- そもそも「トレジャリー銘柄」とは何か
- ストラテジー社が生んだ「発明」
- 日本での爆発的な拡大
- なぜ企業はビットコインを買うのか
2025年11月13日、株式市場に一本のニュースが走りました。米ブルームバーグ通信が「東京証券取引所を傘下に持つ日本取引所グループ(JPX)が、暗号資産トレジャリー企業に対する規制強化を検討している」と報じたのです。報道直後、ビットコイン事業への転換を打ち出していたある銘柄は、ストップ安水準まで売り込まれました。
ここ1〜2年、個人投資家の間で存在感を増してきたのが「トレジャリー銘柄」です。ビットコインなどの暗号資産を企業財務の中核に据え、その含み益や値上がり期待を株価に反映させていく。一見夢のあるストーリーですが、その裏側には見落としがちな「死角」が潜んでいます。この記事では基礎から、心臓部である「mNAV」という指標、JPXの問題意識、相場の構造的リスクまでを解き明かし、あわせてあまり知られていない関連銘柄を5つ取り上げます。
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2025-11-13/T5LGW9KJH6V900
そもそも「トレジャリー銘柄」とは何か
ストラテジー社が生んだ「発明」
起点は米国のストラテジー社(旧マイクロストラテジー)です。1989年創業のソフトウェア企業でしたが、2020年8月、創業者マイケル・セイラー氏の主導で余剰資金をビットコインに投じる戦略を開始しました。発想は「インフレで目減りする現金より、発行上限のあるビットコインのほうが価値の保存手段として優れている」というものです。
特徴はここから先にあります。同社は株式発行や転換社債で資金を調達し、その資金でさらにビットコインを買い増しました。株価が保有ビットコインの価値を上回って評価される限り、新株を発行し、ビットコインを買い、1株あたりの保有量を増やしていく。この循環が、同社を世界最大のビットコイン保有企業へ押し上げます。このモデルは「デジタル・アセット・トレジャリー(DAT)」と呼ばれ、暗号資産の保有を事業の中核に据える企業がDAT企業、ビットコインに特化する場合はビットコイン・トレジャリー企業と呼ばれます。
日本での爆発的な拡大
これを日本で有名にしたのがメタプラネットです。もとはホテル運営やメディア事業の企業でしたが、2024年4月にビットコイン・トレジャリー戦略を発表すると株価は急騰し、1年ほどで100倍に達したとされ、一時は時価総額が1兆円に届きました。野村総合研究所のレポートによれば、日本市場ではメタプラネットのほか、リミックスポイント、ANAPホールディングス、コンヴァノなど、およそ10社がDAT企業とされる状況になりました。
日本だけの現象ではありません。日本経済新聞によると、暗号資産への投資・運用を目的とした上場企業は2025年10月時点で世界に142社あり、年初から2倍強に増えたとされます。この急増ぶりに、各国の証券取引所が株価の急変動やガバナンスの観点から警戒を強めたのが2025年後半でした。
なぜ企業はビットコインを買うのか
動機は四つに整理できます。インフレや円安へのヘッジ、市場が会社を保有価値以上に評価する局面で新株発行による資金を使い1株あたり保有量を増やせるレバレッジ効果、本業が伸び悩むなかで注目を集める「起死回生の一手」、そして税制です。個人が暗号資産を直接売買すると利益は総合課税で最大約55%ですが、株式の譲渡益は申告分離課税で約20%。トレジャリー銘柄を通じて間接投資すれば株式と同じ税率で済むという見方が、個人の需要を支えてきました。
トレジャリー銘柄の心臓部「mNAV」を理解する
mNAVとは何か
トレジャリー銘柄で必ず出てくるのが「mNAV」です。modified Net Asset Value(修正純資産価値)の略で、「保有する暗号資産の価値に対して、市場が会社全体をどれくらいの倍率で評価しているか」を示します。計算式は「時価総額 ÷ 保有暗号資産の評価額」とシンプルで、1なら市場は会社を保有ビットコインとちょうど同じと評価し、1.5なら保有価値に50%のプレミアムが乗っている状態です。Bitcoin Magazine Japanの解説によれば、簿価が取得原価という過去の数字を反映するのに対し、mNAVは現在の市場価格や希薄化を織り込んだ「今の経済的な現実」を映します。
プレミアムはなぜ生まれ、なぜ剥がれるのか
mNAVが1を超えるのは、市場が「この会社は今後もビットコインを効率よく積み増せる」と期待するからです。逆に言えば、プレミアムは「将来への期待」という移ろいやすいものの上に立っています。市場環境が悪化したりレバレッジへの懸念が高まれば、株価はmNAVが1へ近づく方向に収束し、ビットコイン価格そのものが下がっていなくても株価が大きく下落しうるのです。実際、調査会社K33リサーチが2025年9月にまとめた報告では、上場するビットコイン・トレジャリー企業の4分の1が、保有ビットコインの価値を下回る時価総額で取引されているとされました。
mNAVが1を割ると何が起きるか
mNAVが1を割り込む、つまり株価が保有ビットコインの価値を下回る状態は、構造的な危機を意味します。生命線である「新株発行による資金調達」が、株主価値を破壊する行為に変わるからです。保有価値より安い株価で新株を発行すれば、既存株主の持ち分が薄まる一方で得られるビットコインは目減りします。資金調達ができなければ積み増しも止まり、成長ストーリーが失われ、さらにプレミアムが剥がれる悪循環に陥る。これを「死のスパイラル」と呼ぶこともあります。ビットマイン社のトム・リー会長は2025年10月の時点で、多くのDAT企業がすでに純資産割れに陥りバブルは崩壊している、最終的に成功するDATはごくわずかだと厳しい見方を示しました。トレジャリー銘柄は「ビットコインが上がれば株も上がる」という単純な図式では捉えきれないのです。
JPXは何を問題視しているのか
ブルームバーグ報道とJPXの公式声明
転機の2025年11月13日の報道では、JPXが検討している選択肢として、裏口上場の防止を目的とした「不適当な合併など」へのルール厳格化や、新たな監査義務の導入などが挙げられました。CoinDesk JAPANの報道によれば、JPXの意向を受けてすでに上場企業3社が2025年9月以降に暗号資産の購入計画を保留したとも伝えられ、報道前から水面下で働きかけが始まっていた可能性がうかがえます。背景として各社が共通して指摘したのが、国内トレジャリー企業の株価が急落し個人投資家が損失を被ったという点でした。
この報道に対し、JPXはすぐに公式声明を出しました。規制強化について現時点で具体的に決まっている方針はない、としつつ、東証は暗号資産トレジャリー企業に限らずリスクやガバナンスの観点から懸念がある場合には株主・投資者保護の観点から対応しており、引き続き必要な検討を進めていく、と述べています。「具体策は決まっていないが、問題意識は持ち、検討は続ける」という含みのある内容でした。
一方、報道で名前が挙がったメタプラネットのサイモン・ゲロヴィッチCEOは同日にSNSで反応し、裏口上場や不十分なガバナンス手続きについて自社は該当しないと主張しました。過去約2年間で計5回の株主総会を開催し、事業目的の変更やビットコイン取得のための授権株式数の増加など、すべての重要事項について株主の承認を経てきたと説明しています。規制の焦点が「暗号資産を保有すること」ではなく、「どのようなプロセスで暗号資産企業へ転換したか」というガバナンスに置かれていることがわかります。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f645891bca2c63c31a1e7a6a1216a7d8099a3225
「裏口上場」という核心とNYSEの先行事例
鍵となるのが「裏口上場(バックドア・リスティング)」です。通常、上場には取引所の厳格な審査が必要ですが、すでに上場している会社の経営権を取得して事業を丸ごと入れ替えれば、本来は審査を通らない事業でも実質的に市場に居座れてしまいます。野村総合研究所の解説によれば、東証の上場規則には非上場会社との合併で相手を事実上上場させる事態を防ぐ「不適当な合併等」の規定がありますが、合併が絡まない上場会社単独での業態転換には特段の規制がありません。ある企業が突然「明日からビットコイン・トレジャリー企業になります」と宣言しても、現行ルールでは直接止める手立てがないのです。
米国には先行事例があります。2024年7月、ニューヨーク証券取引所(NYSE)は上場会社マニュアルを改正し、上場会社が「主要な業務の対象」を変更する場合を新たに上場廃止基準に加えました。上場時点と著しく異なる事業へ変更した場合は通知が必要で、取引所はその事業がもし上場時点の主要事業だったら上場を承認していたかという観点から審査し、不適切と判断すれば取引停止または上場廃止が行われます。NYSEはこの具体例として、紅茶販売から暗号資産事業へ転換し最終的に上場廃止となったBit Brother社を引きました。JPX傘下で上場審査を担う日本取引所自主規制法人の中島淳一理事長が「仮想通貨を購入するだけというビジネスでは上場審査は通らない」と述べたとされる点を踏まえれば、NYSE流の基準が東証に導入されれば業態転換型のDAT企業が上場廃止に至る可能性も小さくない、という見方が成り立ちます。
トレジャリーバブルの「死角」
ここからは、株価の動きだけを見ていると見落とす、しかし投資成績を大きく左右しかねない構造的リスクを四つ整理します。
死角1:「本業の体力」という問題
第一の死角は、トレジャリー企業の少なからぬ数が、本業の不振を抱えた状態でビットコイン保有に踏み切ったのではないかという点です。野村総合研究所のレポートが引用する調査によれば、メタプラネットが名乗りを上げて以降、計30社の上場会社がビットコインの購入・保有を発表しましたが、そのうち19社の有価証券報告書に、経営危機を示唆する「継続企業の前提に関する注記」や「重要事象等」が記載されているとされます。
30社の過半数に財務的な黄信号がともっていたことになります。本業がしっかりして余剰資金で保有する企業はビットコインが下落しても本業が下支えしますが、本業が傾いて起死回生を狙う企業では、暗号資産の下落が即座に企業全体の存続リスクに直結しかねません。保有量以前に、その会社が暗号資産抜きで成り立つ事業を持っているかの確認が欠かせません。
死角2:含み益への課税というキャッシュフローの罠
第二の死角は、日本の法人に対する暗号資産の税務処理です。日本では原則として、法人が暗号資産を保有しているだけで期末時点の含み益に課税される仕組みがあります。売却して現金化していなくても、決算期末に時価評価して利益が出ていれば法人税が課される。売っていないのに税金だけ発生するこの「キャッシュフローの乖離」が、多くの暗号資産関連スタートアップを苦しめてきました。
制度見直しも進み、自社発行分などは一定の要件下で時価評価の対象外とする道も開かれています。しかし、トレジャリー企業が市場で買い付けたビットコインには依然としてこの論点がついて回ります。価格が高騰した期末には多額の納税義務が発生し、それを賄うためにビットコインの一部売却を迫られる事態も理論上は起こりえます。決算短信に「業績予想には暗号資産の期末時価評価から生じる損益は織り込まれていない」といった注記が見られるのは、この変動の大きさゆえです。
死角3:希薄化という静かな侵食
第三の死角は、mNAVでも触れた「希薄化(ダイリューション)」です。トレジャリー企業はビットコイン購入の資金を新株発行や新株予約権、転換社債などで調達することが多く、これらが既存株主の持ち分を薄めます。株価が好調なうちは希薄化を上回るペースで積み増せますが、mNAVが1を割る局面では、資金調達のたびに既存株主の価値が削られます。実際、メタプラネットの株価が高値から大きく下落した要因の一つに、新株予約権の行使による希薄化への懸念が指摘されています。発行済み株式数の推移を確認し、「1株あたりの暗号資産保有量」が増えているのか減っているのかを追うことが本質的です。
死角4:規制と会計ルールの不確実性
第四の死角は、規制リスクと、それに連動する会計・税制ルールの不確実性です。金融庁は、暗号資産を「資金調達・事業活動型」と「決済・投資型」に分類し性質に応じた規制を適用する枠組みを検討しているとされ、ETF解禁も視野に入れられています。
税制面では、個人の暗号資産取引について現行の総合課税(最大約55%)から申告分離課税(約20%)への移行が議論され、金融商品取引法の改正を前提に2028年1月以降の取引分から適用される見通しとされますが、いずれも検討・要望の段階で流動的です。もし暗号資産が株式並みの税率で投資できるようになれば、トレジャリー銘柄を通じて間接投資していた個人の一部が現物やETFへ流れ、需要を支えてきた「税制上の優位性」が揺らぎかねません。これら四つの死角は相互に絡み合い、本業が弱く、含み益課税でキャッシュが流出し、希薄化が進み、そこへ規制強化が重なると、株価はビットコイン価格の下落幅をはるかに超えて崩れることがあります。実際、2025年末から2026年にかけて暗号資産関連株は「バブル崩壊と規制懸念で試練が続く」と報じられました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ff88b394d6cbdfff1a47e20c2991973582561779
発掘編:あまり知られていないトレジャリー関連銘柄5選
ここからは視点を変えて、あまり名前の知られていない関連銘柄を5つご紹介します。誰もが知る大型株ではなく、それぞれに固有のストーリーを持つ銘柄を選びました。念のため強調しますが、これらは投資を推奨するものではありません。これまで述べた「死角」を踏まえ、各社がどんなリスクを抱えているかを自分で考える練習材料として捉えてください。実際に検討する際は必ずご自身で最新の開示資料や財務状況を確認し、自己責任で判断してください。各銘柄には株価や業績を確認できるみんかぶのページを添えています。
銘柄1:リミックスポイント(3825)
再生可能エネルギーの電力小売や蓄電を主力としながら、ビットコインを中心とした資産運用にも取り組む企業です。興味深いのは暗号資産との関わりが「にわか」ではない点で、同社はかつて暗号資産交換業者「BITPoint」を運営していた母体として知られています。現在は取引所運営から退いていますが、その知見を背景に2025年2月には暗号資産を購入するなど、財務戦略としてビットコイン保有を打ち出しています。本業のエネルギー事業という土台を持つ点は純粋な業態転換型とは一線を画しますが、暗号資産市場と電力市場という変動の大きい二領域を抱える点は意識しておきたいところです。
銘柄2:コンヴァノ(6574)
業態転換型トレジャリー企業の象徴とも言える存在です。もともと関東・東海・関西で「ファストネイル」というネイルサロンチェーンを展開していました。ネイルサロンとビットコイン、一見何の関係もなさそうな組み合わせがブームを象徴しています。ブルームバーグの報道によれば、同社は多額の資金調達を行い、2027年3月末までに2万1000BTCの保有を目標とするとしました。本業の規模からするとかなり野心的な内容です。
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2025-09-01/T1VTC7GOYMTL00
さらに同社は、保有ビットコインを現物のまま使いオプション取引でプレミアム収益を得る「ビットコイン・インカム事業」も打ち出しています。ただし暗号資産の評価損で最終損益が赤字に転じる期もあり、業績が価格変動で大きくぶれる構造です。ネイルサロンという本業の規模と保有目標額との大きな落差をどう評価するか。まさに「死角」を試す格好の題材です。
銘柄3:ANAPホールディングス(3189)
カジュアルアパレルを手がける企業です。10代から20代向けの衣料品をインターネット通販中心に展開してきましたが、こちらもビットコイン投資を本格化させています。同社の開示によれば、2025年8月末時点で1000BTC超を保有し、相応の時価評価益を計上したとされます。投資事業会社や美容サロン子会社を設立するなど事業ポートフォリオの転換を進めるなかで、暗号資産が大きな柱の一つになっています。ただし本業のアパレル事業は厳しい状況が続き、損失が拡大しているとも報じられています。事業再生の途上にある企業がビットコインの含み益で全体像をどう描こうとしているのか、本業の体力という第一の死角を考えるうえで示唆に富む銘柄です。
銘柄4:gumi(3903)
これまでの3社とは毛色の異なる、モバイルゲームやブロックチェーン事業を手がける企業です。注目される理由は二つあります。一つは、ビットコインだけでなくXRPも保有する「二軸戦略」を採用している点です。国内の上場企業がXRPをまとまった規模で取得するのは珍しく、企業財務における分散投資の一形態として興味深い構図です。もう一つは、筆頭株主であり資本業務提携先でもあるSBIホールディングスとの関係です。SBIグループはリップル社との関係が深く、暗号資産ETFの組成も視野に入れているとされます。大手金融グループとの連携は、ガバナンスや資金調達の面で単独の業態転換型企業とは異なる安定感をもたらしうる要素で、比較的「地に足のついた」事例と見ることもできます。
銘柄5:Bitcoin Japan(8105)
今回のJPX規制論議の文脈を最も色濃く映し出す銘柄です。旧社名は堀田丸正といい、和装品や宝飾品などの卸売販売を行う、1861年創業の老舗繊維企業でした。160年以上の歴史を持つ会社が、2025年11月11日に「Bitcoin Japan株式会社」へ商号を変更し、ビットコイン・トレジャリー事業へ舵を切ったのです。背景には米国のデジタル資産サービス企業バックトによる株式取得があり、バックトが筆頭株主となって新たな経営体制が敷かれました。
そして、冒頭で触れたストップ安の銘柄こそ、このBitcoin Japanでした。JPXの規制強化検討が報じられた2025年11月13日、同社株は売り注文が殺到しストップ安水準まで売り込まれました。老舗企業の経営権を外部資本が取得し、事業を暗号資産へ丸ごと転換する。この構図は、まさにJPXが懸念する「業態転換」や「裏口上場」の論点そのものであり、これまで述べた論点が凝縮された一社として観察する価値があります。
この5社以外にも、暗号資産ソラナを保有するトレジャリー企業や、株主優待としてビットコインの受け取りを始めた銘柄など、調べていくとさまざまなプレイヤーが見つかります。大切なのは、こうした銘柄を「ビットコイン関連だから」という理由だけで一括りにしないことです。本業の有無、保有する暗号資産の種類、資金調達の手法、ガバナンスの質。一社ずつ丁寧に見ていくと、同じトレジャリー銘柄でもリスクの質がまったく違うことが見えてきます。そこにこそ、銘柄を発掘する面白さがあります。
個人投資家が「今」チェックすべきこと
最後に、これまでの論点を、実際に銘柄を見るときの確認手順として五つに整理します。
チェック1:mNAVの水準と方向
mNAVが極端に高ければ将来への期待が相当織り込まれた状態で、プレミアムが剥がれれば暗号資産価格が下がらなくても株価は下落します。逆に1に近い、あるいは1を割る場合は、割安に見える一方で資金調達が株主価値を毀損する局面に入っている可能性があります。絶対水準だけでなく、拡大か縮小かという方向も見ておきましょう。
チェック2:本業と継続企業注記
その会社が暗号資産抜きで成り立つ本業を持っているか。30社中19社に継続企業の前提に関する注記などが付いていた事実を思い出し、有価証券報告書や決算短信にこうした記載がないか、本業のセグメントが黒字かを確認するだけでも、リスクの質を大きく見極められます。
チェック3:資金調達の方法と希薄化
新株発行、新株予約権、転換社債など、希薄化を伴う手段にどれだけ依存しているか。発行済み株式数の推移を追い、1株あたりの暗号資産保有量が増えているのか減っているのかを見ます。株価が上がっていても、それ以上の勢いで株式数が増えていれば1株あたりの価値はむしろ低下していることもあります。
チェック4:規制と制度の動向
JPXの規制論議は2025年11月時点で検討段階ですが、NYSEがすでに主要業務対象の変更を上場廃止基準に加えた前例を踏まえれば、今後の制度変更は十分に現実的です。暗号資産そのものの税制改正やETF解禁の議論も需要構造に影響するため、投資情報メディアで継続的にフォローしておくと相場の地殻変動を早めに察知できます。
チェック5:ポジションサイズの管理
最も基本的で最も重要なのがポジションサイズの管理です。トレジャリー銘柄は暗号資産価格とプレミアムという二つの変動要因を併せ持つため値動きが極めて大きく、メタプラネットですら高値から大きく下落しました。大きく値下がりしても生活や資産全体に深刻な影響が出ない範囲に投資額を抑え、一つの銘柄やテーマに資金を集中させすぎないこと。これが激しい値動きのなかで退場せずに済むための条件です。
まとめ
2025年11月のJPX規制報道は、トレジャリーブームに一つの転換点をもたらしました。ビットコインを保有すること自体が悪いわけではありません。問題は、本業の裏付けが乏しいまま業態を転換し、希薄化を重ね、含み益課税のリスクを抱えながら、市場の熱狂だけで株価が押し上げられていく、その構造のもろさにあります。NYSEの先行事例や、30社中19社に継続企業注記が付いていたという事実は、この問題が決して杞憂ではないことを示しています。
一方で、本業の土台を持ち、ガバナンスを丁寧に固め、大手金融グループと連携しながら暗号資産戦略を進める企業も存在します。同じトレジャリー銘柄でも、その内実は大きく異なります。この記事で挙げた5銘柄を、それぞれの死角という観点から眺め直してみると、表面的な「ビットコイン関連」というラベルの奥にある固有のリスクとストーリーが見えてくるはずです。mNAVを確認し、本業を確認し、希薄化を確認し、規制をフォローし、ポジションを管理する。この地道な作業の積み重ねこそが、トレジャリーバブルの死角を避け、銘柄を発掘する楽しみを長く味わい続けるための確かな足場になります。
なお、本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資はリスクを伴いますので、最終的な判断はご自身の責任で、最新の情報を確認したうえで行ってください。
JPXが”ビットコイン財務企業”を規制?トレジャリー銘柄バブルのを“買い”と見るか“様子見”と見るか、判断の分かれ目はどこにあるんでしょうか。
決算と需給だけでなく、死角の流れがどう変わるか。そこを見ないと判断を誤ります。
| セクション | 本記事で扱うポイント |
|---|---|
| そもそも「トレジャリー銘柄」とは何か | 投資判断の前提条件を点検 |
| ストラテジー社が生んだ「発明」 | 関連銘柄との比較で位置付け |
| 日本での爆発的な拡大 | 次の決算で確認すべき指標 |
| なぜ企業はビットコインを買うのか | 構造と業績の関係を整理 |
| トレジャリー銘柄の心臓部「mNAV」を理解する | 需給と中期見通しを確認 |
| mNAVとは何か | リスクと割安性をチェック |


















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