クルーズ業界に再び暗雲?ダイヤモンド・プリンセスから6年、観光株の「買い場」と「逃げ場」を読み解く

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本記事のポイント
  • あの2020年2月、私はクルーズ関連株のチャートを毎晩眺めていた
  • このニュースに反応した私は、毎回損をしてきた
  • 観光株が「事件」で動く時、本当に動いているのは何か
  • 三つの分かれ道、あなたが今いるのはどこか
マーケットアナリスト
「あの2020年2月、私はクルーズ関連株のチャートを毎晩眺めていた」のくだりが、まさにこの記事の出発点です。テーマ全体の資金の動きが気になるという前提で読み進めると論点が整理されます。
目次


旅行や感染症のニュースに揺さぶられる前に、観光株で生き残るための見方と撤退ラインを一緒に整理します。

あの2020年2月私はクルーズ関連株のチャートを毎晩眺めていた

2020年2月、横浜港に停泊したダイヤモンド・プリンセス号の映像を、私は毎晩のように見ていました。

仕事から帰ってソファに座り、スマホで観光関連株のチャートを開く。下げ止まらない株価を眺めながら、「ここまで下がったなら、そろそろ底だろう」と何度も呟いていました。

正直に言うと、あの時の私はワクワクしていました。

恐怖よりも、チャンスへの期待のほうが大きかったのです。「コロナはいずれ収まる。観光は必ず戻る。今買えば、戻った時に倍になる」。SNSでも似たような声が増えていました。私もその一人でした。

でも、その「いずれ」は、思ったよりずっと長く、深かった。

あれから6年が経ちました。今また、旅行や観光をめぐるニュースで市場がざわつく場面が増えています。新しい感染症の話、入国制限の議論、訪日客の戻り具合、円相場の変動。次々に流れてくるニュースを浴びながら、観光株の前で私たちは再び立ち止まっています。

買うべきか、降りるべきか。

この記事では、まずノイズとシグナルを仕分けます。次に観光株が今どんな局面にあるのか、私の見方を整理します。最後にあなたが明日から使える、撤退ラインの作り方をお渡しします。

派手な相場予測は出てきません。代わりに、6年前の私が知っておきたかったことを、できるだけ静かに書こうと思います。

このニュースに反応した私は、毎回損をしてきた

観光株を持っていると、毎日のように「反応したくなるニュース」が流れてきます。

ただ、私の経験で言えば、反応した日のうち9割は、後から見て無駄な売買でした。だからまず、何を無視していいかを決めるところから始めます。

無視していいニュース、私が決めている三つはこれです。

一つ目は、単発の感染症ニュース。「○○国で新しいウイルスが確認された」という見出しです。これを見るとほぼ必ず、胸の奥に「またあの時か」という冷たい感覚が走ります。記憶が反応しているのです。でも、こうしたニュースのほとんどは、数週間後にはどこにも報じられません。私自身、過去に何度もこの種の見出しで売って、そのまま株価が戻る場面を見送ってきました。

二つ目は、クルーズ船での集団感染ニュース。これはダイヤモンド・プリンセスの記憶があるぶん、感情が大きく揺さぶられます。ただ、6年前と今では、業界の感染管理体制も、各国の対応プロトコルも大きく変わっています。「またあの時の再来だ」という直感は、ほとんどの場合、過去の自分が見せる幻だと私は考えています。

三つ目は、訪日客の月次データの前月比。「先月より○%減った」という記事に、私は何度も振り回されました。観光は季節要因がとても大きく、月次の数字を単月で見ても何もわかりません。少なくとも3か月の移動平均、できれば前年同月比で見ないと、構造の変化なのか、ただの揺れなのか判別できません。

逆に、私が注視しているシグナルは三つあります。

一つ目は、WHOや厚生労働省の警戒レベルの変更です。これは政策が動く前のサインです。警戒レベルが上がれば、水際対策や渡航制限の議論が始まる可能性が高まります。観光株にとって、需要そのものを消す材料です。これは厚生労働省の検疫所サイトや、WHOのDisease Outbreak Newsを週1回程度確認するだけで追えます。

二つ目は、大手航空会社・旅行会社の先行予約データです。これは実需の先行指標です。航空各社の月次トラフィック発表、決算説明会の資料、大手旅行会社が出す予約状況のリリース。ニュースが騒いでいる時に、現場の予約がどう動いているかを照合できます。ニュースと予約データがズレている時は、ほぼ必ず予約データのほうが正しい方向を示します。

三つ目は、観光関連ETFや関連株の出来高の急変動です。誰が動いているかを見るためです。個人投資家だけが売買している局面と、機関投資家が動いている局面では、その後の値動きの粘り強さがまったく違います。

これらの三つのシグナルは、次の章で順に分析対象として扱います。

観光株が「事件」で動く時、本当に動いているのは何か

ここで一度、いま観光株を取り巻く事実を整理しておきます。

2024年の訪日外国人旅行者数は3500万人を超え、過去最高を更新しました。2025年もこの流れは続き、2026年の今もインバウンドは日本経済の数少ない明るい話題の一つです。円安が長く続いているため、海外から見ると日本の観光は相対的に割安に映っています。

一方で、供給側はかなり苦しい状況です。ホテルの人手不足、バスやタクシーの運転手不足、地方の観光地のオーバーツーリズム問題。需要があっても受け入れきれない、という構造があります。

こうした事実の上に、感染症や事件のニュースが重なる時、観光株は大きく動きます。ここから先は私の解釈です。

私はこう考えています。観光株は事件で大きく揺れますが、その揺れは振幅であって、本質ではありません。長期のトレンドを決めているのは、アジア圏の中流層の旅行需要と、日本側の受け入れ供給能力です。この二つはニュース1本では変わりません。

つまり、事件が起きた時に株価が大きく下げるのは、市場参加者が「最悪のシナリオ」を一斉に織り込もうとするからです。そして、その最悪のシナリオが実現しなかった時、株価は時間をかけて戻ります。逆に、最悪のシナリオが本当に走り出した時は、戻りません。少なくとも年単位で戻りません。

ただし、この見方には前提があります。私の前提はこうです。

WHOの警戒レベルが現在の段階を超えて引き上げられないこと。日本政府が水際対策を再導入しないこと。主要国が相互に渡航制限をかけ合う事態にならないこと。

この三つのうち一つでも崩れたら、私は見立てを変えます。観光株を持っているなら、ポジションを軽くする方向に動きます。なぜなら、この三つはどれも、需要そのものを消してしまう材料だからです。需要が消えると、振幅ではなく構造が変わります。

ここが大事なところなので、もう一度書きます。事件のニュースは振幅、政策のニュースは構造。私たちが恐れるべきは、後者のほうです。

正直、ここの線引きは私もいつも迷います。「これは政策に発展するのか、それともニュースで終わるのか」を、リアルタイムで見極めるのは難しい。だから私は、自分一人の判断ではなく、先ほどの三つのシグナル(警戒レベル、先行予約、出来高)を組み合わせて、できるだけ感情を排除して見るようにしています。

この前提が動いた時に、シナリオがどう分岐するか。次の章でそれを整理します。

三つの分かれ道、あなたが今いるのはどこか

これから書く三つのシナリオは、私が観光株を考える時に頭の中で必ず描く分岐です。あなたの今のポジションが、どのシナリオに対応しているかを照らし合わせてみてください。

基本シナリオ:ニュースは騒がしいが、需要は崩れない

これが今のところ、私が最も蓋然性が高いと考えている展開です。

発生条件は、WHOの警戒レベルがフェーズ4以上に引き上げられず、日本政府の水際対策も従来水準のままであること。先行予約データが大きく崩れていないこと。

この場合、観光株は事件のニュースで一時的に5%から15%程度下げる場面はあっても、3か月から6か月で元に戻すと私は見ています。

やることは、押し目を3回から5回に分けて拾うこと。一括で入らないのは、二番底や三番底があり得るからです。私は過去、最初の急落で全額入れて、そこからもう一段下げに巻き込まれて動けなくなった経験があります。

やらないことは、ナンピン(つまり下げたところで平均取得単価を下げるための買い増し)と、ニュースに反応した狼狽売り。「もう底だ」という確信は、たいてい間違っています。

チェックするものは、先行予約データが3か月連続で前年同月比プラスを保てているか。これが崩れたら、基本シナリオから次の逆風シナリオに移行します。

逆風シナリオ:政策が動き、需要が一時的に消える

発生条件は、警戒レベルの引き上げ、または日本もしくは主要国による渡航制限の議論開始。

このシナリオに入ると、観光株は2020年ほどではないにせよ、20%から40%の下げを覚悟する必要があると私は考えています。需要が「減る」のではなく「消える」局面が短期的に訪れるためです。

やることは、保有ポジションの段階的な縮小。一度に全部売らないのは、戻り局面で売り切ってしまわないためです。私は3回に分けて売り、最後の3分の1は残しておくようにしています。

やらないことは、信用買いの追加と、レバレッジ型ETFでの逆張り。逆風シナリオでは、振幅ではなく構造が動くので、短期の押し目買いが致命傷になります。

チェックするものは、各国の渡航制限のニュースと、主要航空会社のキャンセル率。先行予約ではなく、すでに入っている予約のキャンセル率が3割を超え始めたら、本格的な需要消滅が起きていると判断します。

様子見シナリオ:判断材料がそろわない時

発生条件は、ニュースは出ているが、警戒レベルも先行予約もまだ動いていない、いわゆる情報錯綜の局面です。

正直、この局面が一番難しい。私もここで毎回判断を間違えてきました。

やることは、ポジションを「半分」にすること。後ほど詳しく書きますが、迷った時はまずポジションを軽くする、というのが私のルールです。間違えていてもダメージが半分になります。

やらないことは、SNSや動画のショート尺の市況解説で判断を上書きすること。様子見の局面で耳を傾けるのは、自分が事前に決めたシグナルだけにします。誰かの威勢のいい予測に乗ると、たいていろくなことになりません。

チェックするものは、自分が決めた三つのシグナルのどれかが動いたかどうか。動かないうちは動かない、というのも一つの判断です。

私が「もう底だ」と買い増して、そこから30%下げた話

ここからは、6年前の私の話です。

2020年2月の中旬、ダイヤモンド・プリンセス号のニュースが連日流れていた頃。私はすでに、観光関連のいわゆるバスケット、つまり航空、鉄道、旅行代理店、テーマパーク、ホテル系REITを少しずつ持っていました。

最初の急落、各銘柄が10%から15%下げたあたりで、私は「これは絶好の押し目だ」と判断しました。判断の根拠はこうです。

過去のSARSの時、観光株は半年で戻った。リーマンショックの時も2年で戻った。だから今回も、悪くて1年、よくて半年で戻るだろう。それまでに買えるだけ買っておけば、リターンは大きい。

そう考えながら、平日の夜、私は寝室の机でノートPCに向かっていました。買い注文のボタンに指を置いた時、頭の中ではもう、半年後に株価が戻った時の自分が見えていました。「あの時、勇気を出して買い増してよかった」と思っている自分の姿です。

この時点で、私の中の「市場の声」は完全にミュートされていました。耳に入っていたのは、自分の希望のほうの声だけでした。

そこから3週間で、相場は私の想像のはるか先まで下げました。

最初の押し目買いから、さらに15%。ここで私はナンピンしました。「ここまで下げたなら、もう底に近いはずだ」と。3月に入って、世界各国でロックダウンの話が始まりました。航空便の運航停止、テーマパークの休園、外出禁止令。私の目の前で、観光業の前提そのものが崩れていきました。

含み損が30%を超えた時、私は耐えきれなくなって損切りしました。深夜に、半分泣きそうになりながらです。注文ボタンを押す時の指の震えは、今でも思い出せます。

そしてその後、相場は戻りました。観光株も戻りました。私が売った価格よりも、ずっと高い水準まで。

何が間違っていたのか。

判断そのものは、長期で見れば間違っていませんでした。観光は戻ったからです。間違っていたのは、サイズと、撤退基準と、自分の感情の見積もりでした。

サイズの間違いは、一度に大きく入りすぎたこと。最初の押し目買いの時点で、観光関連が私のポートフォリオの3割を超えていました。あの規模で30%下げれば、ポートフォリオ全体が10%近く毀損します。これは、頭ではなく胃が耐えられない損失でした。

撤退基準の間違いは、買う前に「ここまで下げたら降りる」を決めていなかったこと。下げてから決めると、必ず後手に回ります。私は最悪の地点で降りることになりました。

そして感情の見積もりの間違いが、たぶん一番大きい。「自分は冷静に長期投資ができる」と思っていました。30%の含み損を抱えて毎晩眠れなくなる自分を、想像できていなかったのです。

今でもあの時の判断を思い出すと、胃が少し重くなります。たぶん、これは一生消えません。「あれは勉強代だった」と笑える日は、私には来ない気がします。

ただ、あの失敗があったから、今の私には決めているルールがあります。次の章で、そのルールを書きます。

逃げるための線、攻めるための線

ここからは、観光株を持つ時の、私の運用ルールです。あの2020年の失敗から作りました。

数字はすべてレンジで書きます。これは私の数字なので、あなたの資金量やリスク許容度に合わせて調整してください。

現金比率の話

観光株は、シクリカル(つまり景気や事件で大きく振れる性質)の銘柄群です。だから私は、観光関連を持つ時、現金比率を40%から60%の幅で保つようにしています。

平時は40%寄り、感染症や政情のニュースが増え始めたら50%、本格的な逆風シナリオが視野に入ったら60%。この幅で動かします。

なぜこのレンジかと言うと、現金が30%を切ると、急落の時に「拾いに行く弾」がなくなるからです。逆に60%を超えると、戻り局面でリターンが薄くなりすぎる。私の経験では、この幅が攻めと守りのバランスがちょうどいいと感じています。

建て方の話

観光株を新しく組み入れる時、私は5回に分けます。間隔は最低2週間、できれば1か月。

なぜ5回かと言うと、3回だと、ニュース1本で全額入りきってしまうことがあるからです。5回に増やすと、各回が全体の20%なので、「次の急落でもう一回拾える」という心の余裕ができます。

一括で入ると、急落の時に身動きが取れなくなります。これは6年前の私が、身をもって学んだことです。

撤退基準、3点セット

これが一番大事なところです。買う前に、必ず三つの線を決めます。

価格基準は、過去6か月の安値を明確に下回ったら。「明確に」というのは、終値で2%以上下抜け、かつ翌日も戻さない、という意味で私は使っています。ここを割ったら、いったんポジションを半分にします。

時間基準は、買ってから6週間経っても想定した方向に動かなかったら、いったん降りる。「動かない」というのは、買値±5%のレンジに留まり続けている状態です。観光株は短期で動くシクリカルなので、6週間動かないということは、需給が膠着している、つまり買い手が消えかかっているサインだと私は考えています。

前提基準は、ここが一番抽象的になりがちなので、自分なりに具体化しておきます。先ほどの章で書いた三つの前提、つまりWHOの警戒レベル、水際対策の議論、主要国の相互渡航制限、このうちどれか一つでも崩れたら撤退します。

3つのどれが先に来てもいいので、最初に来た線で動きます。これを買う前に紙に書いて、机の前に貼っておく。これが、6年前の私には決定的に欠けていたものでした。

迷った時の救命具

判断に迷ったら、ポジションを半分にしてください。間違えてもダメージが半分になります。迷いは市場からのサインです。

これは私が、今でも自分に言い聞かせている言葉です。迷うのは、判断材料が足りていないからではなく、感情と分析がずれているからです。半分にすると、一度頭が冷えます。残った半分は、頭が冷えてから考え直せばいい。

自分の状況を確かめる、7つの問い

下記をスマホのメモに保存して、観光株を売買する前にひとつずつチェックしてみてください。

一、観光関連の保有比率が、ポートフォリオ全体の3割を超えていないか 二、買い注文を出す前に、撤退する価格を決めて紙かメモに書いたか 三、一回で全額入れず、最低でも3回以上に分ける計画になっているか 四、「もう底だ」「ここで買わないと逃す」という焦りが、自分の中にないか 五、過去6か月の安値を、自分のシートかメモに記録しているか 六、WHOまたは厚労省の警戒レベルを、直近1週間以内に確認したか 七、含み損が出た時、ナンピンしないと自分に約束できているか

このうち2つ以上「いいえ」が出る時、私の経験では、その注文は出さないほうがいい注文です。

自分への3つの問い

次の3つは、答えられなかったこと自体が気づきになる質問です。

一、あなたの今の観光株のポジションは、最悪のシナリオで何%の損失になりますか。

二、その最悪のシナリオが起きた時、あなたの生活や貯蓄は、どこまで耐えられますか。

三、6か月後に株価が今より20%下げていたとして、その時のあなたは追加で買い増せますか、それとも降りますか。

この3つに今すぐ答えられない場合、ポジションサイズが大きすぎる可能性があります。

私が自分に課している、行動レベルの4つのルール

一、買う前に、撤退価格と撤退時期を必ず紙に書く 二、ナンピンしない。下げて買い増したくなったら、最低3日空ける 三、SNSの「もう底」「絶好の買い場」という声を見たら、その日は注文を出さない 四、含み損が10%を超えたら、ポジションを必ず半分に減らす

これらはすべて、6年前の私が守っていれば、あれほど痛い目に遭わずに済んだルールです。

「結局それタイミング投資では?」と聞かれたら

ここまで書いてきた話を読んで、「それって結局、タイミングを当てに行く投資ですよね」と感じる方もいると思います。その指摘はもっともです。

正直、観光株のような景気循環型の銘柄群は、長期インデックスのように「ただ持ち続ける」戦略と相性がよくありません。事件で大きく動き、戻りも大きい。買うタイミング、売るタイミングで、リターンがかなり変わります。

これを否定して「いや、長期で持てば大丈夫です」と言うのは、私には誠実に思えません。

ただ、ここで一つだけ条件分岐があります。

長期インデックスを資産形成の主軸に置いて、観光株を「サテライト(衛星部分)」として5%から15%の枠で扱う場合、話は少し変わります。サテライトの部分は、シクリカルなセクターで攻めることに合理性があります。なぜなら、ポートフォリオ全体に対する影響が限定的だからです。

逆に、ポートフォリオの3割以上を観光株が占めている状態で「長期保有だから大丈夫」と言うのは、私の経験では、たいてい根拠のない楽観です。3割を超えると、シクリカルな揺れがメンタルに直接刺さります。眠れなくなります。

つまり、観光株はタイミング投資的な性格を持っています。それを認めた上で、ポートフォリオ全体の中でどう位置づけるかを決めるほうが、私は健全だと思います。「長期だから関係ない」と言って思考停止しないほうがいい、ということです。

これは私の見方ですが、前提が変われば判断も変わります。たとえば、観光業界が構造的に変質してシクリカル性が薄まるような変化(全自動化、デジタルツーリズムの本格普及など)が起きれば、考え方は変える必要があると思っています。

今、誰が買い、誰が売っているのか

最後に少しだけ、市場参加者の動きについて触れておきます。これは私の推測も混じるので、参考程度に読んでください。

観光株の主な買い手は、長らく海外の機関投資家でした。日本のインバウンド回復ストーリーは、海外から見て分かりやすいテーマだからです。一方で売っているのは、コロナ禍で深く損失を抱えた個人投資家の戻り売り、それと、過去最高益を見て利益確定する一部の機関です。

私が注意して見ているのは、出来高の中身です。出来高が増えているのに、機関の売買データに目立った変化がない場合、それは個人投資家だけが回転売買している可能性が高い。こうした局面は、上にも下にも振れやすく、私の経験では、勝ちにくい相場です。

機関投資家の動きが伴っている時の値動きには、もう少し粘り強さがあります。短期のニュースで過剰反応せず、トレンドを形成しやすい。これは東京証券取引所が公表する投資部門別売買状況や、外資系証券のレポートから、ある程度読み取れます。要は、誰が動いているかを見ることで、自分のポジションの居場所が分かりやすくなる、という話です。

明日、スマホを開いたら最初に見てほしい一つのこと

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

最後に、この記事の核心を3つに絞っておきます。

一つ目は、観光株は事件で大きく振れるが、振幅と構造を見分けることが大事だということ。事件は振幅、政策は構造。恐れるべきは後者です。

二つ目は、買う前に三つの撤退基準(価格、時間、前提)を必ず決めておくこと。下げてから決めると、必ず後手に回ります。

三つ目は、迷ったらポジションを半分にすること。間違えてもダメージが半分になります。迷いそのものが、市場からのサインです。

そして、明日スマホを開いた時に、最初に見てほしいのは一つだけです。

WHO、または厚生労働省の感染症の警戒レベル。これが現在のレベルから引き上げられているかどうか。

ニュースアプリの最新記事ではなく、公式ソースで確認してください。そこが動かない限り、私たちが今いるのは「基本シナリオ」の中です。動いた時に、はじめて姿勢を変える。それまでは、決めたルールの中で淡々と過ごす。

観光株の前で立ち止まっているあなたが、6年前の私のような転び方をしないことを、静かに祈っています。

逃げるのは負けではありません。生き残るための選択です。そしてどちらの選択をするにしても、その線を、自分の手で書いておくこと。それが、市場から退場せずに残るための、いちばん地味で、いちばん効く準備だと、私は思っています。

本記事は投資助言を目的としたものではありません。 記載された内容は筆者個人の見解であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。 投資に関する最終判断は、ご自身の責任において行ってください。

章タイトル記事内での位置づけ
1. あの2020年2月、私はクルーズ関連株のチャートを毎晩眺めていた本記事固有の論点を整理
2. このニュースに反応した私は、毎回損をしてきた本記事固有の論点を整理
3. 観光株が「事件」で動く時、本当に動いているのは何か本記事固有の論点を整理
4. 三つの分かれ道、あなたが今いるのはどこか本記事固有の論点を整理
5. 基本シナリオ:ニュースは騒がしいが、需要は崩れない本記事固有の論点を整理
投資リサーチャー
続く「このニュースに反応した私は、毎回損をしてきた」では、根拠を一段深く掘り下げます。短期の値動きだけに流されず、ファンダの裏付けを点検したいところです。

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この記事を書いた人

「日本個別株デューデリジェンスセンター」運営者。日本の個別株に特化した投資リサーチを専門とし、銘柄分析・企業デューデリジェンス・業界動向・IPO分析を中心に2,800本超の分析レポートを執筆。ファンダメンタルズ分析とデータドリブンなアプローチで、個人投資家の意思決定をサポートしています。毎日更新の分析レポートを通じて、プロ水準のリサーチを個人投資家に届けることをミッションとしています。

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