NISA枠で買うべきは”半導体メーカー”か”半導体商社”か?利益構造から読み解く10年保有戦略

note n8b6666aae0d0
  • URLをコピーしました!
本記事の要点
  • メーカーか、商社か。手が止まる夜のことを書きます。
  • このニュースに反応したら、10年の判断が濁ります
  • メーカーと商社は、まったく違う稼ぎ方をしています
  • 3つのシナリオを、先に用意しておきます

「値動きの大きさ」ではなく「利益の出方」で選ぶと、10年の景色が変わります。

メーカーか、商社か。手が止まる夜のことを書きます。

マーケットアナリスト
マーケットアナリスト
メーカーは設備投資負担が重く利益が振れやすい一方、商社はストック型ビジネスで景気感応度が低い。10年単位ではこの差が累積でリターン格差を生みます。

画面の中で、半導体関連の銘柄が赤と緑で明滅しています。

NISAの成長投資枠が残っている。せっかくの非課税枠を、10年抱えられる銘柄に使いたい。そう思って半導体を調べ始めた人は、私を含めて多いはずです。

ところが、少し掘るだけで、すぐに分岐点にぶつかります。

装置を作る会社なのか。チップ本体を作る会社なのか。それとも、それらを売りさばく商社なのか。

どれも「半導体関連」です。でも、中身はまったく違う乗り物です。

正直、この分岐で立ち止まったのは、私自身も一度や二度ではありません。

そのたびに、値動きの派手なほうへ目が吸い寄せられて、よくない判断をしました。後ろのほうで詳しく書きますが、サイクルの天井で装置メーカーを掴み、2年身動きが取れなくなった経験があります。

あの時の、朝スマホを開くのが嫌だった感覚は、今でもよく覚えています。

この記事でやりたいのは、派手な物色ではありません。

半導体まわりで飛んでくる情報のうち、何を無視して何を見るかを仕分けること。メーカーと商社で、利益が何から生まれているのかを分解すること。そのうえで、NISA枠で10年抱えるなら、どう配分し、どこで降りるかをお渡しすること。

この3つです。

利益構造が違えば、10年持ったときの景色は別物になります。

サイクルに振り回される10年なのか、配当と地盤で耐える10年なのか。それは銘柄選びの時点で、かなりの部分が決まっています。

では、最初のノイズ整理から入ります。

半導体メーカー vs 半導体商社|10年保有の比較マトリクス
比較軸半導体メーカー半導体商社NISA向き
業績変動幅±50%超のシクリカル±15%以内の安定商社◎
配当性向20〜30%が中心40〜50%が中心商社◎
ROE平均10〜18%8〜12%メーカー◎
10年累積リターン目安3〜5倍(成功時)1.8〜2.5倍メーカー◎(リスク承知)
ドローダウン耐性弱い強い商社◎
NISA推奨度★★★(成長狙い)★★★★★(コア保有)商社優位

このニュースに反応したら、10年の判断が濁ります

半導体は人気テーマです。人気であるぶん、ノイズも強烈に飛んできます。

まず、私が意識して無視しているものを3つ書きます。

ひとつ目は、「半導体指数、本日◯%上昇」という日々のランキング情報です。

これを見ると、「今日も上がっているのか」と焦りが生まれます。その焦りは、買い急ぎに直結します。

10年保有を前提にしているなら、1日2日の値動きに意味はありません。それで判断を動かすのは、10年の設計図を1日で破る行為に近いと私は考えています。

ふたつ目は、大手証券のアナリストが目標株価を引き上げた、というニュースです。

目標株価は、そのアナリストの前提条件のうえに成り立っています。前提が書かれずに数字だけが流通すると、「上がるらしい」という誤読が一人歩きします。

前提を確認できない目標株価は、私は数字として扱っていません。引き上げと引き下げが同じ頻度で出ているなら、その情報の精度は自分で評価するしかありません。

みっつ目は、SNSでの「次の半導体関連はこれだ」という囁きです。

この手の投稿は、「乗り遅れたくない」という感情をピンポイントで刺しにきます。乗り遅れ不安で買ったポジションは、下がったときに耐えられません。入る理由が「乗り遅れたくない」だけだからです。

私は何度もこれで痛い目に遭い、今は関連のプッシュ通知を切っています。

一方で、注視している3つのシグナルがあります。

ひとつ目は、半導体の出荷・在庫動向を示す業界統計です。

具体的には、世界半導体市場統計機構の月次出荷データと、装置メーカーが開示するブックトゥービルレシオです。ブックトゥービルレシオとは、つまり「受注と出荷のバランス」のことです。1.0を上回れば受注が出荷を超え、下回ればその逆です。

これが動くと、半導体サイクルの局面が変わります。メーカーの利益はここに強く連動します。月1回、数分確認すれば足ります。

ふたつ目は、半導体商社の四半期決算における在庫回転率と営業利益率です。

商社の稼ぎは、マージンと在庫の回転で決まります。在庫が膨らんで回転が落ちているなら、需要側に異変が起きているサインです。

3ヶ月に1度、決算短信を見に行く。それで足ります。派手な情報ではありませんが、10年抱えるなら、このくらいの確認頻度でちょうどいいと私は考えています。

みっつ目は、顧客側、つまり半導体を買う側の設備投資計画です。

データセンター投資、自動車の電装化、スマートフォンの在庫水準。ここが減速すると、半導体への発注が止まります。

決算発表シーズンに、クラウド大手や自動車大手のガイダンスを一通り眺める。それだけで、半導体需要の体感がだいぶ変わります。

この3つのシグナルが、次の分析の土台になります。

メーカーと商社は、まったく違う稼ぎ方をしています

ここから、利益構造の話に入ります。ここを読み違えると、10年の設計を間違えます。

まず、事実として何が起きているかを整理します。

半導体メーカー、特に前工程や後工程の装置メーカーは、固定費の重いビジネスです。

大きな工場、研究開発費、人件費。先に重い固定費があり、そこに売上が乗ると、利益がドカンと伸びます。

好況期の営業利益率が30%を超えることも珍しくありません。ところが、受注が細ると、固定費が重荷になって、利益率は一桁、場合によっては赤字に沈みます。

値動きも、この利益変動に連動して派手になります。これは、事業構造がそうできているからです。

チップそのものを作るデバイスメーカー、たとえばロジックやメモリー、イメージセンサーの会社も、基本は同じ設備集約型です。価格変動の波を、利益率がモロに受けます。

一方、半導体商社の利益構造は、まったく別物です。

商社は、自前で工場を持ちません。メーカーから半導体を仕入れ、機器メーカーや自動車メーカーに売ります。在庫を抱え、信用を供与し、技術的な調整役にもなります。

利益はマージンと回転から生まれます。営業利益率は5%から8%あたりに落ち着く会社が多いです。派手ではありません。ただし、ブレが比較的小さい。

好況で利益率が2倍になることは、基本的にありません。かわりに、不況で即赤字になることも、構造上、少ないです。

ここから、私の解釈に入ります。正直、ここは何度も考えが揺れた領域です。

メーカーの10年は、半導体サイクルのどこで入るかで、結果がかなり違います。

サイクルの底で入れば、ファンダメンタルズの改善と株価の戻りの両方を取れます。これは過去のチャートを見ても、繰り返し確認できる動きです。

ところが、サイクルの山で入ると、利益が伸び切ったところからの減速を食らいます。株価は先回りして下がります。戻るまで2年、3年という時間がかかります。

10年あれば戻るかもしれません。でも、「戻ってプラスマイナスゼロ」の10年と、「配当をもらいながら緩やかに増えた」10年は、体感がまったく違います。

商社の10年は、サイクルに巻き込まれはしますが、構造として配当のベースが厚い。仕入れ先の多様化と顧客基盤という、数字に出にくい地盤を持っています。

この地盤は1年や2年では崩れません。

だから、サイクルの底を自分で当てに行けないなら、配当を拾いながら時間を味方にする選択肢が、私の中では十分あり得ます。

ここから、読者の行動の話です。

私がこの記事で置いている前提は、2つあります。

ひとつ、半導体の長期需要は、生成AI、自動車の電装化、産業機器のデジタル化によって、10年単位では増加基調を保つこと。

ふたつ、その需要は直線ではなく、数年単位の波を打ちながら増えること。

この2つが私の見立ての土台です。片方でも崩れたら、メーカーと商社のどちらも見直しが必要になります。

前提を壊す材料を、私はこう定義しています。

ひとつは、データセンター向けの投資計画が、主要クラウド大手の複数社で、2四半期連続で下方修正されることです。

もうひとつは、半導体装置のブックトゥービルレシオが、12ヶ月以上0.9を下回って推移することです。

これが起きたら、私は保有比率を落とす側に動きます。この前提は、次のシナリオ分岐でそのまま使います。

3つのシナリオを、先に用意しておきます

10年抱えるからこそ、途中で必ず何かが起きます。その時に慌てないために、先に地図を描いておきます。

基本シナリオ:長期需要は増える、途中で波は来る

これは、今置いている前提がそのまま維持される展開です。

発生条件は、半導体の長期需要見通しが維持され、装置のブックトゥービルレシオが1.0前後を中心に揺れ動く状態です。

やることは、メーカーと商社に一定の比率で分けて、時間をかけて分割で入れることです。具体的な比率と分割の刻みは、後ろでお渡しします。

やらないことは、「上がっているから買い増す」です。10年の枠内で上がる局面は何度も来ます。そのつど買い増すと、結局、平均取得価格が山の近くにそろいます。

確認するものは、ブックトゥービルレシオと、商社の四半期決算での在庫回転率です。この2つが大きく崩れていないなら、基本シナリオの中にいます。

逆風シナリオ:景気後退でサイクルが急降下

これは、景気後退や大口顧客の投資凍結で、半導体需要が急ブレーキを踏む展開です。

発生条件は、先ほど書いた2つのトリガーのいずれかです。クラウド大手の投資計画の連続下方修正、または、ブックトゥービルレシオの長期低迷です。

やることは、追加買いを止めることです。そして、保有分については、あらかじめ決めた撤退基準で淡々と処理します。

やらないことは、「ここまで下がったから、そろそろ反発するはず」という平均取得価格狙いのナンピンです。これは、私が過去に最もお金を失った行動パターンです。

確認するものは、主要クラウド大手のガイダンス、装置メーカーの受注動向、そして商社の信用供与関連の数字です。

様子見シナリオ:過熱と冷え込みの中間で判断がつかない

いちばん悩ましいのがこのゾーンです。

発生条件は、ブックトゥービルレシオが1.1を超える一方で、クラウド投資に鈍化の兆しが出始める、という矛盾したサインが同時に出ることです。

実は、このゾーンが、テーマ株の天井掴みをやらかしやすい局面です。指標はまだ強く、物色も続いています。でも、裏側で需要のピークアウトがじわっと進んでいます。

やることは、新規投入を止めて、既存ポジションの撤退基準だけをもう一度確認することです。

やらないことは、「指標が強いから、まだ買える」と追加することです。様子見は立派な戦略です。何もしない日を怖がらないことが、10年では効きます。

確認するものは、今まで挙げた3つのシグナルすべてです。ひとつが強くても、他がゆるんでいれば、それは分散した異変のサインです。

私が装置メーカーを天井で掴んだ、あの時期の話をします

ここから、自分の失敗を書きます。気持ちのいい話ではないので、少しだけお時間をください。

あれは、半導体不足のニュースが連日トップを飾っていた時期でした。自動車メーカーが生産を止めた、家電の納期が伸びた、というニュースが当たり前のように流れていた頃です。

半導体が足りない。ということは、これから設備投資が爆発する。ということは、装置メーカーの受注が積み上がる。

そこまでの理屈は、今振り返ってもそれほど間違っていません。

私が間違えたのは、そのストーリーが「すでに株価に織り込まれている可能性」を、まったく検討しなかったことです。

当時、装置メーカーの株価は、すでに数年かけて大きく上がっていました。PERも歴史的な高水準にありました。それを見ても、私の中では「まだ足りない。これからもっと行く」という声のほうが大きかった。

決め手になったのは、知人から「もう押し目はないかもしれない」と言われた日でした。

夕方、家に帰って、PCの前に座って、買い注文の画面を開きました。

指はキーボードの上で、少し止まりました。「さすがに高くないか」という声が、確かによぎった記憶があります。

ただ、そこで「乗り遅れたくない」のほうが勝ちました。画面の右下の、注文確定のボタンを押した瞬間の感覚は、今でもはっきり残っています。

安心でも、高揚でもありませんでした。「これで仲間に入れた」という、奇妙な同調の感覚でした。

今思えば、そこがいちばん危なかったサインです。

それから半年もしないうちに、半導体サイクルは天井を打ちました。

装置の受注減速、在庫調整、顧客の設備投資見直し。ニュースのトーンが、夏と秋ですっかり変わりました。

私のポジションは、高値から3割落ち、やがて半分近くまで沈みました。

見るのが嫌で、アプリを開かなくなりました。含み損が怖くて、朝の通勤電車で天井を見つめていた記憶があります。

そこで損切れなかったのは、「長期なら戻るはず」という自分への言い訳があったからです。これが、もうひとつの失敗でした。

私はそのポジションを、半分は短期のつもりで買ったのに、下がった瞬間に「長期」のラベルに貼り替えていました。都合よく、時間軸を伸ばしたのです。

結局、戻るまでに2年以上かかりました。戻ったとき、ほっとしたというより、先に疲れが来ました。

この2年の間、他の選択肢に資金を回せなかった機会損失は、含み損以上に大きかったと今でも思います。

何が間違いだったか、整理します。

ひとつは、サイクル性のある業種を、単純な長期成長テーマとして扱ったことです。

半導体の10年トレンドは上向きでも、途中の数年で3割、4割と沈む局面があります。そこを軽く見ました。

ふたつめは、ポジションサイズが大きすぎたことです。サイクルを読む自信がないのに、一括に近い入り方をしました。下がった時に、追加も撤退もできない中途半端な量でした。

みっつめは、撤退基準を事前に決めていなかったことです。下がってから初めて「どこで切るか」を考え始めました。下がってからの判断は、ほぼ感情に支配されます。

この失敗があったから、今の私は、サイクル性のある銘柄の扱い方についていくつかのルールを持っています。そのルールを、次のセクションで書きます。

10年抱えるなら、先に決めておきたい数字と行動

ここからは、私が今、自分で使っているやり方をお渡しします。

そのままコピーしないでください。あなたの資金量、生活環境、リスク許容度は、私とは違うはずです。形を残して、数字はご自身で調整してください。

半導体関連全体の、NISA枠内での比率

私の今の目安は、NISAの成長投資枠全体に対して、半導体関連は15%から25%のレンジに収めることです。

これより低いと、長期需要のトレンドを取り逃します。これより高いと、サイクル下落時にポートフォリオ全体の気分がおかしくなります。

なぜ25%を上限にしているかというと、自分の過去の行動を振り返った時、これを超えると冷静に撤退できなくなる傾向があったからです。これは経験則です。

相場環境による調整幅も決めています。

半導体サイクルが過熱していると感じる時期は、15%寄り。サイクルが冷え込んでいる時期は、25%寄り。逆張りではありますが、これも事前に決めておかないと、結局いつも「過熱時に多く、冷え込み時に少なく」になります。

メーカーと商社の配分

その半導体枠の中で、メーカーと商社をどう分けるか。ここも事前に決めておきます。

中立的な局面、つまりブックトゥービルレシオが1.0前後で落ち着いている時期は、5対5を起点にしています。

過熱を感じる局面、たとえばブックトゥービルレシオが1.2を超えて、かつSNSで半導体関連が連日話題になる時期は、メーカー3対商社7に寄せます。値動きの荷重を下げるためです。

冷え込み局面、ブックトゥービルレシオが1.0を割って半導体への悲観が強い時期は、メーカー6対商社4に寄せます。戻りを取りに行く比率です。ただし、これはあくまでサイクルの底であることが複数のシグナルで確認できる場合に限ります。

入り方の刻み

10年抱える銘柄でも、入り方を一括にしたことはここ数年ありません。

私は、ひとつの銘柄について、6回から12回に分割して入っています。間隔は2週間から1ヶ月です。

なぜ6回以上かというと、それ以下だと平均取得価格が偏った時期にそろいやすいからです。なぜ1ヶ月以内かというと、それ以上空けると、半導体のような動きが速い分野では買いそびれが増えるからです。

ここに絶対解はありません。私は「一括で入ると、下がった時に動けなくなる」という、自分の性格への対処として分割しています。

撤退の3点セット

投資リサーチャー
投資リサーチャー
NISA枠で長期保有するなら、時価変動より配当成長の安定性を重視すべき。半導体商社は5年連続増配の常連が多く、有力な選択肢になります。

ここがいちばん大事です。下がった時に初めて考えると、必ず遅れます。

ひとつ目、価格基準です。買値からマイナス20%を明確に割り込んだら、機械的にポジションを見直します。ここでは「機械的に」が大事です。理由を考え始めると、動けなくなるからです。

ふたつ目、時間基準です。買ってから18ヶ月経過したら、当初の前提がまだ維持できているかを棚卸しします。維持できていれば継続、崩れていれば縮小です。

10年持つつもりでも、18ヶ月ごとに見直すサイクルを入れておかないと、塩漬けになります。

みっつ目、前提基準です。先ほど書いた「クラウド大手の投資計画、2四半期連続下方修正」または「ブックトゥービルレシオ、12ヶ月以上0.9を下回る」が起きたら、私は比率を下げます。これは、M3で置いた長期需要の前提そのものが揺らいだ状況です。

この3つのうち、どれかが引っかかった時点で、動きます。3つ全部がそろうのを待つと、だいたい遅すぎます。

迷った時の、救命具

これだけは、ルールとして書いておきます。

判断に迷ったら、ポジションを半分にしてください。間違えてもダメージが半分になります。迷いは市場からのサインです。

半分にした後で、もう一度落ち着いて、残り半分をどうするかを考える。この手順だけで、失う金額はだいぶ変わります。

過去の失敗から作ったルール

ここに書いている数字と行動は、私が装置メーカーを天井で掴んだ、あの時の失敗から逆算して作ったものです。

あの時、私に足りなかったのは、事前に決めた分割、事前に決めたサイズ上限、事前に決めた撤退基準でした。すべて「事前に」です。

下がってから決めるのは、決めているのではなく、流されているだけです。これを身体で覚えるのに、私は2年かかりました。

「結局、商社は伸びしろが小さいのでは?」への、私なりの答え

ここまで書いてきて、想定できる反論がひとつあります。

「商社は安定しているかもしれない。でも、結局、株価の伸びしろはメーカーより小さい。10年抱えるなら、値上がり益の大きいメーカーでいいのでは?」

この指摘は、もっともです。単純な値上がり率だけを見れば、サイクルの底で入った装置メーカーの数年間のリターンは、商社のそれを上回ってきました。

ただ、話はそこで終わりません。条件を分けて考える必要があります。

ひとつ目の条件は、「あなたがサイクルの底を当てに行けるか」です。

当てに行ける人には、メーカー中心でいいと私は思います。実際、サイクル底での装置メーカーのリターンは、かなり強烈です。

一方で、当てる自信がない人、そしてNISAという限られた枠を使う人にとっては、入る時期がサイクルの中途半端な位置になる可能性が高いです。その位置から10年持つと、含み損を抱える時期がかなり長くなります。

ふたつ目の条件は、「あなたが値下がり局面で、買い増しか保有継続に耐えられるか」です。

耐えられる人には、メーカーの波は問題になりません。サイクルの下でもう一度仕込めます。

耐えられない人、つまり値下がりで夜眠れなくなるタイプの人には、商社の配当収入がポートフォリオを支えてくれます。配当は、心理の支えでもあります。これは数字に出てこない効用です。

みっつ目の条件は、「総リターンで評価するかどうか」です。

値上がり益だけで評価するなら、メーカーが有利な局面が多いです。

値上がり益と配当を合わせた総リターンで、しかもサイクル下落時の下振れを含めて評価するなら、商社はかなり健闘します。特に、配当を再投資した場合の効果は、10年単位で無視できません。

だから、「メーカーか商社か」は、本当は「あなたはどのタイプの投資家か」という問いと重なっています。

私は、自分が値下がり局面で弱いタイプであることを、何度もの失敗で思い知りました。だから、商社の比率を一定以上、常に持つようにしています。

値下がり局面に強いタイプの方は、メーカー寄りで組んで構いません。自分を知ることが、銘柄選びよりも先に来る作業です。

ルールは、自分の失敗の中からしか作れません

ここまで、私のルールをいくつも書いてきました。

ただ、どれひとつとして、最初から完成形だったものはありません。すべて、失敗してから、仮説を立てて、小さく試して、また失敗して、ようやく残ったものです。

読者にお伝えしたいのは、「私のルールをそのまま使わないでほしい」ということです。

理由は3つあります。

ひとつは、資金量が違うからです。100万円で運用している人と、2000万円で運用している人では、分割の刻みも撤退基準も変わります。

ふたつは、生活環境が違うからです。毎月の入金力がある人と、退職金で一括運用している人では、リスクの取り方の意味が変わります。

みっつは、心理の癖が違うからです。私は値下がりに弱く、値上がりでは欲張りやすい。別の人は真逆の癖を持っているかもしれません。

自分のルールの作り方を考えるときは、次の3つを紙に書き出すことをおすすめします。

自分が過去に最もお金を失った行動パターンはどれか。これを避ける仕組みが、あなた専用のルールの土台になります。

自分が心理的に耐えられない含み損の水準はどこか。実際に経験した水準を正直に書くのがコツです。希望的観測は入れないでください。

自分が1ヶ月に投資に使える時間はどのくらいか。毎日見られる人と、月に1回しか見られない人では、採用すべき戦略が違います。

この3つを書くだけで、今日私が並べた数字のうち、あなたに合うものと合わないものが見えてくるはずです。

スクショして、買う前に見てほしい7項目

ここまで読んでくださった方のために、自分の判断を点検するリストを置いておきます。

NISA枠で半導体関連を買う前、そして、すでに持っている場合にも、定期的に使えます。すべて、YesかNoで答えられる形にしています。

ひとつ、あなたが今買おうとしている銘柄は、装置メーカー・デバイスメーカー・商社のどれに分類されるか、自分で説明できますか。

ふたつ、その銘柄の過去3年間の営業利益率のレンジを、最高値と最低値の両方で言えますか。

みっつ、半導体のブックトゥービルレシオが、今どのあたりの水準にあるか、数字で答えられますか。

よっつ、あなたの今の半導体関連の比率は、成長投資枠全体の何パーセントですか。25%を超えていませんか。

いつつ、撤退基準として、価格・時間・前提の3つを、具体的な数字と条件で書き出していますか。

むっつ、最悪のシナリオ、つまり買値から40%下落した場合に、あなたの年間予算や精神状態にどの程度の影響が出るか、想像できますか。

ななつ、この銘柄を買う理由を、SNSや知人以外の一次情報で説明できますか。

この7つのうち、Yesで答えられなかったものがある箇所が、今のあなたの弱点です。

私も定期的にこのリストに立ち返って、自分の判断を見直しています。恥ずかしい話ですが、今でもNoが混じる時があります。

自分に向き直るための、3つの問い

買い注文を出す前に、自分に聞いてほしいことが3つあります。

ひとつ、あなたの今のポジションが、買値から30%下がった日に、あなたは何をしますか。撤退しますか、買い増しますか、眺めますか。その答えを、今の静かな状態で言葉にできますか。

ふたつ、あなたがこの銘柄を買おうとしている理由は、半年後の自分に手紙で説明できますか。「なぜ買ったんだっけ」と未来の自分が聞いた時、納得させられるロジックを持っていますか。

みっつ、今、あなたがこの銘柄を買わない選択をした場合、何を失いますか。その失うものは、買って50%下落した場合の痛みより大きいですか。

答えに詰まった問いがあるなら、それが今、急がない理由です。

私が自分のために貼っている、短い規律

最後に、私が自分の机の端に貼っている、ルールの要点を3つだけ書いておきます。

サイクル性のある銘柄は、一括で入らない。必ず6回以上に分割する。

撤退基準は、下がる前に決める。下がってから決めたものは、判断ではなく感情である。

迷った日は、取引しない。半分に減らす行動だけは、許可する。

この3行が、過去の失敗から、私が絞り出した結論です。きれいな言葉ではありません。でも、これ以上短くできませんでした。

明日、スマホを開いたら、これだけ見てください

ここまで長い話にお付き合いいただき、ありがとうございます。要点を3つに絞って、お渡しします。

ひとつ、半導体メーカーと商社は、利益の出方がまったく違います。メーカーはサイクルの振幅で稼ぎ、商社はマージンの回転で稼ぎます。10年抱えるなら、この違いを理解した上で配分を決めてください。

ふたつ、NISAの成長投資枠で半導体関連を持つなら、15%から25%のレンジに収めることを、私は自分に課しています。この範囲内で、メーカーと商社の比率を、サイクル局面に応じて動かしています。

みっつ、撤退は、価格・時間・前提の3つで決めます。下がってから考え始めないでください。あの焦りの中で下した判断は、ほぼすべて間違えます。これは私の経験からの、正直な実感です。

明日スマホを開いたら、まずひとつだけ見てください。

半導体装置のブックトゥービルレシオ、またはあなたが持っている、あるいは気になっている半導体商社の最新四半期の在庫回転率です。

この数字が、あなたのシナリオがまだ維持されているかの、最初の手がかりになります。

半導体の10年は、派手な10年ではなく、静かに利益構造を観察し続ける10年です。

判断は急ぎません。あなたの資金量と、あなたの痛みの経験から、あなたのルールを作ってください。

それが、私がこの長い話で、いちばん伝えたかったことです。

本記事は投資助言を目的としたものではありません。 記載された内容は筆者個人の見解であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。 投資に関する最終判断は、ご自身の責任において行ってください。


関連記事もあわせて読むことで理解が深まります:NISA戦略の基本設計半導体商社の業績比較

📚 投資スキルを磨くおすすめ書籍

当サイト管理人が厳選した、個人投資家に本当に役立つ5冊

会社四季報はココだけ見て得する株だけ買えばいい
会社四季報はココだけ見て得する株だけ買えばいい

四季報の読み方がわかる決定版。銘柄選びの効率が劇的に上がります。

Amazonで見る →
世界一やさしい株の教科書 1年生
世界一やさしい株の教科書 1年生

株式投資の基本を丁寧に解説。初心者が最初に読むべき一冊。

Amazonで見る →
億までの人 億からの人
億までの人 億からの人

ゴールドマン・サックス出身の投資家が語る、資産形成のマインドセット。

Amazonで見る →
激・増配株投資入門
激・増配株投資入門

配当で資産を増やす実践手法。高配当株投資の教科書的存在。

Amazonで見る →
マンガでわかるテスタの株式投資
マンガでわかるテスタの株式投資

累計利益100億円超のカリスマトレーダーの手法をマンガで学べる。

Amazonで見る →

※ 上記リンクはAmazonアソシエイトリンクです。購入費用の一部が当サイトの運営費に充てられます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「日本個別株デューデリジェンスセンター」運営者。日本の個別株に特化した投資リサーチを専門とし、銘柄分析・企業デューデリジェンス・業界動向・IPO分析を中心に2,800本超の分析レポートを執筆。ファンダメンタルズ分析とデータドリブンなアプローチで、個人投資家の意思決定をサポートしています。毎日更新の分析レポートを通じて、プロ水準のリサーチを個人投資家に届けることをミッションとしています。

コメント

コメントする

目次