黒字廃業60万社・失われる22兆円—日本経済に眠る”埋蔵金”を狙う個人投資家のための戦略マップ

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本記事の要点
  • 「閉店」の張り紙の前で考えたこと
  • このニュースに反応したら、たぶん負けます
  • 60万社の正体と、私がそれをどう読んでいるか
  • 3つの分かれ道と、それぞれで何をするか

テーマ株の波に乗るのではなく、構造変化を10年見るための視点と、明日スマホを開いて何を確認すればいいか、そして「自分はどこで降りるか」を決めるための話。

マーケットアナリスト
「「閉店」の張り紙の前で考えたこと」というのが今回の最初の論点ですね。黒字廃業60万社・失われる22兆円—日本経済に眠る”埋蔵金”を狙う個人投資家のた…を整理してみましょう。
目次

「閉店」の張り紙の前で考えたこと

近所に、もう何十年も続いていた小さな金物屋がありました。

去年の春、シャッターに「閉店のお知らせ」が貼ってあるのを見つけました。経営が傾いたわけではないそうです。ご主人がもう80歳近くで、息子さんは別の仕事についていて、継ぐ人がいなかった。

「黒字廃業」という言葉を、私はその張り紙の前でぼんやり思い出していました。

事業はまわっている。利益も出ている。それでも閉じる。日本では今、こういう会社が60万社単位で並んでいると言われます。

数字だけを聞くと、ただ重いだけのニュースです。失われるGDPが22兆円という試算もあります。22兆円というのは、たとえば日本の防衛費の3倍くらいに相当します。それが10年単位で蒸発していく、という話です。

でも、投資の世界ではこの数字、別の顔も見せます。

会社が消えるということは、その会社が抱えていた顧客、技術、設備、立地、そして従業員が、どこかに引き取られるか、消えるか、のどちらかになるということです。引き取る側にとっては、ゼロから作るよりずっと安く、早く、事業を広げられる機会です。

正直に書いておきます。私はこのテーマで、一度大きく失敗しています。2021年から2022年にかけて、いわゆるM&A関連のテーマ株を高値で掴みました。あの時の自分の判断を思い出すと、今でも少しだけ胃が重くなります。

だからこの記事は、「乗り遅れるな」と煽るものではありません。むしろその逆です。

この記事では、まずどの情報を捨ててどの情報を拾うかを整理し、次に60万社という数字を私がどう読んでいるかを共有し、最後に「自分はどこで降りるか」を決められる材料をお渡しします。

テーマで買うのではなく、構造で見るための視点です。明日スマホを開いた時、何を確認すればいいか。それが分かる状態にして、この記事を閉じてもらえたら、と思っています。

このニュースに反応したら、たぶん負けます

事業承継・M&Aというテーマは、ここ数年でかなりの量の情報が流通するようになりました。多すぎて、何を見ればいいか分からなくなるのが、たぶん最初の壁です。

私が今、無視していると決めているノイズを3つ挙げます。

1つ目は、月次のM&A件数速報です。 「先月のM&A件数は前年比○%増」のような見出しに反応したくなる気持ちはよく分かります。市場が動いている実感がほしいからです。ただ、月次の数字は季節要因や大型案件の有無で簡単にぶれます。1ヶ月の数字を見て自分の投資方針を変えるなら、たぶん3ヶ月後に逆向きの判断をしている自分を見ることになります。

2つ目は、SNSで回ってくる「事業承継テーマ銘柄リスト」です。 こういうリストが流れてくる時、その銘柄群はすでに何回か買われた後である可能性が高いです。私の体感ですが、「リスト化されて回覧される頃」と「天井に近づく時期」は、かなり重なります。これは焦りやFOMO(取り逃し恐怖)を誘発する情報の典型で、後悔の発生源なので、私はもう開かないことにしています。

3つ目は、「廃業○万社、失われるGDP○兆円」というセンセーショナルな数字の繰り返しです。 これは構造を理解するための入り口としては有用ですが、毎月見て焦るための数字ではありません。数字の大きさは、判断の速さを正当化しません。むしろ大きな数字ほど、急ぐ理由にしてはいけないと私は思っています。

逆に、私が注視しているシグナルは次の3つです。

1つ目は、政府の事業承継税制と中小企業政策の改正動向です。 これは中小企業庁や経済産業省のサイトで確認できます。年に1〜2回、改正の方向が示されます。税制が緩むのか厳しくなるのかで、M&Aの起こりやすさが変わります。私はこれが動いたら、関連企業の業績見通しを見直すようにしています。

2つ目は、M&A仲介・プラットフォーム企業の四半期ごとの成約件数の伸び率と、客単価の推移です。 成約件数は「業界の量」、客単価は「案件の質」を示します。両方が伸びていれば構造は健全、件数だけ伸びて単価が落ちているなら競争激化のサインです。私は決算短信が出る四半期に1回、ここを必ず確認します。

3つ目は、PMI——買収後の統合がうまくいったかどうか——を開示している買収側企業の動きです。 PMIというのは、つまり「買収した後、その会社をちゃんと回るようにする作業」のことです。ここで失敗する案件が増えると、買い手が慎重になり、市場全体の温度が下がります。これは大企業の決算説明資料や、買収案件のIRで断片的に拾えます。

このあとの分析は、この3つのシグナルが土台になっています。

60万社の正体と、私がそれをどう読んでいるか

ここから、私が見ている構造を共有します。

事実から先に置きます。

中小企業庁などの資料によれば、日本の中小企業のうち、相当数が経営者の高齢化と後継者不在という問題を抱えています。経済産業省は、このまま放置すると2025年頃までに累積で約650万人分の雇用と22兆円のGDPが失われ得る、と試算したことがあります。実際の休廃業・解散件数も、年間4〜5万社ペースで推移しており、累積で60万社規模に達するという見方が出てくる根拠はここにあります。

数字の幅にはばらつきがあります。試算によって前提が違うからです。なので、「60万社」「22兆円」という数字を一字一句信じるよりも、桁の大きさを把握しておくのが現実的だと私は思っています。年に数万社が静かに姿を消し、その累積はかなり大きい。それだけ押さえておけば十分です。

次に、私の解釈です。

私はこの構造を、3つの層に分けて見ています。

1つ目は、廃業そのものを止める層です。 事業承継支援、M&A仲介、地方銀行の承継支援部門、士業のネットワークなどが該当します。中小企業を「売り手」と「買い手」につなぐ機能を担っています。

2つ目は、廃業しそうな企業を実際に引き取る層です。 これは買収する側です。中堅・大企業による中小企業の取り込み、PEファンド——つまり投資ファンドで、複数企業を買収して再編する手法を取るところ——によるロールアップ、地域内での同業統合などが含まれます。

3つ目は、統合を支える層です。 買収後の業務統合、システム統合、人事統合を担うシステム会社、人材会社、SaaS事業者などです。M&Aの数が増えれば、ここの需要も静かに積み上がります。

私の見立てを書きます。この3つの層のうち、最も短期で値動きが派手になりやすいのは1層目、つまり仲介系です。期待先行で動きやすく、その分、期待が外れると下落も速いです。一方で構造の恩恵が長く続きやすいのは3層目、つまり統合を支える層だと、私は今のところ見ています。

ただし、これは「現時点での私の解釈」です。前提を置きます。

前提1:日本の労働人口の縮小トレンドが続くこと。これが反転するなら、私の見立ては大きく変わります。

前提2:中小企業政策が承継・統合を後押しする方向で続くこと。仮に税制や補助金の流れが反対方向に振れたら、シナリオを書き直します。

前提3:M&A業界の質——つまり過去の不適切会計や、押し売り的な仲介の問題——が制度的に改善される方向にあること。逆に業界スキャンダルが連発すれば、テーマ全体への信頼が落ちます。

最後に、読者の行動です。

この解釈が正しいとすれば、構えるべきは「個別銘柄に集中するより、3つの層をまたいで分散して持つこと」です。1層目だけに集中するとボラティリティ——つまり値動きの大きさ——に振り回されますし、3層目だけだと値動きが地味すぎて続かない人もいます。

そしてこの解釈が崩れる時のために、次のセクションで分岐を3つ用意しておきます。

3つの分かれ道と、それぞれで何をするか

ここからは、もし状況が私の基本シナリオから外れたらどうするか、を書きます。シナリオは3つ用意します。自分が今どこにいるか、を当てはめながら読んでもらえたら、と思います。

基本シナリオ:構造がじわじわ進む場合

これは私が今のところ最も蓋然性が高いと見ている展開です。労働人口の縮小、後継者不在の継続、政府の承継支援——この3つの前提が崩れない限り、M&A市場は緩やかに拡大していくはずです。派手な急騰はなくても、5年単位で見ると関連企業の業績は積み上がる、というイメージです。

このシナリオでやることは、3つの層に分散しながら、決算ごとに成約件数と客単価を確認することです。 やらないのは、月次のM&A件数や、テーマ株ランキングに反応してポジションをいじることです。やりたくなる気持ちは分かりますが、これは構造を信じる選択をした自分自身に対する反逆行為です。 チェックするのは、四半期ごとの決算短信と、年1〜2回の中小企業政策の方向です。

逆風シナリオ:景気後退とテーマへの信頼低下が同時に来る場合

これは私の見立てが部分的に崩れる場合です。たとえば、世界的な景気後退で買収意欲が冷え込み、同時にM&A業界の不祥事が再燃して投資家の信頼が落ちる、という組み合わせです。

このシナリオでやることは、1層目(仲介系)から先に削ることです。最もボラティリティが高く、テーマへの逆風を直接受ける層だからです。3層目(統合支援)は構造的需要が残るので、残します。 やらないのは、「底値を狙って買い増す」ことです。テーマ全体への信頼が下がっている時の押し目は、底だと思った場所からさらに半値、ということが私の経験ではよく起こります。 チェックするのは、信用残や出来高の急変、業界全体の決算下方修正の頻度です。

様子見シナリオ:個別企業の数字が読めなくなった場合

3つ目は、シグナルが矛盾する展開です。たとえば、業界全体の成約件数は伸びているのに、上場仲介企業の客単価が下がっている、というような状態です。何が起きているか説明できない時は、判断材料が足りていない、ということです。

このシナリオでやることは、ポジションを軽くして待つことです。半分にしてもいいですし、いったんゼロにしてもいいです。 やらないのは、「自分なりの解釈」を無理に作って動くことです。情報が足りていない時に無理にストーリーを作ると、後から見ると「あの時の自分、何を見ていたんだろう」となります。私はこれで何度も授業料を払いました。 チェックするのは、複数の上場仲介・買収側企業の決算における共通点と相違点です。共通の説明がつくまで動かないと決めておくことが、たぶん一番安全です。

自分に当てはめる3つの問い

3つのシナリオを読んで、抽象的だなと感じた方もいるかもしれません。だから、自分の状況に当てはめるための問いを3つだけ置いておきます。これに答えられなかったら、その答えられなかったこと自体が今のあなたの状態を映しています。

ひとつ。あなたの今のポジションは、最悪のシナリオが現実になった時、何%の損失になりますか?

ふたつ。このテーマで持っている銘柄が明日全部消えたら、生活と精神は大丈夫ですか?

みっつ。価格が想定通りに動かなかった場合、何ヶ月待ってから降りますか?

3つとも数字で答えられたら、たぶんあなたは構えができています。1つでも答えに詰まったら、買う前にもう一度考え直す価値があります。

自分が今どのシナリオの入り口にいるか。これは、毎週でなくていいので、月に1回くらいは振り返ってみる価値があると思っています。

私がテーマ株の頂点で買った日のこと

ここからは、私自身の失敗の話を書かせてください。

2021年の終わり頃の話です。あの時期、M&A仲介系の銘柄が、SNSや投資系のメディアで頻繁に取り上げられるようになっていました。「中小企業の後継者不在は構造問題だ」「これからの10年はM&Aの時代だ」というロジックが、いろいろな場所で繰り返されていました。

そのロジック自体は、今の私から見ても間違っていなかったと思います。問題は、ロジックが正しいことと、その時点でその銘柄を買うことが正しいかは別だ、ということでした。

私は、ある業界大手のM&A関連企業の株を、上場後の高値圏で買いました。 正確に言うと、すでに2回、3回と上昇してきた後で、SNSで「まだ伸びる」「PERは高いがそれを正当化する成長率がある」という意見を立て続けに目にして、買い注文を入れました。

買い注文のボタンに指を置いた時、頭の中にあったのはこういう声でした。 「乗り遅れたら次の波には間に合わない」 「みんな同じ方向を見ている。間違いではないはずだ」 「構造は5年、10年単位で続く話なんだから、多少高くても誤差だろう」

今読み返すと、この3つはすべて自分への言い訳でした。

そして、買った直後ではなかったのですが、しばらくして業界全体に逆風が吹きました。具体的には、業界大手の会計処理に関する問題が表に出て、テーマそのものへの信頼が一気に揺らぎました。 私の保有株は、それまで積み上げた含み益を一気に飛ばし、含み損に転じました。

ここで、私はもう一つ間違えました。 「構造は続くんだから、ここから戻るはずだ」と思って、ナンピンしたのです。一段下がったところで買い増し、もう一段下がったところでもう一度買い増し。気がついたら、当初の予算の3倍近いポジションになっていました。

結局、私はそこから半年以上、戻りを待ち続けました。戻ってきた時には、最初に買った価格にすら届きませんでした。最終的に、私は損切りしました。あの時、ボタンを押して売る瞬間、自分の中で何かが諦めの形で固まった感覚を、今でも覚えています。

何が間違いだったかを、今あらためて整理してみます。

間違いその1は、判断のタイミングです。 構造が正しいことと、その時点でその価格で買うことが正しいかは別問題でした。私はロジックに納得した瞬間に、それが買いシグナルだと勘違いしました。

間違いその2は、ポジションサイズです。 最初に買ったサイズが、すでに自分の許容範囲ぎりぎりでした。逆風が吹いた時、判断する余裕がない状態だったのです。「もし下がっても、構造の話だから戻るはず」という思い込みが、ナンピンを正当化させました。

間違いその3は、撤退基準を事前に決めていなかったことです。 「いくらまで下がったら降りる」「何が起きたら見立てを変える」を、買う前に決めていませんでした。だから、下がってからは「ここで損切りすると損失が確定する」「もう少し待てば戻るかもしれない」という、後ろ向きな判断の連続になりました。

今でも、あの時の判断を思い出すと、少し胃が重くなります。失敗の痛みが完全に消えたわけではありません。

あの失敗から、私が今守っている短いルール

体験そのものを今のルールに翻訳すると、こうなります。

  • SNSで「テーマ銘柄リスト」が回ってきても、開かない

  • ロジックに納得した瞬間に買わず、納得してから最低1週間置く

  • 一括では絶対に入らない。最低3回に分割する

  • ナンピンする時は、最初に決めたポジションサイズの範囲内に必ず収める

  • 価格・時間・前提のどれか1つでも崩れたら、まずポジションを半分にする

たった5行ですが、これを書けるようになるまでに何度か授業料を払いました。次のセクションで、これらをもう少し具体的なルールに展開します。

「テーマで買わない」ためのルールを、私はこう作っています

ここからは、M5の失敗を経て、私が今このテーマに向き合う時のルールを書きます。これは私の資金量、リスク許容度、生活環境に合わせたものなので、そのままコピーしないでください。あなたの数字に置き換えて、参考程度に読んでもらえたら、と思います。

まず、資金配分のレンジについて。

私はこのテーマ全体に、ポートフォリオの最大で10〜15%までしか配分しないと決めています。テーマ性が強い領域は、上下のブレが大きく、ポートフォリオ全体を揺さぶる力が強いからです。 内訳としては、1層目(仲介系)は3〜5%、2層目(買収側の中堅・大手)は5〜7%、3層目(統合支援)は2〜5%、という幅で組み立てています。 逆風の兆しが見える時——たとえばM4の逆風シナリオに入りかけた時——は、1層目の比率を全体の2%以下まで落とします。

次に、建て方について。

私は一括では入りません。最低でも3回、できれば5回に分けて建てます。間隔は2週間から1ヶ月です。 理由は単純で、一括で入ると、買った直後に下落が来た時に身動きが取れなくなるからです。あの2021年の失敗の時、私は「もう少し下がってから買い増そう」と決めていたのに、最初のサイズが大きすぎて、下がった時にはもう余裕がありませんでした。だから今は、最初の購入で全体の30〜40%程度しか入れない、と決めています。

次に、撤退基準についてです。これは3点セットで決めています。

価格基準:購入時に決めた最初のロスカットラインを下に明確に割り込んだら、感情を挟まずに降ります。具体的には、購入価格から15〜20%下、または直近の重要な安値を割った場合です。テーマ株は値動きが大きいので、5%程度の浅い基準ではすぐにかかってしまい、逆に粘りすぎると致命傷になります。

時間基準:購入から3ヶ月経っても、自分が想定したストーリー通りに業績や材料が動かない場合、いったん降ります。3ヶ月というのは私の感覚値です。構造の話は5年単位ですが、株価がそれを織り込むタイミングが想定と3ヶ月もずれるなら、自分の見立ての精度を疑った方がいい、と私は考えています。

前提基準:M3で置いた3つの前提のどれかが崩れたら、撤退の検討に入ります。具体的には、政府の承継支援政策が反対方向に動き始めた時、M&A業界で大きな信頼失墜が起きた時、労働人口縮小トレンドへの逆風が出てきた時です。これは数字ではなくニュースで判定します。

そして、初心者の方への一文を、ここでも繰り返しておきます。 判断に迷ったら、ポジションを半分にしてください。間違えてもダメージが半分になります。迷いは、市場からのサインです。

2021年に私がもしこのルールを持っていたら、あの取引は最初のサイズで止まっていたし、ナンピンもしていなかったし、撤退ラインで降りていたはずです。完璧に予防できたとは言いませんが、ダメージの3分の1にはなっていたと思います。

ルールは、過去の自分への手紙のようなものだ、と私は思っています。同じ間違いを繰り返さないように、未来の自分に投げる紙飛行機です。

スマホを開く前に確認する7つのこと

ここまでで書いたルールを、自分の現状に当てはめるための問いを並べておきます。買う前、増やす前、または不安になった時に、スクショして見返せる形にしています。

  • 今、このテーマ関連の保有比率は、ポートフォリオ全体の15%以下に収まっていますか?

  • 撤退ラインの3点(価格・時間・前提)を、買う前に紙かメモに書き出しましたか?

  • 分割購入の回数と間隔を、買い始める前に決めましたか?

  • 今持っている銘柄について、直近の四半期決算と業界全体の数字を確認しましたか?

  • 保有している銘柄が、1層・2層・3層のどこに属するか、自分の言葉で説明できますか?

  • 価格が30%下がっても、自分はこの会社の構造の話を信じ続けられますか?

  • 5年後にも、自分に同じ言葉で説明できる構造ですか?

5つ以上「はい」と答えられないうちは、ポジションは小さくしておく方が安全です。私はそうしています。

「結局、流行りのテーマ株じゃないですか?」と聞かれたら

ここまで読んで、こう思った人がいるかもしれません。 「それって結局、事業承継というラベルが貼られた流行りのテーマ株では?」

この指摘は、もっともだと私は思います。 正直、テーマと構造の境目は、後から振り返らないと分からないことの方が多いです。すべての構造的変化は、最初は誰かが「これは構造です」と語ったテーマとして始まりますし、すべてのテーマ株は「これは一過性でした」と振り返られて終わります。

なので、「これはテーマか、構造か」を入口で判別しようとするのは、たぶん難しいと私は思います。

その代わりに、私は2つの問いを自分に向けるようにしています。

1つ目は、「価格が下がっても、私はこの話を信じ続けられるか」です。 テーマ株の特徴は、価格が下がった瞬間に、自分の中の信念も同時に折れることです。本当に構造の話だと信じているなら、価格の下落そのものは見立てを変える理由にはなりません。下落して動揺するなら、それは構造ではなく、テーマとして買っていた可能性が高いです。

2つ目は、「この話を5年後にも自分に説明できるか」です。 1年以内に消えるテーマは、説明する言葉も1年以内に陳腐化します。一方、5年後にも同じ言葉で説明できる話は、構造である可能性が高いです。たとえば「労働人口の縮小」「経営者の高齢化」「廃業による技術と顧客の散逸」は、5年後に話しても同じくらい意味を持つはずです。

ここで重要なのは、「だから今のM&A関連株は買いだ」という結論には繋がらないことです。 構造が本物でも、価格はテーマとして動きます。だからこそ、M6で書いた撤退基準が必要なのです。構造を信じていても、テーマとしての値動きには付き合えない、という場面が必ず来ます。

つまり、答えは「構造でもあり、テーマでもある」です。両方の顔を持つから難しいし、両方の顔を分けて扱うルールが必要だ、と私は今のところ整理しています。

正直なところ、私もこの2つを完全に分けて扱えているとは言えません。価格が下がると、構造への信念も少し揺らぎます。そういう自分を前提に、ルールで補強する。それしかないと思っています。

明日、スマホを開いてまず見る一つのこと

ここまで、長い文章におつきあいいただきありがとうございました。

最後に、この記事で大切だったことを3つに絞ります。

1つ目は、60万社・22兆円という数字は、構造を理解する入り口であって、行動を急がせる材料ではない、ということです。

2つ目は、テーマで買うのではなく、3つの層に分けて構造で持つ、という視点です。仲介、買収側、統合支援。それぞれ役割が違います。

3つ目は、構造を信じていても、テーマとしての値動きには撤退基準で対処する、ということです。価格・時間・前提の3点セットを、買う前に決めておくこと。

そして、明日スマホを開いたら、まずひとつだけ見てほしいものがあります。

それは、自分のポートフォリオの中で、このテーマ関連の比率が今、何%になっているか、です。 ニュースでも、株価でもなく、自分の構成比率です。

15%を大きく超えているなら、たぶん持ちすぎです。 0%なら、無理に急ぐ必要はありません。情報を集めて、自分のルールを作ってから、ゆっくり3回、5回に分けて検討すれば十分間に合います。

廃業は悲しいニュースです。同時に、誰かが引き取る機会でもあります。 両方の顔を冷静に見つめるために、急がず、煽られず、自分の手元のルールを少しずつ厚くしていく。それが、このテーマと10年付き合うために、私が今のところ大切だと思っていることです。

逃げる選択肢を常に持っておくことは、負けることではありません。生き残るための準備です。

本記事は投資助言を目的としたものではありません。 記載された内容は筆者個人の見解であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。 投資に関する最終判断は、ご自身の責任において行ってください。


投資リサーチャー
そして最終的には「明日、スマホを開いてまず見る一つのこと」へとつながります。自分に当てはめる3つの問いのパートも見落とせないポイントです。
No.記事内セクション関連データ/補足
1「閉店」の張り紙の前で考えたこと60万
2このニュースに反応したら、たぶん負けます650万
360万社の正体と、私がそれをどう読んでいるか5万
43つの分かれ道と、それぞれで何をするか15%
5基本シナリオ:構造がじわじわ進む場合5%
「黒字廃業60万社・失われる22兆円—日本経済に眠る”埋蔵金”…」の構成と関連データ

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この記事を書いた人

「日本個別株デューデリジェンスセンター」運営者。日本の個別株に特化した投資リサーチを専門とし、銘柄分析・企業デューデリジェンス・業界動向・IPO分析を中心に2,800本超の分析レポートを執筆。ファンダメンタルズ分析とデータドリブンなアプローチで、個人投資家の意思決定をサポートしています。毎日更新の分析レポートを通じて、プロ水準のリサーチを個人投資家に届けることをミッションとしています。

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