にそうなのか気になりますよね。 結論から言うと www.soico.jp


ルールその3 年間投資枠(360万円)はその年は戻らない

一方で、勘違いしやすい落とし穴もあります。それは、復活するのはあくまで「生涯の非課税保有限度額(総枠1,800万円)」であって、その年の「年間投資枠」は戻ってこないという点です。

年間投資枠は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、合計360万円です。たとえば今年すでに360万円を使い切ったあとに保有商品を売っても、その年のうちに「また360万円買い直せる」わけではありません。マネイロの解説でも、売却分が年間投資枠に加算されるわけではないと注意喚起されています。さらに、その年に使わなかった枠を翌年に持ち越すこともできません。

この3つのルールをまとめると、新NISAでの利確は「税金面では非常に有利」「枠は翌年復活するので柔軟」「ただし年内の買い直しと損益通算には制約あり」ということになります。課税口座のように「税金を払いたくないから売らない」という縛りが弱い分、むしろ純粋に「投資判断として売るべきか」だけを考えやすい器だと言えるでしょう。

利確に「正解」はない――それでも判断軸になる5つの問い

制度を理解したうえで、本題の「利確すべきか」に戻ります。冒頭でお伝えしたとおり、ここに万人共通の正解はありません。同じ含み益でも、20代の独身会社員と、来年に住宅購入を控えた家庭では、最適な答えがまるで違うからです。

そこで、判断を機械的に下すのではなく、自分に問いかけるための「5つの問い」を用意しました。この問いに順番に答えていくと、自分にとっての答えの輪郭が見えてきます。

問い1 その含み益は「生活に必要なお金」か

最初に確認すべきは、お金の「使い道と期限」です。

もし、その投資資金が「3年以内に使うことが決まっているお金」なら、利確を前向きに検討する理由があります。教育費、住宅の頭金、結婚資金などです。株価は短期的には大きく上下しますから、使う時期が決まっているお金を高値圏の株のままにしておくのは、リスクが高い。せっかくの含み益が、いざ使うタイミングで消えていた、ということになりかねません。使う時期が近いお金は、利益が乗っているうちに現金化しておく。これは「逃げ」ではなく「計画」です。

逆に、「当面使う予定のない余裕資金」であれば、急いで利確する必然性は薄れます。むしろ非課税の恩恵を長く受けながら、複利の力で育てていける資金です。お金に「いつ使うか」というラベルを貼ること。これが第一歩です。

問い2 あなたの投資の時間軸は何年か

次は、自分の投資スタンスの確認です。

あなたが「20年・30年かけて資産形成する長期投資家」なのか、「数カ月単位で値幅を取りたい人」なのかで、いまの高値の意味は変わります。長期の積立投資家にとって、2026年5月の6万6,000円が高いか安いかは、正直あまり重要ではありません。20年後に振り返れば、いまの水準が高値だったのか通過点だったのかは、誰にもわからないからです。長期投資家が短期の高値に反応して積立をやめたり全部売ったりするのは、しばしば「途中下車」となって、その後の上昇を取り逃す原因になります。

一方、もともと「ある程度上がったら利確する」という短中期のルールで臨んでいた個別株なら、目標に達した時点で淡々と利確するのは、当初の計画どおりの行動です。問題は、長期のつもりで始めたのに、相場が荒れた瞬間だけ短期投資家のように振る舞ってしまうこと。自分の時間軸を、相場の気分でコロコロ変えないことが大切です。

問い3 今の資産配分は、当初の計画からズレていないか(リバランス)

3つ目の問いは、ポートフォリオ全体のバランスです。ここに「正しい逃げ方」の核心があります。

株価が大きく上がると、ポートフォリオに占める株式の比率が、当初決めた配分より膨らんでいきます。たとえば「株50%・現金50%」で始めたのに、株高で「株65%・現金35%」になっているかもしれません。これは、知らないうちにリスクの量が増えている状態です。

ここで登場するのが「リバランス」という考え方です。増えすぎた資産(株式)の一部を売り、減った資産(現金や債券)に振り向けて、もとの比率に戻す作業です。リバランスとしての売却は、「相場が怖いから逃げる」のではなく、「あらかじめ決めたリスク量を維持するために、ルールどおり整える」行為です。同じ「売る」でも、恐怖に駆られた売りと、規律にもとづく売りでは、まったく意味が違います。利確を考えているなら、まず「全体のバランスがどれだけ崩れているか」を確認してみてください。

問い4 売る理由は「分析」か「恐怖」か(狼狽売りの罠)

4つ目は、自分の心の中をのぞく問いです。

「いま売りたい」と思ったとき、その理由を言葉にしてみてください。「この企業の成長ストーリーが崩れた」「想定していた目標株価に届いた」「全体のバランスを整えたい」といった理由なら、それは分析や規律にもとづく判断です。

一方で、「なんとなく怖い」「ニュースが不安だ」「みんなが売っていそう」というのが本音なら、それは狼狽売り(パニック売り)の入り口かもしれません。トランプ2.0の時代は、関税や地政学のニュースで株価が急落し、しばらくして戻すという展開が常態化していると、先ほどのSBI証券の指摘にもありました。急落のたびに恐怖で投げ売りしていては、安いところで手放して高いところで買い直す、という最悪のパターンを繰り返しかねません。

恐怖を感じること自体は悪くありません。問題は、恐怖を「売買の引き金」にしてしまうことです。売りたくなったら、一拍おいて「これは分析か、恐怖か」と自問する。この一手間が、長期的なリターンを守ります。

問い5 売った後、その資金をどうするのか

最後の問いは、意外と見落とされがちです。「売ったあと、その現金をどうするのか」を、売る前に決めておくことです。

利確して現金化したものの、その後どう運用するか決めていないと、相場が下がっても「もっと下がるかも」と買えず、上がれば「乗り遅れた」と追いかけ買いしてしまう。気づけば現金のまま、機会を逃し続けることになりがちです。出口の戦略は、入口とセットで考える必要があります。

たとえば「高値圏の値がさ成長株を一部利確し、その資金で割安・高配当のディフェンシブ株を買う」「半分を現金で待機させ、急落時の買い増し原資にする」など、売った後の道筋を先に描いておく。これが描けないなら、まだ売る準備ができていないのかもしれません。

相場が怖いとき、積立の手は止めるべきか

利確と並んでよく出る悩みが、「こんな高値で、毎月の積立を続けていいのか」「いったん積立を止めて、下がってから買い直すべきか」というものです。これも多くの個人投資家が直面する問いなので、ここで触れておきます。

結論を先に言えば、長期の積立投資においては、相場が怖いからといって積立そのものを止めるのは、多くの場合おすすめできません。理由は「時間の分散」にあります。毎月一定額を買い続けるドルコスト平均法では、株価が高いときには少なく、安いときには多く買うことになり、平均購入単価が自然とならされます。高値で積立を止めてしまうと、その後に訪れるかもしれない「安く買えるチャンス」を、みすみす逃すことになりかねません。

相場の天井や底を正確に当てることは、プロでも至難の業です。「上がりそうだから買い増す、下がりそうだから止める」という相場予測に頼った積立は、たいてい裏目に出ます。むしろ、自分が決めた金額を、相場のニュースに関係なく機械的に積み立て続けることこそ、感情に振り回されないための仕組みなのです。

ここで、これまで述べてきた「利確・リバランス」と「積立継続」は、決して矛盾しないことに注意してください。積立という入口は淡々と続けつつ、増えすぎた資産は出口(部分利確やリバランス)で整える。攻めの積立と、守りの調整を、別々の作業として並行させる。これが、高値圏でうろたえないための基本姿勢です。

ただし例外もあります。近い将来に使う予定が決まったお金まで無理に積み立てている場合や、生活が圧迫されるほどの金額を投じている場合は、金額そのものの見直しが必要です。あくまで「余裕資金で、長期で」という前提があってこその積立継続だという点は、しっかり押さえておきましょう。

円安局面での「正しい逃げ方」――全部売る必要はない

ここからは、より具体的な「逃げ方」の技術に入ります。利確というと「全部売る・全部持ち続ける」の二択で考えてしまいがちですが、実際の選択肢はもっと豊かです。

「全売り」ではなく「部分利確」という発想

もっとも実践的なのが「部分利確」です。保有している株や投信を全部売るのではなく、たとえば3分の1だけ、あるいは元本に相当する分だけを売る、という考え方です。

部分利確には、心理的な利点があります。一部を利確して利益を確保すれば、「もっと上がったら悔しい」という欲と、「下がったら含み益が消える」という恐怖の、両方を和らげられます。残した分は引き続き成長を狙えますし、売った分は確実に手元に残る。「全部売って後悔する」「全部持って後悔する」という両極端の後悔を避ける、バランスの取れた一手です。

新NISAなら、この部分利確がさらにやりやすくなります。売った分の枠は翌年に復活しますし、利益に税金もかかりません。「とりあえず半分だけ利確して、様子を見る」という柔軟な動きが取りやすい器なのです。

円安の追い風に乗った銘柄は、円高反転で逆回転する

部分利確の対象を考えるとき、ヒントになるのが為替です。先ほど触れたとおり、複数の証券会社やシンクタンクが、2026年末にかけて緩やかな円高・ドル安を予想しています。

もしこの予想が当たれば、これまで円安の恩恵を強く受けてきた銘柄ほど、追い風が逆風に変わります。具体的には、海外売上比率の高い輸出企業や、円安で割安感が出て訪日客が増えたインバウンド関連株です。これらの株価には「円安プレミアム」が乗っている可能性があり、円高転換時にはそのプレミアムがはがれるリスクがあります。

もちろん、為替の予想は外れることもありますし、円安がさらに進む可能性も残っています。だからこそ「全部売る」ではなく、円安メリットの大きい銘柄を中心に「一部を利確してリスクを軽くしておく」という発想が現実的なのです。為替の方向性に賭けるのではなく、どちらに転んでも大やけどしない態勢を整える、というイメージです。

ドルベースで考える――「脱米国」マネーの追い風

もう一つ、視野を広げる視点を紹介します。それが「ドルベースで考える」という発想です。

私たちはつい円建ての株価だけを見ますが、世界の投資家はドル建てで日本株を評価しています。野村證券が指摘した「脱米国」の流れ、つまりドルベースのリターンで日本株・欧州株・新興国株が米国株を上回るという構図は、海外マネーが日本株を買う動機になっています。日本株は「米国一極集中」のリスク分散先として選ばれている側面があるわけです。

これは、円高が進んでも日本株がそれほど崩れない可能性を示唆します。円高はドル建ての日本株リターンを押し上げるため、海外投資家にとってはむしろ買いやすくなる面もあるからです。為替を一面的に「円高=日本株に悪い」と決めつけず、複数のシナリオを持っておくことが、過剰な利確を防ぎます。

数字でつかむ「部分利確」と「枠の復活」

抽象的な話が続いたので、ここで簡単な数字を使って、新NISAでの利確のイメージを具体化しておきましょう。以下はあくまで仕組みを理解するための単純化した例であり、実際の税制や手数料、各社の取り扱いは異なる場合があります。

まず、課税口座とNISAの差を確認します。ある成長株を200万円で買い、300万円まで値上がりしたとします。含み益は100万円です。これを利確した場合、課税口座なら利益100万円に約20%の税金がかかり、約20万円が引かれて手取りの利益は約80万円です。一方、新NISAなら税金ゼロで、100万円の利益がまるごと残ります。同じ値動きでも、手元に残る金額が20万円も違う。これがNISAで利確する強みです。

次に、部分利確と枠の復活の関係を見てみましょう。成長投資枠で、ある銘柄を取得価格ベースで600万円分保有しているとします。これが値上がりして評価額900万円になりました。「過熱が気になるので一部だけ利確しよう」と考え、評価額ベースで300万円分(取得価格ベースでは200万円分)を売ったとします。

このとき、まず利益分は非課税で受け取れます。そして翌年には、売った銘柄の取得価格にあたる200万円分の非課税保有限度額が復活します。つまり、いったん利確して利益を確保しても、来年にはまた200万円分の枠を使って、同じ銘柄でも別の銘柄でも、非課税で買い直せるのです。「売ったら枠が永久になくなる」という旧NISAの発想は、ここでは当てはまりません。

この仕組みを踏まえると、新NISAでは「高値圏で一部利確して利益を確保し、相場が落ち着いたら復活した枠で買い直す」という柔軟な戦略が取りやすいことがわかります。もちろん、買い直したい価格まで下がる保証はありませんし、相場を当てにいく行為にはリスクが伴います。それでも、「売ったら終わり」ではなく「売っても枠は戻る」という安心感が、過度に売りをためらわせない後押しになるのは確かです。

なお、復活するのはあくまで翌年であり、その年の年間投資枠(合計360万円)がその場で戻るわけではない点は、繰り返しになりますが要注意です。年内に大きく売買を回転させようとすると、年間枠の上限に引っかかることがあります。利確そのものはいつでもできますが、「買い直し」には年単位のペース配分が必要だと覚えておきましょう。

トランプ関税の時代に「揺れにくい」ポートフォリオとは

利確して得た資金の振り向け先や、これから組み替えていくポートフォリオの方向性についても、考え方を整理しておきましょう。キーワードは「関税の直撃を受けにくく、相場が荒れても揺れにくい」という点です。

関税の直撃を受けにくい「内需・現地生産」企業

トランプ関税の影響を受けやすいのは、米国に製品を輸出している企業です。逆に、影響を受けにくいのは、(1)そもそも国内市場が中心の内需企業、(2)関税を避けるために米国など消費地の近くで現地生産している企業、です。

とくに後者の「現地生産」は、関税時代の重要な防衛策です。米国内で作って米国で売れば、輸入関税の対象になりません。日本企業の対米投資が活発化しているのも、この流れの一環です。利確後の資金の振り向け先として、あるいは長期保有の候補として、「関税をかわす力を持っているか」という視点で企業を見てみると、これまでと違う発見があるはずです。

高配当・割安株という「守りのクッション」

相場の高値警戒が強まる局面では、高配当株や割安株(バリュー株)が「守りのクッション」として見直されやすくなります。

理由はいくつかあります。まず、配当という形で定期的にキャッシュが入るため、株価が一時的に下がっても精神的に持ちこたえやすい。次に、もともと割安に放置されている株は、過熱した値がさ成長株に比べて下落余地が相対的に小さいと考えられること。そして、相場が荒れると投資家が「とりあえず割高なものを売って、割安で配当のあるものに逃げる」動きを取りやすいことです。

派手さはありませんが、こうした株はポートフォリオの「重し」として機能します。値がさ成長株で攻めつつ、高配当・割安株で守る。この組み合わせが、揺れにくいポートフォリオの一つの形です。

テーマ株の「含み益」は、いちばん荷重がかかる場所

ここで、最初の「不安その1」に話が戻ります。いまの日本株の上昇は、AI・半導体・データセンターといった一部のテーマ株が牽引しています。野村證券が指摘したとおり、上昇は少数の銘柄に集中し、予想PERも高めの水準にあります。

ということは、多くの個人投資家の「含み益」も、こうしたテーマ株に集中している可能性が高いのです。そして、急騰したテーマ株は、相場が崩れるときに最も激しく下落しやすい場所でもあります。上げの主役は、下げの主役にもなりやすい。だからこそ、利確やリバランスを考えるなら、まず「自分の含み益が、どれだけ一部の過熱テーマに偏っているか」を点検することが出発点になります。偏りが大きいほど、部分利確やリバランスの優先度は高い、と考えるのが自然でしょう。

3つのシナリオで「備え方」を考える

ここまでの議論を、相場のシナリオごとに整理しておきましょう。未来は誰にも当てられませんが、複数のシナリオを想定し、それぞれで大けがしない準備をしておくことが、一つの賭けに出るよりずっと賢明です。

シナリオ1は「円安が続き、株高も続く」場合です。いまの延長線上の世界で、輸出株やインバウンド株の追い風も続きます。この場合、慌てて全部売る必要はありません。ただし高値づかみのリスクは高まるため、増えすぎた分のリバランスや、一部の利益確定で「守りの現金」を厚めにしておくと安心です。

シナリオ2は「円高に反転し、株価も調整する」場合です。複数の証券会社がメインシナリオに近いものとして想定している展開です。このとき、円安メリットの大きかった銘柄ほど逆風を受けます。あらかじめそうした銘柄を一部利確しておけば、ダメージを和らげられます。そして調整局面は、復活した非課税枠を使って、割安になった優良株を仕込むチャンスにもなりえます。

シナリオ3は「関税や地政学ショックで急落する」場合です。トランプ2.0の相場では、このシナリオがいつ来てもおかしくありません。ここで効いてくるのが、高配当・割安株や現金といった「守りのクッション」です。守りを厚くしておけば、急落時に狼狽売りせずに済み、むしろ買い向かう余裕すら生まれます。

3つのシナリオに共通する備えは、結局のところ「一点張りしない」ことに尽きます。円安にも円高にも、平時にも急落にも、それぞれそこそこ対応できる配分を保つ。どれか一つのシナリオに全財産を賭けるのではなく、分散とルールで、どの未来が来てもうろたえない態勢をつくる。これこそが、不確実な相場における最大の防御だと言えるでしょう。

陥りやすい「利確の失敗パターン」

具体的な銘柄の話に入る前に、個人投資家がやりがちな利確・売却の失敗を整理しておきます。自分が同じ轍を踏んでいないか、チェックリストのように使ってみてください。

1つ目は、すでに何度も触れた「恐怖による狼狽売り」です。関税や地政学のニュースで急落した瞬間に、こらえきれずに投げ売りしてしまう。トランプ2.0の相場では急落と反発が繰り返されやすいため、底で売って戻りを取り逃す典型的な失敗につながります。

2つ目は、「利益確定は早く、損切りは遅く」という逆転現象です。少し利益が出るとすぐ利確したくなる一方、含み損は「いつか戻る」と塩漬けにしてしまう。結果として、利益は小さく、損失は大きくなる。本来は逆で、伸びる銘柄の利益はじっくり伸ばし、見込み違いの銘柄は早めに整理するのが理想です。

3つ目は、「相場のタイミングを当てようとしすぎる」ことです。天井で売って底で買い戻す、という完璧な売買を狙うほど、かえって動けなくなったり、頻繁に売買して手数料や判断ミスを積み重ねたりします。タイミングの正解を当てにいくより、ルールにもとづく部分利確やリバランスのほうが、長い目で見て報われやすい手法です。

4つ目は、「一つの銘柄やテーマに惚れ込みすぎる」ことです。大きな含み益が出ると、その銘柄が特別に思えてきて、過熱していても手放せなくなります。とくにいまはAI・半導体への資金集中が著しい局面です。どんなに優れた企業でも、ポートフォリオに占める比率が大きくなりすぎていないか、冷静に点検する習慣が必要です。

5つ目は、「売ったあとを考えていない」ことです。問い5で述べたとおり、出口だけ決めて次の一手がないと、現金のまま機会を逃したり、結局すぐに高値で買い直したりしがちです。利確は「売って終わり」ではなく、次の配置までがワンセットだと考えましょう。

これらの失敗に共通するのは、いずれも「感情」と「相場予測への過信」が引き金になっている点です。逆に言えば、あらかじめルールを決めておき、それを淡々と実行できれば、その多くは避けられます。失敗の型を知っておくこと自体が、最良の予防策になります。

銘柄を「発掘」する楽しみ――テーマ別の5銘柄

ここまでの考え方を、具体的な企業に当てはめてみましょう。以下では、この記事のテーマ(円安、関税、守りと攻め)に関係する5つの銘柄を紹介します。

大前提として、これらは「買うべき推奨銘柄」ではありません。あなた自身が企業を調べ、考えるための「出発点」として挙げるものです。有名すぎる大型株ではなく、少し掘り下げると面白い、発掘のしがいがある銘柄を選びました。各銘柄には、業績や予想、配当、株価診断などを確認できる「みんかぶ」のページへのリンクを付けています。数字は執筆時点のものなので、最新の情報は必ずご自身でご確認ください。

銘柄1 寿スピリッツ(2222)――円安インバウンドの“お土産”王者、ただし円高は逆風

最初は、円安・インバウンドというテーマの代表格、寿スピリッツです。社名にはなじみがなくても、「ルタオ」や「ナウオンチーズ」といった地域限定のお土産菓子ブランドを展開する会社、と聞けばピンとくる方も多いはずです。観光地や駅、空港で売られているあのお菓子たちを手がけています。

2026年3月期は売上高が約788億円(前期比8.9%増)、営業利益が約186億円(同5.6%増)と過去最高を更新しました。自己資本比率は約80%と財務も極めて健全です。円安で割安感が出た日本に外国人観光客が押し寄せ、お土産需要が伸びたことが追い風になってきました。

ただし、ここまでの記事で繰り返してきた論点がそのまま当てはまります。もし円高に反転すれば、訪日需要の拡大にブレーキがかかる可能性があります。実際、急速な円高反転がインバウンド需要の抑制要因になりうるとの見方も市場には出ています。「円安の追い風に乗った銘柄の代表」として、追い風と逆風の両面を学ぶのに格好の教材と言えるでしょう。

寿スピリッツ (2222) : 株価/予想・目標株価 [Kotobuki Spirits] – みんかぶ 寿スピリッツ (2222) 今日の株価、予想(AI株価診断など)、チャート推移、ニュース、その他にも今後の見通しや買い時・ minkabu.jp


銘柄2 MARUWA(5344)――AIブームを足元で支える“黒衣”のセラミック

2つ目は、いまの相場の主役であるAI・半導体テーマから、MARUWA(マルワ)です。エヌビディアのような派手な名前ではありませんが、AIの計算を支える半導体やデータセンターに不可欠な「セラミック基板」の世界的な大手で、抵抗器用セラミック基板では世界で高いシェアを握っています。まさに縁の下の力持ち、黒衣のような存在です。

AI特需を背景に、その株価は数年で十数倍という大化けを演じてきました。2027年3月期は、次世代高速通信や半導体需要を見込み、売上高・営業利益ともに2桁成長と増配を計画しています。営業利益率が30%を超える高収益体質も魅力です。

一方で、ここには「過熱テーマ株」の典型的なリスクも詰まっています。直近の決算では利益が前年を下回る局面もあり、業績の勢いには波があります。みんかぶのAI株価診断では「割高」と判断された時期もありました。大きく上がった分、相場が荒れれば下落も大きくなりうる――まさに「含み益と荷重が集中する場所」の好例です。攻めの銘柄をどう扱うかを考える題材になります。

MARUWA (5344) : 株価/予想・目標株価 [MARUWA CO.,] – みんかぶ MARUWA (5344) 今日の株価、予想(AI株価診断など)、チャート推移、ニュース、その他にも今後の見通しや買い時・ minkabu.jp


銘柄3 ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)――ヒューマノイドの“関節”を握る

3つ目も攻めのテーマから、ハーモニック・ドライブ・システムズです。こちらは、産業用ロボットやヒューマノイド(人型ロボット)の「関節」にあたる精密制御の減速機を手がける会社です。小型・軽量という強みを武器に、世界のロボットの動きを陰で支えています。

近年は「ロボット新時代」「フィジカルAI」といったテーマで注目を集めており、自動化投資の拡大や生成AIの普及にともなう先端半導体需要を背景に、受注回復が見込まれています。人型ロボットが普及すれば、その関節需要は飛躍的に増える可能性があり、夢のある成長ストーリーを持つ銘柄です。

ただし、設備投資の波に業績が左右されやすく、受注や工場の稼働率が振れやすいという特徴があります。期待が大きい分、株価の水準も高めに評価されがちで、みんかぶのAI株価診断で「割高」とされたこともありました。テーマの将来性と、足元のバリュエーション(割高・割安)のバランスをどう取るか。投資の難しさと面白さの両方を味わえる銘柄です。

ハーモニック・ドライブ・システムズ (6324) : 株価/予想・目標株価 [HDS] – みんかぶ ハーモニック・ドライブ・システムズ (6324) 今日の株価、予想(AI株価診断など)、チャート推移、ニュース、その他にも minkabu.jp


銘柄4 ニフコ(7988)――関税をかわす“現地生産”のプラスチック部品

4つ目は、関税対策と守りのテーマから、ニフコです。自動車や家電に使われるプラスチックの留め具(ファスナー)や成形部品を作る、世界的なニッチトップ企業です。地味ですが、クルマ1台には膨大な数のプラスチック部品が使われており、その隠れた主役の一つです。

ニフコの強みの一つが、グローバルな現地生産体制です。米国やインドなど、消費地の近くで生産する体制を築いてきました。これは、まさにトランプ関税の時代に「関税をかわす力」を持つということでもあります。自動車関連という関税の影響を受けやすい業種にありながら、現地生産でリスクを和らげている点が興味深いところです。

業績面では、2026年3月期の売上高は約3,526億円とほぼ横ばいながら、堅実なコスト管理で利益を維持し、配当を年80円へと増やす方針を示しました。配当利回りは2%前後、PER(株価収益率)は10倍台前半、PBR(株価純資産倍率)は1倍台前半と、値がさ成長株に比べて落ち着いたバリュエーションです。攻めのテーマ株とは対照的な「守りのクッション」として、どんな役割を果たせるかを考える題材になります。

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銘柄5 三谷商事(8066)――セメントとITが同居する“ど渋”バリュー株

最後は、徹底して地味な割安・高配当系のバリュー株、三谷商事です。福井県を地盤とする専門商社で、セメントや生コンといった建設資材、燃料エネルギー、そして情報システムまで手がける、なんとも個性的な事業構成の会社です。セメントとITが一つの会社に同居しているのは、知れば知るほど面白い特徴です。

直近の業績では、情報システム関連の特需などを背景に、売上高は横ばいながら純利益が前期比で2割以上伸びるなど、堅調に推移しました。自己資本比率も改善しています。それでいて、PERは7倍前後、PBRは1倍前後と、株価の評価は控えめな水準にとどまってきました。いわゆる「割安に放置されたバリュー株」の典型です。

東証スタンダード市場に上場しており、知名度は決して高くありません。だからこそ、自分で四季報やみんかぶを開いて「なぜこんなに割安なのか」「事業の中身はどうなっているのか」を調べる、発掘の楽しみが詰まっています。派手な成長株に疲れたとき、こうした“ど渋”バリュー株に目を向けてみると、投資の引き出しが一つ増えるはずです。

三谷商事 (8066) : 株価/予想・目標株価 [MITANI CORPORATIN] – みんかぶ 三谷商事 (8066) 今日の株価、予想(AI株価診断など)、チャート推移、ニュース、その他にも今後の見通しや買い時・売り minkabu.jp

これら5銘柄を並べてみると、いまの相場の縮図が見えてきます。攻めの代表であるMARUWAやハーモニックは、含み益も大きい代わりにリスクも集中しやすい。円安の申し子である寿スピリッツは、為替の反転に弱い。一方でニフコや三谷商事は、地味でも揺れにくい守りの性格を持っています。あなたのポートフォリオが、この5つのうちどのタイプに偏っているか。それを点検するだけでも、利確やリバランスの方針が見えてくるのではないでしょうか。

よくある疑問に答えます

ここまでの内容に関連して、個人投資家からよく聞かれる疑問を、いくつか取り上げておきます。

「含み益が出ているうちに、いったん全部売って利益を確定し、また同じものを買い直すのは得ですか」。課税口座ではこれは基本的に意味が薄く、売買のたびに手数料やタイミングのリスクを負うだけになりがちです。新NISAの場合も、利益に税金はかからないとはいえ、売って買い直す間に株価が動くリスクは残ります。明確な目的(リスク調整やリバランス)がないのに、ただ気分で全売り・買い直しを繰り返すのは、あまりおすすめできません。

「円安だから、いま外国株や外貨建て資産に乗り換えたほうがいいですか」。円安がさらに進むか、円高に転じるかは誰にも断言できません。複数の証券会社が緩やかな円高を予想している一方、円安が長引く可能性も指摘されています。為替の方向に一点張りするのではなく、円資産と外貨建て資産を分散して持っておくこと自体が、為替リスクへの基本的な備えになります。乗り換えで賭けるより、配分で備える、という発想が大切です。

「下落が怖いので、いったん全部売って様子を見たいです」。その気持ちは自然ですが、全売りは「相場が下がる」方に賭ける行為でもあります。予想に反して上がれば、戻れなくなります。怖さが強いなら、全売りではなく、まず一部利確やリバランスでリスクを軽くし、残りは保有を続ける。極端な二択ではなく、中間の選択肢を取るのが、後悔を最小にするコツです。

「初心者ですが、個別株の発掘はハードルが高いです」。無理に個別株から始める必要はありません。まずは投資信託やインデックスで土台を作り、余裕資金の一部で、この記事で紹介したような銘柄を「調べてみる」ところから始めれば十分です。みんかぶや四季報で企業を一社ずつ眺めること自体が、相場観を養う良い訓練になります。最初から大きく張らず、少額で「発掘の目」を鍛えていきましょう。

まとめ――「逃げ方」を制する者が、長期投資を制す

最後に、この記事の要点を振り返ります。

新NISAの含み益を「今すぐ利確すべきか」という問いに、万人共通の正解はありません。けれども、判断を支える軸はあります。そのお金をいつ使うのか、自分の時間軸は何年か、ポートフォリオのバランスは崩れていないか、売る理由は分析か恐怖か、売った後の道筋を描けているか。この5つの問いに答えていくことが、相場の熱と不安に流されないための羅針盤になります。

そして「正しい逃げ方」とは、多くの場合「全部売る」ことではありません。一部だけ利確する部分利確、当初のリスク量に戻すリバランス、円安メリットの大きい銘柄から軽くしていく、過熱テーマへの偏りを点検する。こうした、規律にもとづく細やかな調整こそが、長期投資家にとっての賢い退き方です。

新NISAは、利益に税金がかからず、売った枠も翌年に復活する、柔軟な器です。だからこそ、課税口座以上に「純粋な投資判断」で動きやすい。利確は目的ではなく、あくまで自分の計画を実現するための手段です。「一発で正解を当てる」ことを目指すのではなく、「どう転んでも大けがしない」態勢を、ルールとして持っておく。

相場が荒れる局面でうろたえず、淡々と自分のルールを実行できるかどうか。長期の資産形成の成否は、上昇相場での銘柄選び以上に、こうした「逃げ方」「守り方」の巧拙にかかっているのかもしれません。とくに、新NISAは一度きりの勝負ではなく、生涯にわたって付き合っていく制度です。今回の高値局面での身の処し方は、これから何度も訪れるであろう上昇と下落の、最初の練習問題にすぎません。ここで「恐怖ではなくルールで動く」感覚をつかんでおけば、次に相場が荒れたときも、きっと落ち着いて対応できるはずです。

この記事が、あなたなりの「正しい逃げ方」を見つける一助になれば幸いです。

そして、紹介した5銘柄をきっかけに、みんかぶや四季報を片手に、自分だけの「お宝銘柄」を発掘する楽しみも、ぜひ味わってみてください。

免責事項 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買や投資手法を推奨・勧誘するものではありません。紹介した銘柄はあくまで学習・研究のための例示であり、購入を勧めるものではありません。記事中の株価・指数・業績・為替・各種予想などの数値や見通しは執筆時点の情報にもとづくものであり、その正確性・完全性を保証するものではなく、将来変動します。投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断は、最新の情報をご確認のうえ、ご自身の責任と判断で行ってください。筆者は税理士・ファイナンシャルプランナー等の有資格者ではなく、個別の税務・投資助言を行うものではありません。

マーケットアナリスト

新NISAの含み益を“買い”と見るか“様子見”と見るか、判断の分かれ目はどこにあるんでしょうか。

投資リサーチャー

決算と需給だけでなく、今すぐ利確すべき?の流れがどう変わるか。そこを見ないと判断を誤ります。

セクション本記事で扱うポイント
いま個人投資家が直面している「3つの不安」投資判断の前提条件を点検
不安その1 歴史的高値圏の日本株と、ふくらんだ含み益関連銘柄との比較で位置付け
不安その2 乱高下する円相場と、円高反転リスク次の決算で確認すべき指標
不安その3 トランプ関税と「脱米国」の地政学構造と業績の関係を整理
「利確すべき?」の前に知っておきたい、新NISAの3つの特殊ルール需給と中期見通しを確認
ルールその1 利益が出ても税金ゼロ、でも「損も通算できない」リスクと割安性をチェック

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この記事を書いた人

「日本個別株デューデリジェンスセンター」運営者。日本の個別株に特化した投資リサーチを専門とし、銘柄分析・企業デューデリジェンス・業界動向・IPO分析を中心に2,800本超の分析レポートを執筆。ファンダメンタルズ分析とデータドリブンなアプローチで、個人投資家の意思決定をサポートしています。毎日更新の分析レポートを通じて、プロ水準のリサーチを個人投資家に届けることをミッションとしています。

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