- 史上最高値の画面を、私はすぐには開けませんでした
- このニュースに反応したら、たぶん負けます
- 夏までに私が見る3つの数字
史上最高値の興奮と不安のあいだで、見落としやすい3つの数字と、降りるためのラインを言語化する一本です。
史上最高値の画面を、私はすぐには開けませんでした
先週の木曜日、S&P500が初めて7,000を超えて引けたあの日。
私はスマホのロック画面を、少しだけ見つめてから開きました。
ポートフォリオの数字が気になるというより、「この数字を見たあと、自分が何をしたくなるか」が怖かったからです。
経験でなんとなく分かるのです。含み益がふくらんだ画面を見たあと、人は必ず「もう一段、買い増したい」と思い始めます。
そして、その衝動の先にあるものを、私は2022年の冬にすでに一度経験していました。
今、同じような気持ちで画面を開いている人が多いのではないかと思います。
ナスダック総合は12営業日連続で上昇して24,000の大台を抜け、S&P500は7,000を突破しました。
イランとの停戦は一応保たれていて、企業決算もQ1で8割以上が事前予想を上回っています。
数字だけを並べると、確かに追い風は多いように見えます。
でも、同時にこんな違和感もあるはずです。
「去年の夏は6,200台だった指数が、わずか9か月で7,000を超えた。この勢いは、本当に来年の夏も続くのか」
「3月には一時9%下げた相場が、1か月半で11%戻した。この反発は、実態を反映しているのか」
「ガソリン価格が1ガロン4ドルを超えたのに、コア物価はなぜ落ち着いて見えるのか」
こういう「腑に落ちない感じ」が残ったまま買い増すのは、経験上、あまりいい結果になりません。
この記事で私がやりたいのは、買い続けるべきか、降りるべきか、という二択の答えを出すことではありません。
そうではなくて、「何が起きたら私は見立てを変えるか」という基準を、あなた自身の言葉で書けるようにすることです。
そのために、まず無視していいノイズと本当に見るべきシグナルを整理します。
次に、夏までに私が実際に追いかけている3つの数字を、根拠と一緒にお渡しします。
最後に、私が2022年に払った授業料と、そこから作った撤退ルールをお見せします。
読み終えた頃には、ポジションを増やすにしても減らすにしても、「なぜそうしたか」を自分で説明できる状態になっているはずです。
このニュースに反応したら、たぶん負けます
相場が上げている時ほど、ニュースは多くなります。
情報量が増えるのは、関心が集まっている証拠なので当然です。
でも、情報量とシグナルの質は、必ずしも比例しません。
ここでは、私が最近見ていて「これに動かされるとたぶん損する」と感じたノイズを3つ挙げます。
一つ目は、「史上最高値更新」という見出しそのものです。
この見出しが引き起こす感情は、だいたいFOMO、つまり乗り遅れ恐怖です。
「今すぐ買わないと置いていかれる」という焦りを、一番きれいに煽ってくれる言葉だからです。
ただ、最高値はあくまで結果であって、未来の方向を示してくれるわけではありません。
2021年の末も、2022年1月の初めも、指数は最高値付近にいました。その後に何が起きたかは、ご存知の通りです。
最高値という言葉が出てきた時、私は「買い急ぐ理由」ではなく「今のポジションサイズが適正か見直す合図」として使うようにしています。
二つ目は、「AIが企業利益を爆発させる」という文脈のニュースです。
この手の記事が誘発するのは、過信です。「今度こそは違う」という気持ちを静かに膨らませてくれます。
もちろんAI関連の設備投資と業績貢献は、事実としてあります。
ただ、3月に個別銘柄のカンファレンスで出てきた数字と、半年後の実績が一致するかどうかは、夏の決算を見るまで誰にも分かりません。
「期待が事実として確定するまで、私はそれを前提にしない」
これは遠回りに見えて、何度も救われてきたルールです。
三つ目は、SNSで流れてくる「誰かの含み益スクリーンショット」です。
これが一番厄介で、煽る気のない善意の投稿ほど効きます。
「あの人が200万円プラス、自分は20万円プラス。何か間違えたのか」という焦りに、静かに繋がります。
ただ、スクリーンショットには「買った時のサイズ」と「捨てた銘柄の山」と「含み損を抱えた時期」が写っていません。
私は、他人の損益画面を見そうになった時、代わりに自分のキャッシュ比率を見るようにしています。
自分の守りがどの程度あるかを数字で確認すると、他人の攻めの結果はあまり気にならなくなります。
逆に、今こそ注視すべきだと私が考えているシグナルは3つです。
一つ目は、コアCPI、つまりエネルギーと食品を除いた物価の動きです。
3月のヘッドラインCPIは前年比3.3%まで跳ねましたが、コアCPIは前月比0.2%にとどまり、コア年率は2.6%で落ち着いています。
この乖離が続くかどうかが、FRBが利下げに動けるかを決めます。
コアが上にブレ始めたら、グロース株にとっての割引率の前提が変わります。
BLSの発表は毎月10日前後、bls.govのCPIページを月一で見れば足ります。
二つ目は、米10年債利回りです。
グロース株、つまり将来の利益が大きな比重を占める株にとって、長期金利は現在価値を割り戻すときの割引率そのものです。
金利が上に振れるほど、遠い未来の利益は今の価値で小さく見積もられます。
利回りが今の水準から大きく離れ始めた時、それは相場の地盤が動いたサインです。
米国財務省のサイトか、普段使っている証券口座のマーケットデータで、日次で確認できます。
三つ目は、ハイイールド社債のクレジットスプレッドです。
聞き慣れない言葉かもしれません。つまり、信用リスクが高めの企業の債券と、米国債との利回りの差です。
株が崩れる前に、社債の買い手が先に警戒を強めることが歴史的によくあります。
このスプレッドは、FRED(セントルイス連銀のデータサイト)の「ICE BofA US High Yield OAS」というページで、無料かつ毎日更新で見られます。
今は比較的落ち着いた水準ですが、ここが急に広がり始めたら、株価がまだ高値にいても私は一度守りに入ります。
この3つが、次の章でのメインの分析対象です。
なぜこの3つで、他ではないのか。そこから話します。
夏までに私が見る3つの数字
まず事実を整理します。
S&P500は4月15日に7,000を初めて超えて引け、ナスダック総合も24,000を抜けて過去最高値を更新しました。
同時に、S&P500の予想PER(forward P/E)は20.9倍と、5年平均の19.9倍と10年平均の18.9倍の両方を上回っています。
ただし、Q1決算の企業のうち88%がEPSで事前予想を上回り、これは5年平均の78%を大きく上回っています。
アナリスト予想では、Q2以降の利益成長率はQ2が20.1%、Q3が22.2%、Q4が19.9%と、極めて強い数字が置かれています。
ここからが私の解釈です。
今の米国株は、「高いバリュエーション」と「強い利益成長予想」の両輪で走っている、という状態です。
どちらか片方が崩れても止まらないかもしれませんが、両方が同時に崩れた時、下落のスピードはきつくなります。
私が最も警戒しているのは、「利益成長の減速」と「金利の再上昇」が同時に来るシナリオです。
この2つの組み合わせは、過去に何度もグロース株を大きく叩いてきました。2022年もまさにそれでした。
だから、私は夏までに次の3つの数字だけを、他のノイズより優先して追いかけることにしています。
ここから一つずつ、なぜその数字なのか、どこが境目なのかを書きます。
前提条件も明記するので、私の見立てが外れた時に、あなたが自分で判断し直せるように構成しています。
指標その1:コアCPIの前月比
3月のコアCPIは前月比0.2%、前年比2.6%で、市場予想をわずかに下回る内容でした。
ヘッドラインが3.3%に跳ねても、コアが落ち着いていれば、FRBは「エネルギー由来の一時的な上昇」として見送れます。
ただしEYの予想では、4月から5月にかけてヘッドラインは3.6%まで押し上げられ、コアCPIも一時的に2.9%近くまで上がる可能性が指摘されています。
私はこのコアの動きを、毎月10日前後に必ずチェックしています。
私が見立てを変える境目は、こう置いています。
コアCPIの前月比が、2か月連続で0.3%を超えてきた時。
これが起きたら、年率換算で3.6%ペースの上昇ということになり、FRBの利下げシナリオは後ろ倒しになります。
逆に、前月比0.2%以下が続く限り、私は「夏以降の利下げ期待は生きている」と考えます。
この前提が崩れたら、グロース株のバリュエーションは支えを失います。
正直、ここは私も迷います。
原油高の波及が、夏にどこまでサービス価格に回ってくるか、今の時点では誰にも読めません。
だから私は「当てに行く」のではなく、「データが出たら即座に判断を更新できるように」準備しています。
数字を追うというのは、予測するためではなく、前提が変わったことに早く気づくためだ、と私は考えています。
指標その2:米10年債利回り
今、米10年債は4%台で推移しています。
グロース投資家にとってこの数字は、株価を裏から支えている重力のようなものです。
10年債が下がれば、将来の利益の現在価値が増えるので、グロース株にとって追い風です。
10年債が上がれば、逆に重力が強まり、PERの高い銘柄から先に圧力がかかります。
私の現在の見立ては、こうです。
10年債は夏までに、3.8%から4.5%のレンジ内で推移する可能性が高い。
この幅の中なら、グロース株の評価水準は今の延長線上で説明がつきます。
ただし、この見立ては「コアCPIがレンジ内で推移する」という前提の上に乗っています。
もしコアCPIの前月比が0.3%超に跳ねて、同時に10年債が4.7%を抜けてきたら、私は一段ポジションを軽くします。
なぜ4.7%なのか。
過去のデータで、10年債が4.5%を明確に抜けた局面で、PER20倍以上のグロース株は平均して2桁%の調整を経験しています。
絶対に同じことが起きるとは限りませんが、「過去にそこで何度も崩れた水準」を無視するのは、私にはできません。
前提が変わったら、私はこの数字も書き換えます。
誰かの予想を当てるゲームではなく、自分の判断基準を置いておくための数字、と理解してください。
指標その3:ハイイールド社債のクレジットスプレッド
株価が下がる前に、社債市場が先に察知することが歴史的によくあります。
というより、社債市場は株式市場より冷静で、リスクに対して敏感です。
私が毎週一度、必ず見ているのが、ICE BofA US High Yield Option-Adjusted Spreadという指標です。
FRED(fred.stlouisfed.orgの該当ページ)で、無料で誰でも見られます。
今は比較的落ち着いた水準にいます。
私が警戒ラインとして置いているのは、ここから100ベーシスポイント(1%)以上、急に広がり始めた場合です。
そうなった時、株価がまだ高値圏にいても、私は買い増しを止めて、ポジションの見直しに入ります。
「株価の高値更新が、クレジットスプレッドの拡大と同時に起きている時」は、最も警戒すべきサインの一つです。
この前提が崩れたら、つまりスプレッドが今の落ち着いた水準のままなら、私は今のポジションをそのまま維持します。
まとめると、私の判断フレームはこうです。
コアCPIが0.2%台で推移し、10年債が4.5%以下、クレジットスプレッドが拡大しない。
この3つが揃っている間は、私は今のポジションを基本維持し、積立は止めません。
逆に、このうち2つ以上が同時に崩れ始めた時、私は段階的にポジションを軽くします。
「3つのうち1つだけ崩れた」場合は、様子見です。
この先、3つの未来のどれが来ても困らない準備
市場の先行きは、誰にも正確には読めません。
だから私は、未来を当てに行くのではなく、「3つの未来のどれが来ても致命傷を負わない準備」をする方を選びます。
ここでは、夏までに起こり得る3つのシナリオを挙げます。
それぞれについて、やること、やらないこと、確認するものを一緒に書きます。
シナリオ1:軟着陸シナリオ(最も蓋然性が高いと私が見ているもの)
イランとの停戦が継続し、夏までに原油価格が落ち着き始める。
コアCPIは2%台後半で留まり、FRBは年後半に1回の利下げを実施する。
企業決算はQ2も堅調で、S&P500は7,200〜7,600のレンジで推移する。
この場合、やることは「何もしない」です。
積立は継続し、現金比率は現行の水準を維持します。
やってはいけないのは、「順調だから」という理由でレバレッジを引き上げたり、現金を追加投入することです。
順調な時ほど、次の局面への備えが薄くなります。
シナリオ2:逆風シナリオ(確率は低いが、当たると痛い)
中東情勢が再燃し、原油が再び110ドルを超える。
コアCPIの前月比が0.3%を連続で超え、FRBは利下げを完全に見送る。
10年債は4.7%を上抜け、グロース株は10%以上の調整に入る。
この場合、やることは「買い増しの完全停止」と「レバレッジを使っていれば縮小」です。
損切りを一気に執行する必要はありません。
むしろ、段階的に軽くすることを優先します。
やってはいけないのは、「下がったから買い場」と決めつけてナンピンすることです。
2022年にこれをやって、私は血を見ました。
確認するものは、コアCPIの前月比、10年債の水準、クレジットスプレッドの3つ。
この3つのうち2つ以上が警戒ラインを超えたら、さらに現金比率を引き上げます。
シナリオ3:判断保留シナリオ(一番頻度が高い)
いくつかの指標はいい方に動き、いくつかは悪い方に動く。
全体としては、どちらとも言い切れない。
コアCPIは落ち着いているが、クレジットスプレッドはじわじわ広がっている、といった状態です。
この場合、やることは「ポジションサイズを半分にする」ことです。
買い増すなら予定の半分、売るなら予定の半分。
判断に迷いがあるということは、情報がまだ揃っていないということです。
迷いながらフルサイズで動く、というのが一番事故を起こしやすい選択です。
やってはいけないのは、「はっきりするまで考え続ける」ことです。
考えている間にも時間は過ぎ、相場は勝手に動きます。
確認するものは、次のCPI発表日と、次回FOMC(4月28〜29日)のタカ派/ハト派の比重です。
この3つのシナリオは、あくまで私の地図であって、あなたの地図ではありません。
でも、地図を1枚持って山に入るのと、持たずに入るのでは、迷った時の行動が全く違います。
自分の地図を作る際のたたき台にしてもらえれば、と思います。
ナスダック32%下落の年、私が払った授業料
ここから少し、恥ずかしい話をします。
2022年の年初、私のポートフォリオはそれまでで一番大きな含み益を抱えていました。
ハイグロース株中心で、いくつかの銘柄は取得価格から4倍、5倍に育っていました。
「こんなに簡単に増えるものなのか」と、当時の私は思っていました。
| No. | 主要トピック |
|---|---|
| 1 | |
| 2 | 史上最高値の画面を、私はすぐには開けませんでした |
| 3 | このニュースに反応したら、たぶん負けます |
| 4 | 夏までに私が見る3つの数字 |
| 5 | 指標その1:コアCPIの前月比 |
朝起きて口座を見ると、寝ている間にも数字が増えている。そんな日が続いていました。
きっかけは、1月の最初のFOMC議事要旨でした。
FRBがそれまでよりタカ派に傾き、量的引き締めの開始時期が前倒しされる可能性が示された場面です。
10年債利回りが急に上がり始めました。
ナスダックは1月だけで9%下げました。
その時、私は何を考えていたか。
正直に書きます。「年初の急落は、例年の『押し目』だ」と思っていました。
過去2年、コロナショック後の相場は、下がった場面で買い増すたびにうまくいっていました。
だから同じパターンだと、根拠なく信じてしまったのです。
買い注文のボタンに指を置いた時、頭の中で響いていたのは「ここで買わないと乗り遅れる」という、あの焦りの声でした。
2月、3月、4月、5月。相場はさらに下げ続けました。
ナスダックは春までに20%以上下げ、夏にはさらに深くなりました。
最終的に、その年のナスダック総合は32%の下落で終わりました。
私のハイグロース中心のポートフォリオは、それ以上に削られました。
4倍まで育てた銘柄が、取得価格を割り込むところまで戻ってしまった銘柄もあります。
何が間違いだったか。
今振り返ると、間違いは一つではなく、重なっていました。
まず、利益が出ているポジションを軽くしておくべきだったのに、むしろ買い増した。
次に、買い増す根拠が「過去のパターン」であって、「今起きている事実」ではなかった。
そして、一番痛いのは、撤退ラインを紙に書いていなかったことです。
「これを下回ったら降りる」というラインを、事前に決めていなかった。
だから、下げ始めた時に「もう少し待てば戻るはず」と、根拠のない希望で握り続けてしまいました。
一つだけ明確に覚えている場面があります。
5月のある夜、1銘柄が決算発表で20%下げた時、私は口座を開いたまま1時間、何もできませんでした。
売る根拠もなかったし、買い増す根拠もなかった。
画面の数字だけが、じわじわ赤くなっていくのを見ていました。
胃の底が冷える感覚、というのは比喩ではなく、物理的にそういう感覚でした。
あの夜のことを、今でも思い出します。
正直、完全には消えていません。口座を開く前に、少しだけ深呼吸するようになったのは、あの夜からです。
あの失敗から私が学んだのは、大きく3つです。
一つ目、「撤退ラインは、買う前に書く」。
買った後に書こうとすると、必ず情に引きずられます。
二つ目、「過去のパターンは、今の前提条件が同じ時だけ有効」。
金利環境、インフレ、流動性、どれか一つでも違えば、同じ動きはしません。
三つ目、「ポジションサイズは、眠れる大きさまで」。
夜に口座を何度も開くようになったら、それはサイズが大きすぎるサインです。
この3つの教訓は、次の章で私が実際に使っているルールとして、具体化します。
失敗をきれいにまとめて「成長しました」と書くのは、私にはまだできません。
あの時の判断ミスは、今でも自分の中で未消化の部分があります。
でも、痛みと一緒にルールが残ったのは、事実です。
買い増す前に、撤退ラインを書き留めてください
ここからは、私が今実際に使っているルールを書きます。
「そのままコピーしてください」という話ではありません。
あなたの資金量、リスク許容度、生活環境は、私とは違います。
でも、自分のルールを作る時のたたき台にはなると思います。
現金比率のレンジ
私は、ポートフォリオ全体の現金比率を15%から35%のレンジで動かしています。
今のように史上最高値付近で、かつコアCPIが落ち着いている局面では、25%前後を維持しています。
もし前の章で挙げた3つの指標のうち2つが警戒ラインを超えたら、35%に引き上げます。
逆に、明確な調整(S&P500で15%以上の下げ)が起きて、3つの指標のうちクレジットスプレッドが落ち着いているなら、15%まで下げます。
なぜこのレンジなのか。
ゼロにしない理由は、次の下落局面で動けなくなるからです。
100%現金にしない理由は、上昇を取り逃す機会損失が大きすぎるからです。
この幅は、2022年の経験から決めました。
あの時、現金比率が5%しかなかったせいで、下げた局面で拾いたくても拾えませんでした。
分割の仕方
新規で銘柄を買う時、私は3回から5回に分けて入ります。
間隔は2週間から4週間。
一括で入らない理由は、一つだけです。
買った翌日に10%下げた時、心理的に動けなくなるのを何度も経験したからです。
相場の方向性に自信がある時ほど、一括で入りたくなります。
でも、相場に対する自信の大きさと、その判断の正しさは、必ずしも一致しません。
自信が強い時ほど、分割回数を増やす、というのが私の運用ルールです。
逆説的ですが、これが過去5年で一番効いた判断です。
撤退基準(3点セット、必須で書いてください)
ここが、この記事で一番お伝えしたい部分です。
私は、ポジションを持つ時、必ず次の3つのラインをエクセルに書きます。
価格基準:その銘柄の直近6か月の安値、または25日移動平均を、明確に下抜けた時。
時間基準:買ってから3か月経っても、想定した方向(上昇)に動かない時、一度半分に減らす。
前提基準:買った時の根拠が崩れた時。つまり、今回の記事で言えば、コアCPIの前月比が0.3%を連続で超えるか、10年債が4.7%を上抜けるか、クレジットスプレッドが100bp広がるか。
この3つのどれかに触れたら、私は感情を挟まずに、まず半分を落とします。
「まず半分」というのが、私なりの知恵です。
全部売るのは、心理的にハードルが高いです。
でも、半分なら、比較的機械的に動けます。
半分落とした後で、残り半分をどうするかを、冷静になった頭で考えます。
初心者の方へ、一つだけ強くお伝えしたいことがあります。
判断に迷ったら、ポジションを半分にしてください。
間違えてもダメージが半分になります。
迷いは、市場からのサインです。
分からない時は、分からないまま握り続けるよりも、半分にして見通しが立つのを待つ方が、長い目で見て生き残れます。
買い増し前のチェックリスト(8項目)
私が新しくポジションを増やす前に、必ずセルフチェックしている8項目です。
読者の方にも、スマホの画面に控えておくと使える粒度にしました。
今の現金比率は、自分の決めたレンジの下限より上か
買い増しの根拠は、「過去のパターン」ではなく「今起きている事実」か
撤退ライン(価格・時間・前提)を、買う前に書いてあるか
買った翌日に10%下げた時、慌てず保有し続けられるサイズか
他人の含み益スクリーンショットを見て、行動を急いでいないか
3つの指標(コアCPI、10年債、クレジットスプレッド)は、警戒ラインを超えていないか
今日買わないと致命的に損をする理由を、一文で書けるか
書けない場合、1週間待てるか
8番で「待てない」と感じた時ほど、一度画面を閉じることにしています。
経験上、「待てない判断」は、ほぼ必ず後悔しています。
私のミスを防ぐルール(箇条書き)
最高値更新のニュースが出た日は、その日のうちに買い増しの判断をしない
ポジションを持つ前に、撤退ラインを紙かデータで書き残す
買った翌日の価格は、朝一で見ない(感情的な判断につながるため)
1日に複数回口座を開く状態になったら、ポジションが大きすぎる
四半期に1回、ポジション全体の想定最大損失を計算し直す
これらは、派手なリターンを生むルールではありません。
でも、致命傷を避けるためのルールとして、私は手放していません。
「長期なら気にしなくていい」は、半分だけ正しい
ここまで読んで、こう思った方がいるかもしれません。
「でも結局、長期投資なら指標なんて気にしなくていいのでは?」
「20年持つつもりなら、金利もCPIも関係ないのでは?」
その指摘は、本当にもっともです。
私自身、積立インデックス部分は、まさにそういう姿勢で持ち続けています。
ただし、この「長期なら気にしなくていい」という考え方には、一つ条件があります。
それは、「下落局面で本当に握り続けられる」という条件です。
2022年のナスダック32%下落の時、多くの人は「長期投資だから気にしない」と言っていました。
でも、実際に含み益が溶けて含み損になった時、握り続けられた人は思ったより少数です。
「長期で持つつもりだった」資金が、家のローンの支払いや、家族の急な出費で引き出す必要が出てくる、ということもあります。
人生は予測できません。
だから、「長期だから気にしなくていい」と言える条件は、私の中では3つあります。
一つ目、生活防衛資金が、投資資金とは別に、生活費の1年分以上確保されていること。
二つ目、投資している資金を、今後最低10年は使う予定がないこと。
三つ目、50%以上下げた画面を見ても、追加入金まではしなくていいから、せめて売らずに持てる自信があること。
この3つが揃っている方にとっては、この記事の3つの指標は、正直なところあまり意味を持ちません。
淡々と積立を続けてください。それが最も合理的です。
逆に、この3つのどれかが欠けている方にとっては、「長期だから気にしなくていい」は危険な呪文になります。
気にせずに持ち続けた結果、本当に必要な時に売れず、あるいは売らざるを得なくなる、という事態を招きます。
自分がどちらに属するか、今一度、静かに確認してみてください。
今、誰が買っていて、誰が静かに降りているか
最後に、需給の話を少しだけ。
4月2日のAAII(米個人投資家協会)の週次調査では、弱気センチメントが51.4%と、かなり高い水準に達していました。
面白いのは、史上最高値を更新しているのに、個人投資家の多くは弱気だということです。
1987年以降の統計では、弱気センチメントが50%を超えた後の12か月間で、S&P500は平均16%上昇しています。
これをどう読むか。
私は、「個人の弱気と、機関の買いが併存している局面」と見ています。
つまり、個人が疑心暗鬼で様子見している間に、機関投資家がポジションを積み上げている、という構造です。
過去、こういう局面の後は上昇することが多いのは事実です。
ただし、ここにも前提があります。
弱気センチメントが高い時に上昇するのは、「その後、信用市場やマクロ指標が悪化しない場合」です。
クレジットスプレッドが急拡大したり、失業率が悪化し始めたりすると、パターンは崩れます。
だから、センチメントの数字だけを材料にして動くのは、私はやりません。
あくまでも、前の章で書いた3つの指標と一緒に見る、補助的な情報です。
推測と事実を分けて書くなら、事実はこうです。
弱気センチメントが高く、最高値を更新している。
推測はこうです。
個人と機関の動きに温度差があり、機関側が優勢な買い手として機能している可能性がある。
月曜の朝、スマホで最初に見るもの
ここまでの内容を、3つに絞ります。
一つ目、買い続けるかではなく、何が起きたら降りるかを決めておく。これが今日の記事全体の背骨です。
二つ目、夏までに見る指標は3つだけ。コアCPIの前月比、10年債利回り、ハイイールド社債のクレジットスプレッド。他のノイズは必要な時以外、無視していい。
三つ目、買い増す前に、撤退ラインを紙に書く。価格基準、時間基準、前提基準の3点セットを、事前に。
月曜の朝、スマホを開いたら、まず一つだけやってほしいことがあります。
ブラウザのブックマークに、FRED(fred.stlouisfed.org)で「ICE BofA US High Yield OAS」を登録してください。
クレジットスプレッドの、ほぼリアルタイムのチャートが見られます。
これを週に1度、月曜の朝に5秒だけ確認する習慣を作るだけで、相場の足元が揺らぐ兆候を、株価よりも早く察知できます。
史上最高値は、確かに気持ちのいい数字です。
でも、数字そのものよりも、その数字を見たあとに自分が何をするかの方が、ずっと大事だと私は思っています。
買い増すにしても、減らすにしても、今日決めた撤退ラインが、3か月後のあなたを守ります。
慌てる必要はありません。次のCPIまで、まだ時間はあります。
自分に当てはめる3つの問い
今保有しているポジション全体が50%下落した時、あなたの生活に何が起きますか?
買った時の「上がると思った根拠」を、一文で言語化できますか?
あなたの撤退ラインを、今この瞬間、紙に書き出せますか?
この3つに答えられなかったとしたら、それ自体が今日の気づきです。
気づいた今から、順番に書き始めてください。
本記事は投資助言を目的としたものではありません。 記載された内容は筆者個人の見解であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。 投資に関する最終判断は、ご自身の責任において行ってください。


















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