新型コロナの5類移行後、日本経済は急回復するインバウンド需要に沸きました。観光・外食・小売はその恩恵を大きく受けましたが、その特需は一巡しつつあります。為替変動や海外景気に揺さぶられやすいインバウンド頼みのモデルから、足元の国内顧客の満足度向上へ舵を切る企業こそが、次の成長フェーズの主役になるはずです。
本記事では、百貨店・小売/外食/陸運・空運/ホテル・レジャー/その他の5領域で、国内顧客との関係深化を経営の柱に据えている注目銘柄を体系的に解説します。各銘柄を証券コード付きで掲載し、企業概要・KPI・リスク要因まで横並びで比較できる構成にしました。
- ① インバウンド依存からの脱却を進める 5業界×30+社 を一覧で把握できる
- ② 各銘柄を 事業内容/注目理由/リスク要因 の3点セットで横並び比較
- ③ 国内顧客満足度 を軸にした投資テーマの全体像が短時間でつかめる
インバウンド一巡後に見直される「国内顧客満足度」テーマとは
2023年5月の5類移行を境に、訪日外国人客数は急回復し、観光・外食・小売の業績は一気に持ち直しました。しかし2025年以降、円安一服や海外景気の減速懸念から、インバウンド「特需」の伸びはピークアウトしつつあります。一方で、国内では物価高と賃上げが同時進行し、「価格に見合う体験価値」を求める消費者が増えています。
こうした中で評価されるのが、国内のリピーターを着実に育てる企業です。DXによる利便性向上、パーソナライズ、独自の体験価値、ロイヤリティプログラムなどで、景気変動に左右されにくい収益基盤を築けるかどうかが問われます。
| 観点 | インバウンド頼みの企業 | 国内顧客満足度を磨く企業 |
|---|---|---|
| 収益の安定性 | 為替・地政学リスクで上下動が大 | リピーター比率が高く相対的に安定 |
| 客単価 | 円安局面で急騰しやすいが反動大 | 体験価値・会員施策で漸進的に向上 |
| DX投資 | 多言語・決済対応中心 | アプリ・会員データ・パーソナライズ重視 |
| 主なリスク | 為替反転、海外景気、地政学 | 国内人口減、人件費・原価高騰 |
| 投資の妙味 | 短期のテーマ株として急騰しやすい | 中長期で複利的にロイヤリティが効く |
【百貨店・小売】富裕層・ファンを囲い込む「体験価値」戦略
- ① 三越伊勢丹は外商とアプリで国内富裕層の囲い込みが進む
- ② PB・自社ECで独自の経済圏を作る企業(良品計画・アダストリア)が強い
- ③ ドンキやビックカメラは体験性のある店舗で国内リピーターを掴む
株式会社三越伊勢丹ホールディングス(3099)は「三越」「伊勢丹」を運営する百貨店大手で、富裕層向け外商に圧倒的な強みを持ちます。インバウンド需要を取り込みつつも売上の核は国内顧客で、専用アプリを軸にデジタル接点を強化中です。リスクは景気後退による高額品消費の冷え込みと、ECとの競争激化です。
株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)は「ドン・キホーテ」「アピタ」「ピアゴ」などを展開する総合小売グループ。PB「情熱価格」のリニューアルと独自の圧縮陳列が、国内消費者の支持を固めています。総合スーパー事業の収益性改善と円安下の輸入コストが課題です。
株式会社良品計画(7453)は「無印良品」を企画・製造・販売。500円以下の日用品・食品の拡充や冷凍食品強化で、生活防衛意識の強い国内消費者のニーズに応えています。リスクは原材料の調達コスト上昇と海外事業の収益変動です。
株式会社ユナイテッドアローズ(7606)はファッション感度の高い国内固定客を持つセレクトショップ大手。質の高い接客とコーディネート提案で長期的な関係を作る戦略です。流行サイクルと天候不順がリスク要因です。
株式会社アダストリア(2685)は自社EC「.st」を核に約2,000万人の会員基盤を構築。スタッフ投稿による親近感醸成で、国内のロイヤリティを高めています。SC客数減と若年層市場の競争激化が課題です。
株式会社ビックカメラ(3048)は駅前立地の家電量販店大手で、酒販・医薬品・玩具・スポーツ用品の品揃えを強化。専門知識のある販売員のコンサルティング接客がEC専業との差別化軸です。
| 銘柄 | 国内顧客戦略の核 | 主なリスク |
|---|---|---|
| 三越伊勢丹HD(3099) | 外商×顧客アプリで富裕層深耕 | 高額品消費の景気感応度 |
| パンパシフィックHD(7532) | PB「情熱価格」と圧縮陳列 | GMS収益性、円安コスト |
| 良品計画(7453) | 価格見直し・冷食・食拡張 | 原材料調達、海外収益 |
| ユナイテッドアローズ(7606) | 高感度品揃え・接客品質 | 流行・天候 |
| アダストリア(2685) | 「.st」会員2,000万人基盤 | SC客数、若年層競争 |
| ビックカメラ(3048) | 非家電拡充とコンサル接客 | 家電価格競争、EC専業 |
【外食】「安さ」から「楽しさ・満足度」への価値転換
- ① 物語コーポレーション・串カツ田中は体験型サービスで固定客化
- ② 共立メンテナンスは「ドーミー民」と呼ばれるリピーターが収益基盤
- ③ サイゼリヤ・すかいらーくは低価格×品質×DXで日常需要を捕捉
株式会社物語コーポレーション(3097)は「焼肉きんぐ」「丸源ラーメン」を展開。「おせっかい」と称される接客で国内ファミリー層から強い支持を獲得しています。正社員比率が高いため人件費上昇圧力が利益を圧迫する点には注意です。
株式会社共立メンテナンス(9616)は「ドーミーイン」と「共立リゾート」を運営。天然温泉大浴場、ご当地朝食、無料の「夜鳴きそば」などが国内のビジネス・レジャー客を惹きつけ、「ドーミー民」と呼ばれる熱狂的ファンが高いリピート率を支えています。
株式会社サイゼリヤ(7581)は徹底したコスト管理で低価格×品質を両立。インバウンドにも人気ですが本質は国内の支持基盤で、間違い探しなど安さ以外の楽しみも提供。豪州自社工場など品質投資を継続中です。
株式会社すかいらーくホールディングス(3197)は「ガスト」「バーミヤン」を運営する国内最大のファミレス。配膳ロボット・デジタルメニューのDXで深刻な人手不足に対応し、国内顧客満足度の向上を図ります。
株式会社串カツ田中ホールディングス(3547)は「チンチロリンハイボール」「自分で作るたこ焼き」など参加型エンタメで若者・ファミリー層のリピート率を高めています。全席禁煙化もファミリー取り込みに奏功。
株式会社鳥貴族ホールディングス(3193)は均一価格の焼鳥屋。国産鶏肉と店内串打ちにこだわり、値上げ後も既存店売上は好調。「安心して飲める場所」として国内に定着しています。
| 銘柄 | 差別化の軸 | 主なリスク |
|---|---|---|
| 物語コーポレーション(3097) | 「おせっかい」接客と業態開発 | 人件費・原材料 |
| 共立メンテナンス(9616) | 温泉・夜鳴きそばのファン化 | 投資負担・人件費 |
| サイゼリヤ(7581) | 低価格×品質、製造直販 | 原材料・物流費 |
| すかいらーくHD(3197) | 配膳ロボ・アプリDX | 人件費・エネルギー |
| 串カツ田中HD(3547) | 参加型エンタメ業態 | 居酒屋競争・アルコール離れ |
| 鳥貴族HD(3193) | 均一価格×国産鶏肉 | 鶏肉価格・人手不足 |
【陸運・空運】移動の「質」を高め、国内需要を深耕
- ① JR3社(東海・東日本・九州)はそれぞれ新幹線・Suica経済圏・観光列車で個性
- ② ANA・JALはマイル経済圏とLCC戦略で国内需要を厚くする
- ③ 日本空港ビルデングはターミナル商業で非運輸収益を成長
東海旅客鉄道株式会社(9022)は東海道新幹線という日本の大動脈を運営。オンライン予約「EXサービス」と「そうだ 京都、行こう。」で国内需要を喚起しつつ、リニア中央新幹線という超長期成長ストーリーを抱えます。
東日本旅客鉄道株式会社(9020)は首都圏鉄道網とSuica×JRE POINTの巨大な国内顧客基盤、駅ナカ・駅ビルなど不動産事業で安定収益を確保しています。
九州旅客鉄道株式会社(9142)は「ななつ星」を筆頭にしたDS(デザイン&ストーリー)列車で観光需要を掘り起こし、福岡地区の不動産で稼ぐビジネスモデルが特徴です。
ANAホールディングス株式会社(9202)は国内線の安定収益を土台に「マイル経済圏」を拡大中。航空利用以外でもマイルが貯まる・使える仕組みで国内顧客を囲い込みます。
日本航空株式会社(9201)は安全運航への信頼を武器にした国内ビジネス需要が土台。傘下にLCC「ZIPAIR」「スプリング・ジャパン」を持ちレジャー需要も取り込む構造です。
日本空港ビルデング株式会社(9706)は羽田空港旅客ターミナルを運営。ターミナル内商業施設の魅力で「飛行機に乗らない人」も呼び込み、「羽田イノベーションシティ」など空港周辺の再開発も推進中です。
| 銘柄 | 国内深耕の打ち手 | 非運輸の柱 |
|---|---|---|
| JR東海(9022) | EXサービス、観光企画 | リニア中央新幹線 |
| JR東日本(9020) | Suica×JRE POINT | 駅ビル・駅ナカ・MaaS |
| JR九州(9142) | DS列車・観光ブランド | 福岡圏不動産 |
| ANA HD(9202) | マイル経済圏拡大 | 商社・旅行事業 |
| 日本航空(9201) | フル+LCC2ブランド | 非航空事業強化中 |
| 日本空港ビルデング(9706) | ターミナル商業 | 羽田イノベーションシティ |
【ホテル・レジャー】唯一無二の「体験」で国内客を魅了
- ① オリエンタルランドはファンタジースプリングスで客単価をさらに引き上げ
- ② リゾートトラストは会員制で景気耐性の高い収益モデル
- ③ 帝国ホテルは建て替え長期計画でブランド価値を再定義
株式会社オリエンタルランド(4661)は東京ディズニーリゾートを運営。売上の大半は国内ゲストで、2024年開業のファンタジースプリングスが客単価をさらに押し上げます。リピート率の高さは国内テーマパーク随一です。
リゾートトラスト株式会社(4681)は「エクシブ」など会員制リゾートホテルを全国展開。インバウンド依存度が低く、国内富裕層を絞った会員権販売モデルが景気耐性を生みます。シニア向け住宅やメディカル事業も拡大中です。
株式会社帝国ホテル(9708)は130年以上の歴史を持つ日本を代表する高級ホテル。国内政財界・富裕層からの絶対的な信頼が経営の基盤で、現在進行中の東京本館の建て替え(2036年完了予定)は次世代の国内顧客を惹きつける長期投資です。
藤田観光株式会社(9722)は「ホテル椿山荘東京」「箱根小涌園ユネッサン」「ワシントンホテル」を展開。全天候型のユネッサンが国内ファミリー層に人気で、複数ブランドの総合力が強みです。施設老朽化への更新投資が課題です。
| 銘柄 | 体験価値の核 | 主なリスク |
|---|---|---|
| オリエンタルランド(4661) | ファンタジースプリングス | 客単価許容度・ライセンス |
| リゾートトラスト(4681) | 会員制リゾート | 会員権市況・人口動態 |
| 帝国ホテル(9708) | 130年の格式・建て替え | 投資負担・外資高級競争 |
| 藤田観光(9722) | 温泉エンタメ・複数業態 | 老朽化更新・有利子負債 |
【その他】国内顧客の利便性・満足度を支えるインフラ企業
株式会社システナ(2317)は独立系SIerでアプリ開発・金融SI・DX支援を幅広く展開。国内企業がアプリやシステム刷新で顧客満足度を高める動きの受け皿となるビジネスです。
株式会社ぐるなび(2440)は飲食店検索サイトから飲食店DX支援へモデル転換中。モバイルオーダー、予約台帳、データ分析を提供し、楽天グループとの連携で再構築を進めています。
株式会社エアトリ(6191)はオンライン総合旅行プラットフォームを運営。航空券+ホテルの「エアトリプラス」など利便性訴求型のサービスが国内旅行需要を取り込みます。
GMOペイメントゲートウェイ株式会社(3769)は決済代行(PSP)の最大手。国内のキャッシュレス化と企業のDX進展に直結する成長性が魅力で、後払い決済や給与即時払いへも事業を広げています。
そのほか同テーマで注目される銘柄
- 西日本旅客鉄道株式会社(9021):北陸新幹線延伸と大阪駅周辺の再開発で国内需要を深耕。
- 株式会社J.フロント リテイリング(3086):大丸松坂屋とパルコの両輪で都市部の富裕層・若者を取り込む。
- 株式会社吉野家ホールディングス(9861):「黒毛和牛すき鍋膳」など高付加価値メニューで客単価向上。
- KNT-CTホールディングス株式会社(9726):クラブツーリズムのテーマ性ある国内バス旅行が中高年層に強い。
| KPI | 読み方 | 注目銘柄の例 |
|---|---|---|
| 既存店売上高前年比 | 国内リピーターの厚みを示す指標 | サイゼリヤ、鳥貴族HD、ユナイテッドアローズ |
| アプリ会員数 | デジタル接点の規模 | アダストリア、三越伊勢丹HD |
| 客単価 | 体験価値の対価としての値上げ余地 | オリエンタルランド、帝国ホテル |
| リピート率/会員継続率 | ロイヤリティの強さ | 共立メンテナンス、リゾートトラスト |
| マイル・ポイント残高 | 経済圏の濃度 | ANA HD、JR東日本 |
| 業界 | 短期リスク | 中長期リスク |
|---|---|---|
| 百貨店・小売 | 高額品消費の冷え込み | ECとの長期競争、人口減 |
| 外食 | 食材・人件費高騰 | アルコール離れ、若年層の消費構造変化 |
| 陸運・空運 | 燃油・為替・地政学 | 人口減、地方路線維持、設備投資 |
| ホテル・レジャー | 天候・自然災害 | 建て替え投資、外資高級競争 |
| DX・決済インフラ | 企業のIT投資抑制 | エンジニア不足、規制変更 |
| スタンス | 向く銘柄イメージ | 代表例 |
|---|---|---|
| 安定収益・配当志向 | 大型・経済圏型 | JR東日本、ANA HD、GMOペイメントゲートウェイ |
| 体験価値の成長 | 独自サービスを持つ企業 | オリエンタルランド、共立メンテナンス、物語コーポレーション |
| 中小型グロース | 業態・DXに尖り | アダストリア、串カツ田中HD、システナ |
| 富裕層・会員制 | 景気耐性のあるニッチ | 三越伊勢丹HD、リゾートトラスト、帝国ホテル |
まとめ:国内顧客満足度を磨く企業に「次の主役」がいる
インバウンドの恩恵は短期的には大きい一方、為替・地政学に振り回されやすいテーマでもあります。本記事で取り上げた30+社は、国内顧客の満足度向上を経営の中心に据えることで、景気変動に対する耐性を高めようとしている点が共通します。
ポートフォリオ全体の中で、「インバウンド寄りの銘柄」と「国内顧客深耕の銘柄」のバランスを意識して組み合わせることで、テーマ株の急騰リスクと安定収益のバランスを両立しやすくなります。
FAQ:よくある質問
Q1. 「国内顧客満足度テーマ」とインバウンドテーマは両立しますか?
Q2. このテーマでまず注目すべきKPIは?
Q3. 中小型のグロースで注目すべき銘柄は?
Q4. 安定配当・経済圏型ではどの銘柄が代表的ですか?
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※本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資判断はご自身の責任において、IR資料等もあわせてご確認ください。


















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