生成AIブーム第二幕、特許分析テクノロジーが変える日本企業の競争力と個別株投資の新常識

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この記事の要点
  • 「AI関連」という言葉の解像度が低すぎる問題
  • このニュースに反応したら負ける
  • なぜ今、特許分析なのか。私が辿り着いた一次情報
  • 3つの空模様、どこに自分を置くか

AI関連株というラベルに振り回されないために、何を見て、何を捨てるかを整理します

「AI関連」という言葉の解像度が低すぎる問題

2026年の春、自分のウォッチリストを見返していました。

半導体、データセンター、フィジカルAI、生成AI、AIエージェント、国産LLM。全部「AI関連」で括られています。去年の秋から冬にかけて、ソフトバンクグループが10月に45%上昇したあと11月に38%急落した、あの値動きを間近で見ていた方も多いと思います。

マーケットアナリストマーケットアナリスト
生成AIの第一幕はGPUやクラウドに資金が集中しましたが、第二幕では「AIをどう使うか」が焦点に。特許分析テクノロジーはまさにその実用最前線です。

正直に言うと、私はこの「AI関連」という言葉が、いちばん投資家を迷わせていると感じています。

半導体装置メーカーとAIサービスの代理店は、同じ「AI関連」でも収益構造も競争優位もまったく違います。それなのに、ニュースでは一括りにされ、調整局面では一緒に売られ、期待相場では一緒に買われます。私たちは、その波に乗ったり飲まれたりしながら、いつの間にか「何を持っているのか」を説明できなくなっていきます。

私も同じでした。2024年の春、AI関連と呼ばれる銘柄を複数抱えて、調整局面で「これは本物のAI銘柄のはず」と自分に言い聞かせながら塩漬けにしていた時期があります。あのときの胃の重さは、今でも思い出すと鈍く痛みます。

この記事でお渡ししたいのは、2つです。ひとつは、AIブームの「第二幕」が始まりつつある今、何を見て何を捨てるかの視点。もうひとつは、「特許」という少し地味な情報を、個人投資家が自分の武器に変える使い方です。

難しい話はしません。居酒屋で先輩投資家と話しているくらいの距離感で、私の失敗と、そこから組み上げた自分のルールを、順番にお話しします。最後には、明日スマホを開いたときにすぐ確認できる具体的な行動まで落とし込みます。

このニュースに反応したら負ける

まず、いま市場に溢れている情報のうち、私が「見ても動かない」と決めているものを3つだけ挙げます。ノイズを捨てないと、シグナルは浮かび上がってこないからです。

ひとつ目は、「世界のAI市場は2028年に○兆ドル規模」系の予測数字です。誘発する感情は、機会損失への焦りです。市場規模が大きいことと、特定の企業が儲かることは、まったく別の話です。過去、半導体市場全体は拡大し続けているのに、個別企業の株価は何度も半値になっています。市場の大きさは、個別銘柄を買う理由にはなりません。

ふたつ目は、「○○がAI新会社設立」「○○がAI業務提携」といった単発の発表です。誘発する感情は、出遅れ恐怖、いわゆるFOMOです。発表から実際に収益に結びつくまでの距離が、ニュースの見出しからは絶対に読めません。2026年4月にソフトバンクとNECなどが国産AI基盤モデルの新会社を立ち上げると報じられましたが、こういうニュースでストップ高を追いかけると、翌週に半分戻すのが典型的なパターンです。

3つ目は、著名人の「AIバブル崩壊」発言です。誘発する感情は、恐怖です。バーリ氏だろうがソロモン氏だろうが、彼らの発言は彼らのポジションと時間軸での話です。関連株の大幅な上昇が続き、市場では調整局面を迎える可能性があるとの懸念も聞かれるといった記事は事実としては正しいですが、そのまま自分の売買判断にすると、判断の軸が他人の声になってしまいます。

では、逆に私が毎週必ずチェックしている「シグナル」を3つ挙げます。

ひとつ目は、AI関連の主力銘柄の株価と、日経平均への寄与度です。2025年10月末時点で日経平均株価を構成するウエート上位5銘柄のうち、4つがAI・半導体関連株で占められているという状態が続いています。つまり日経平均は、もはやAI・半導体ほぼ一色の指数です。この偏りが続いているのか、崩れてきているのかを週次で確認します。確認先は、各証券会社が出す指数寄与度レポートで十分です。

ふたつ目は、自分が保有する、あるいは検討している個別企業の「特許資産規模ランキング」の推移です。これについては、この記事の後半でじっくりお話しします。これが動いたら何が変わるかというと、その企業の中長期的な競争力そのものが変わります。

3つ目は、四半期ごとの決算説明会資料の「研究開発費」と「無形資産」の記述です。AI第二幕では、どの企業が本気で資源を投じているかが、財務諸表に出てきます。会社のIRページで無料で確認できます。頻度は四半期に一度で十分です。

これらはすべて、次の章で具体的に「どう読むか」の話に繋げます。

フェーズ生成AIブーム第一幕生成AIブーム第二幕
注目領域GPU・半導体・クラウドAI応用・特許分析・知財戦略
投資対象NVIDIA・大型テック株中心中小型AI応用企業に拡散
成長ドライバーインフラ需要実務活用・データ分析需要
日本株への波及限定的特許・知財関連で拡大中
目次

なぜ今、特許分析なのか。私が辿り着いた一次情報

ここからは、今この時期に私が市場で起きていると見ている「事実」と、その読み方をお話しします。

まず事実から整理します。

2025年、日経平均はAI・半導体主導で上昇しました。日経平均株価の年間上昇率(12月24日時点)は26%で、3年連続の年足上昇が確定的になり、その牽引役はAI関連でした。その一方で、2025年11月にはソフトバンクグループが月間で約38%下げるなど、主力銘柄のボラティリティは極端に大きくなっています。

ここから私の解釈です。

AIブームは「第一幕」と「第二幕」で、勝ち組の顔ぶれが変わる可能性が高い、と私は見ています。

第一幕は、GPUや半導体装置といった「AIを走らせるためのインフラ」に資金が集中した時期です。エヌビディアや東京エレクトロン、キオクシアなどが象徴です。

第二幕は、「AIを実業務に埋め込む」「AIを物理世界で動かす」フェーズです。フィジカルAI、AIエージェント、国産LLMといった言葉が出てきている背景はこれです。

問題は、第二幕では、第一幕の勝者がそのまま勝ち残るとは限らないことです。AIを実装する段階では、その企業が何十年もかけて蓄積してきた「業界固有の知見」と「特許の厚み」が効いてきます。ソフトだけでは勝てない領域に、AIが侵入していくからです。

ここで「特許」の話です。

パテントスコアは、特許出願後の審査経過情報をもとに、個別特許の注目度をスコアリング評価する指標です。出願人、審査官、競合他社の3者のアクションに着目し、同一技術分野、出願年の他の特許との相対比較により偏差値で評価します。つまり、単に何件出願しているかではなく、「その特許がどれだけ競合から注目され、どれだけ自社で権利化に力を入れているか」まで含めて数値化されているのです。

さらに、これを業界別・企業別に積み上げた「特許資産規模ランキング」が、パテント・リザルトという会社から毎年公表されています。2025年の全業種トップ3は三菱電機、キヤノン、パナソニックHDです。半導体製造装置では東京エレクトロン、AMAT、SCREENがトップ3、情報通信業界ではNTT、HUAWEI、GOOGLEがトップ3になっています。

なぜこれが投資に効くのか。ここは私の見立てですが、根拠はあります。

三菱UFJ信託銀行のレポートでは、アスタミューゼ社のインパクトスコアやTPPを用いて、特許価値が投資家の期待および企業価値に対して説明力を持つのかを検証しており、北米企業の時価総額上位500銘柄で、特許価値の指標が統計的に有意なリスクファクターとして機能することが示されています。

平たく言うと、特許の「質」は株価の動きを説明する材料のひとつとして、プロの運用現場では既に組み込まれ始めています。

ただし、ここは正直に書きますが、私はこのアプローチが「万能」だとは思っていません。第一に、特許は出願から公開まで1年半のタイムラグがあります。つまり、特許ランキングで見えている情報は、1年半前の意思決定の結果です。第二に、ソフトウェア寄りのビジネスは特許より「データ」と「ネットワーク効果」が競争力の源泉になっており、特許数だけでは測れません。

だからこそ、私が置いている前提はこうです。特許情報は「無視してよい情報」ではなく「他の情報と組み合わせて使う情報」である。具体的には、私は次の3つの条件がすべて揃ったときだけ、特許情報を個別株判断の材料に組み込みます。

条件1:対象企業が製造業またはハードウェア系で、特許が実際の参入障壁になっている業界であること。 条件2:直近2〜3期連続で、その企業の特許資産規模ランキングでの順位が維持または上昇していること。 条件3:同時に、決算上の研究開発費対売上高比率が、業界平均を下回っていないこと。

この前提が崩れたら、私はこのアプローチ自体を見直します。たとえば、特許資産規模ランキングの順位が2期連続で下落している企業については、他に強い買い材料があっても、サイズを半分以下に抑えます。

3つの空模様、どこに自分を置くか

ここからは、この先半年から1年の間に起こりうる展開を、3つのシナリオに分けて整理します。

雲は薄く晴れ間もある日のシナリオ

最も蓋然性が高いと私が見ている展開です。AI関連株は過熱感を伴いながらも、個別銘柄で選別が進み、相場全体は緩やかに上昇を続ける展開です。

発生条件:日経平均が現状水準から上下10%程度のレンジで推移し、半導体関連の決算が市場予想を大きく外さない状態。ソフトバンクグループのような主力が月次で20%超の変動を繰り返しても、指数全体では崩れない状態。

やること:保有している銘柄のうち、特許資産規模ランキングが直近2年で上昇している企業については、押し目で少しずつ買い増します。分割の具体的な方法はあとでお話しします。

やらないこと:話題になっている新規AI関連銘柄への初動参加です。第一幕で同じことをして何度も痛い目に遭いました。

チェックするもの:半導体関連主要銘柄の週次値動き、自分の保有銘柄の特許資産規模ランキング順位、四半期決算説明会資料の研究開発費の記述。

嫌な予感がする日のシナリオ

AIバブル懸念が現実の下落に転じる展開です。松井証券の窪田朋一郎さんは「2026年の夏場にかけてAIバブルが崩壊することで、日本株も巻き込まれて下落に転じる」と述べていますが、こうしたシナリオを想定しておくべきです。

発生条件:米国の主要AI関連銘柄が、高値から20%以上下落し、その状態が1か月以上続くこと。あるいは、ソフトバンクグループが再び月間30%超の下落を見せ、翌月に戻せないこと。

やること:全ポジションの半分を機械的にキャッシュに戻します。残りの半分のうち、特許資産規模が強く、かつPERが業界平均を下回る銘柄だけを残します。

やらないこと:「もう下げ切っただろう」というナンピン買いです。これは私が何度もやって負けたパターンで、M5で詳しくお話しします。

チェックするもの:米ナスダックの半導体指数、VIX指数、自分の保有銘柄の出来高(急増していれば機関の売却サイン)。

空を見ても何も分からない日のシナリオ

相場が明確な方向を出さず、ニュースだけが右往左往する展開です。個人的に最も消耗するパターンです。

発生条件:日経平均が2か月以上、上下5%程度の狭いレンジで動かず、テーマが毎週入れ替わる状態。

やること:何もしません。新規ポジションは取らず、既存の保有銘柄のサイズも変えません。この期間に資金を動かしてもノイズに巻き込まれるだけです。

やらないこと:SNSや動画でレコメンドされる「次の本命」への飛びつきです。

チェックするもの:信用評価損益率。これが極端にプラスに振れているか、マイナスに深く入っているかで、個人投資家全体の体温が分かります。

私が撤退を3日遅らせて払った授業料

ここからは、私自身の失敗の話をさせてください。少し長くなります。

2024年の春頃でした。日経平均は4万円を超え、AI関連銘柄が次々と年初来高値を更新していた時期です。私は、生成AI関連として紹介されていた、ある中型の半導体関連銘柄に、虎の子の資金の相当部分を投じていました。

今思えば、買った理由がひどく曖昧でした。SNSで有名な個人投資家が紹介していた、証券会社のレポートで「AI本命」と書かれていた、チャートが綺麗に右肩上がりだった。それだけです。その会社の特許がどれだけ強いのか、売上のどれだけがAI向けなのか、競合に対する優位性は何か、何ひとつ自分の言葉で説明できませんでした。

最初の数週間は含み益が2割を超えていました。夜、仕事から帰ってスマホを開くたびに、画面が緑色に染まっていました。正直、気持ちよかったです。会社で嫌なことがあっても、「まあ、株が上がってるし」と自分を慰めるようになっていました。

転機は、夏前の決算でした。売上は好調だったものの、ガイダンスが市場予想を下回り、翌日株価は10%下げました。

私はそこで「これはチャンスだ」と思ってしまいました。理由は、そのとき私が読んでいた複数の記事が、揃って「AI関連の長期トレンドは変わらない」「一時的な調整は絶好の買い場」と書いていたからです。私の判断ではなく、周りの声が私の判断を上書きしていました。

買い増しの注文ボタンに指を置いたとき、頭の中では「これで平均単価が下がる」「戻ったときの利益が膨らむ」という計算だけが動いていました。その銘柄の競争力が本当に続くのかという一次情報の確認は、一切していません。

結果から言うと、株価はそこからさらに3割下げました。私はまたナンピンしました。そして、さらに2割下げました。3回目のナンピンを検討していたところで、ようやく自分が何をしているか気付きました。

気付いたきっかけは、自分のポートフォリオを印刷して眺めたことでした。紙に書き出した瞬間、私の資金の半分近くが、その一銘柄に偏っていました。最初は「全体の15%」だったはずなのに、ナンピンを重ねるうちに偏りが膨らんでいたのです。

損切りの決断まで、そこからさらに3日かかりました。「明日戻すかもしれない」「決算さえ越えれば」と、自分に言い訳をする時間でした。3日後、私は結局、平均単価から約35%下で手仕舞いました。

何が間違いだったか。考え続けて、いくつか結論に達しました。

ひとつは、買った理由が他人の言葉だったことです。SNSの投資家も、証券会社のレポートも、間違っていません。ただ、それは彼らのロジックであって、私のロジックではありませんでした。自分の言葉で説明できないポジションは、下げたときに持ちこたえられません。

ふたつ目は、サイズです。最初の時点で「全体の15%」が上限だったはずが、ナンピンで30%を超えました。「平均単価を下げる」という言葉には、サイズが膨らむという副作用があります。その副作用を、私は完全に軽視していました。

3つ目は、撤退基準を決めていなかったことです。「○%下げたら撤退」「○週間戻らなかったら撤退」「前提が崩れたら撤退」のどれも、私は持っていませんでした。だから、損切りの決断が都度その場の感情に委ねられ、決断が遅れました。

その銘柄、今どうなっているかというと、当時の高値を未だに回復していません。もし私がナンピンせずに最初の下落で撤退していたら、損失は5%程度で済んでいました。

あの夏のことを思い出すと、今でも胃が少し重くなります。失敗は時間が経てば消えると言われますが、私の場合は消えていません。ただ、消えていないからこそ、次の投資で同じ判断を繰り返しそうになったとき、胃の重さが私を止めてくれます。

だから私は今、次の章でお話しする実践ルールを、自分のスマホのメモ帳に書き込んで、毎週月曜の朝に読み返すようにしています。

逃げるのは負けじゃない。生き残るための撤退ライン

ここからは、あの失敗から組み上げた、私の実践ルールをお話しします。

あえて最初に書いておきます。これは「私のルール」であって、あなたのルールではありません。あなたの資金量、リスク許容度、投資経験、生活環境は、私とは違います。そのままコピーしても機能しません。中身の「考え方」だけを受け取ってください。

資金配分のレンジ

まず現金比率です。私は、AI関連のような期待先行テーマが強い時期は、現金比率を30〜50%の範囲で持ちます。

具体的には、日経平均や米国主要指数が明確な上昇トレンドにあるときは30%寄り、主力AI関連銘柄のボラティリティが月次で30%を超えるような過熱期には50%寄りに振ります。

なぜこのレンジなのか。一括で突っ込むと、調整局面で身動きが取れなくなるからです。現金がなければ、押し目で買うことも、ポジションを整理することもできません。現金は「機会を待つコスト」ではなく「機会を掴むための弾薬」だと考えています。

建て方

個別銘柄を買うときは、3〜5回に分割して買います。間隔は2〜4週間です。

分割する理由は単純で、私は底を当てられないからです。失敗談で書いた通り、一括で入ると最初の数週間の含み損益に、自分の精神状態が引きずられます。3回に分ければ、2回目・3回目を買うときに、冷静な目で「まだ買う根拠が有効か」を確認できます。

あの銘柄で大失敗したとき、私はこの分割を無視していました。だから今、分割は私にとって「判断を冷やす時間」そのものです。

撤退基準の3点セット

ここがいちばん大事です。私は必ず、買う前に3つの撤退基準を書き出します。

ひとつ目、価格基準です。買値から15%下落した時点で、理由を問わず半分を売ります。20%下落したら全部売ります。「下げ過ぎているから戻るはず」という言葉は、私のナンピン失敗の合言葉でした。だから価格基準は機械的に機能させます。

ふたつ目、時間基準です。買ってから3か月経っても、想定していた方向に株価が動かない場合、ポジションを半分に減らします。6か月動かない場合、全部降ります。時間は資金と同じコストです。他の機会を逃している時間への対価を、動かない銘柄に払い続ける理由はありません。

3つ目、前提基準です。これは失敗談から生まれたルールです。買う前に紙に「この銘柄を持つ理由」を3行で書きます。その3行のうち1つでも崩れたら、株価に関係なく撤退します。たとえば「特許資産規模ランキングで業界上位を維持」と書いたなら、順位が明確に落ちた時点で降ります。

この3つのうち、どれか1つでも引っかかったら撤退。これが私の鉄則です。

初心者への救命具

ここは、投資経験がまだ浅い方に向けて、絶対にお伝えしたいことです。

判断に迷ったら、ポジションを半分にしてください。間違えてもダメージが半分になります。迷いは市場からのサインです。

「迷っているけど買う」「迷っているけど保有を続ける」は、私の経験上、ほぼ外れます。迷いは情報不足のシグナルか、自分のルールから外れているシグナルかのどちらかだからです。半分に減らすだけで、思考の霧がかなり晴れます。

特許分析を組み込む具体的な手順

ここが、この記事の実践パートの核です。

手順1:買おうとしている銘柄の業界について、パテント・リザルト社が公表している「特許資産規模ランキング」を検索します。「業界名 特許資産規模ランキング」で検索すれば、無料で順位が見られます。

手順2:その企業の順位が、直近2〜3年でどう推移しているかを確認します。順位が維持または上昇しているなら合格。順位が2期連続で落ちているなら、ポジションサイズを予定の半分以下に抑えます。

手順3:その企業の有価証券報告書か、直近の決算説明会資料のPDFを開きます。検索すればすぐに出てきます。「研究開発」の記述を読み、売上高に対する研究開発費の比率を計算します。業界平均と比較します。

手順4:最後に、自分で3行の「保有理由」を書きます。「○○という技術分野で特許資産上位」「売上高に対する研究開発費比率が業界平均を上回る」「直近四半期のガイダンスが未達ではない」といった、具体的で検証可能な文章にします。

あの失敗のあと、私はこの手順を守らない買い方をしなくなりました。地味です。時間もかかります。でも、この地味な手順が、私を「よく分からないまま買ってしまう」自分から守ってくれています。

「特許分析なんて個人には無理」という声に答えます

この記事をここまで読んでくださった方の中に、こんな疑問を持っている方がいると思います。

「それって結局、プロがやる分析の真似事ですよね。個人投資家に、そんな時間も能力もありません」

この指摘は、もっともです。私も最初、同じことを思いました。

実際、アスタミューゼや日立、デロイトが提供しているAI特許分析ツールは、法人向けで、個人が気軽に使えるものではありません。デロイトのサービスでは特許や論文の被引用のネットワーク分析を行い、そのネットワークにおける各特許の中心性の分析等を行うことで、多く引用される重要な特許や論文を把握するといった高度な分析が提供されていますが、これを個人が真似しようとしても無理です。

ただし、条件を分けて考えると、話が変わります。

個人投資家が目指すべきなのは「プロと同じ分析をする」ことではありません。「プロが分析した結果の一部を、無料で取りに行く」ことです。

具体的には、パテント・リザルト社の「特許資産規模ランキング」は業界別に公開されており、検索すれば誰でも順位を確認できます。これだけでも、買おうとしている銘柄がその業界内でどの位置にいるかが分かります。

もうひとつ、上場企業は2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂以降、知的財産への投資と活用について取締役会で監督し、情報開示することが求められています。つまり、知財戦略を真面目にやっている企業は、統合報告書や決算説明会資料の中で、知財の取り組みを具体的に記載するようになっています。

ここで条件分岐です。

短期売買が主戦場の方にとっては、確かに特許分析はやる意味がありません。週足の値動きに、特許の情報は反映されないからです。

一方、中長期で個別株を持つ方にとっては、特許情報は「買い理由の3つのうちのひとつ」として、十分に機能します。業界ランキングの確認と、決算説明会資料の読み込みで済むので、1銘柄あたり1時間もかかりません。

もうひとつ、よくある反論があります。「ソフトウェア企業は特許で測れないのでは?」という指摘です。これも正しいです。生成AIの中核技術であるTransformer系のモデルは、多くがオープンソース化されており、特許よりもデータとタレントの囲い込みが競争優位になっています。だから私は、ソフトウェア主導の企業を評価するときは、特許ではなく「採用ページでのAI関連求人数」「技術ブログの更新頻度」といった別の指標を使います。

要するに、特許分析は「AI第二幕でハードウェア系・製造業系の銘柄を選ぶときに有効な補助ツール」であって、すべての場面で使える魔法ではありません。私自身、この限界を意識しながら使っています。

スマホを開く前に確認する7つのこと

ここまで読んでくださったあなたに、保存して使える形のチェックリストをお渡しします。AI関連銘柄を買おうかどうか迷ったとき、注文ボタンを押す前に、ひとつずつ自分に問いかけてみてください。

  1. この銘柄を買う理由を、他人の言葉を使わずに3行で書けますか?

  2. その銘柄の業界で、パテント・リザルト社の特許資産規模ランキング直近2年の順位を確認しましたか?

  3. 直近の決算説明会資料を自分で開いて、研究開発費の記述を読みましたか?

  4. 買値から15%下落したら半分売る、20%下落したら全部売る、この基準に納得できますか?

  5. 買ってから3か月動かなかったら半分に減らす、6か月動かなかったら全部降りる、この時間基準を受け入れられますか?

  6. このポジションが仮にゼロになっても、生活に支障はありませんか?

  7. いま注文ボタンを押そうとしている判断は、自分が1週間前に決めたルールに沿っていますか?

このうち、ひとつでも「No」や「自信がない」があれば、今日は注文を出さないでください。

自分に問いかけてみてほしい3つの質問

  • あなたの今のAI関連ポジションは、最悪のシナリオ(全AI関連株が半値)で、資産全体の何%の損失になりますか?

  • その銘柄を買った日に自分が書いた保有理由を、今でも言えますか?

  • 同じ銘柄を、今日新規で同じサイズで買いたいと思えますか?

3つ目の質問が、私にとっては最も強力です。これに「いいえ」と答えたなら、その銘柄は売り時です。

私がミスを繰り返さないために決めているルール

  • SNSや動画で紹介された直後の銘柄は、最低1週間置いてから判断する

  • ナンピン買いは原則禁止、例外は事前に書き出した「購入計画」に沿った分割買いのみ

  • 月曜の朝、保有銘柄の撤退基準を読み返す

  • 一銘柄の上限は全資産の20%、AI関連合計の上限は40%

  • 週末、ポートフォリオを紙に書き出して偏りを可視化する

投資リサーチャー投資リサーチャー
特許データをAIで解析する技術は、M&Aのデューデリジェンスや新規事業の方向性決定に直結します。この分野で先行する企業は構造的な成長が期待できます。

明日の朝、最初に見るものは一つでいい

長くなりました。最後に、今日のお話を3つに絞ってまとめます。

ひとつ目、AI関連銘柄を「AI関連」のラベルで買うのをやめましょう。第二幕では、インフラ系とアプリ系、ハード系とソフト系で、勝者の顔ぶれが分かれます。自分が何を持っているかを、自分の言葉で説明できる状態を作ることが先です。

ふたつ目、特許資産規模ランキングは、ハードウェア系・製造業系のAI関連銘柄を選ぶときの強い補助線になります。完全ではありませんが、他の情報と組み合わせれば、個人投資家でも使える一次情報です。

3つ目、撤退基準の3点セット(価格・時間・前提)を、買う前に必ず紙に書きます。失敗談で書いた通り、基準がないと、判断はその場の感情に委ねられ、必ず遅れます。

明日スマホを開いたら、まずひとつだけ確認してください。自分が保有しているAI関連銘柄について、「買ったときに自分が書いた保有理由」がまだ有効かどうか。書いたものがないなら、今日書いてみてください。

市場は、私たちに派手な勝利を約束してくれません。ただ、生き残るための静かな手順は、いくらでも用意されています。派手に勝つ必要はありません。退場しないこと、次の機会のための資金を残しておくこと。それが積み重なった先に、結果がついてきます。

胃が重くなるような夜は、これからもきっとあります。私もそうです。ただ、ルールを紙に書いて、そのルールに従っていた夜は、少なくとも自分を責めずに眠れます。それだけでも、私には十分な収穫です。

本記事は投資助言を目的としたものではありません。 記載された内容は筆者個人の見解であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。 投資に関する最終判断は、ご自身の責任において行ってください。

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この記事を書いた人

「日本個別株デューデリジェンスセンター」運営者。日本の個別株に特化した投資リサーチを専門とし、銘柄分析・企業デューデリジェンス・業界動向・IPO分析を中心に2,800本超の分析レポートを執筆。ファンダメンタルズ分析とデータドリブンなアプローチで、個人投資家の意思決定をサポートしています。毎日更新の分析レポートを通じて、プロ水準のリサーチを個人投資家に届けることをミッションとしています。

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