- はじめに ― 「永遠の化学物質」と「国策半導体」が交差する瞬間
- 第1章 PFAS規制 ― 2026年は「決定的な年」になります
- 1-1. PFASとは何か、なぜ問題視されるのか
- 1-2. 日本国内の規制 ― 2026年4月から水質基準が「法的義務」に
はじめに ― 「永遠の化学物質」と「国策半導体」が交差する瞬間
2026年は、日本の素材産業にとって歴史的な転換点になりそうな年です。一方では、欧州を中心とした「PFAS(有機フッ素化合物)」の包括規制が最終フェーズに突入し、もう一方では、ラピダスをはじめとする国産半導体プロジェクトに対して総額10兆円規模の公的支援が本格的に動き出します。
この二つの巨大な潮流は、まったく別個のテーマのように見えて、実は「日本の化学産業の再定義」という同じ地点に向かって流れ込んでいます。半導体製造には膨大な量のPFASが使われており、規制強化と半導体増産という相反する要請を両立させるためには、PFASフリーや代替素材、PFAS処理技術といった新しい産業群を国内で立ち上げる必要があるからです。
筆者はこの一連の動きを「日本版グリーンケミカル革命」と呼んでおり、2026年下半期は個人投資家にとって、この新潮流に乗り遅れないために絶対に押さえておくべき期間だと考えています。本記事では、規制の最新動向、政策の中身、関連市場の規模感、そして個別銘柄まで、できるだけ踏み込んで整理していきます。投資判断の最終的な責任はご自身にありますが、ヒントになる情報をたっぷり詰め込みましたので、最後までお付き合いいただけますと幸いです。
第1章 PFAS規制 ― 2026年は「決定的な年」になります
1-1. PFASとは何か、なぜ問題視されるのか
PFASとは「ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物」の総称で、炭素とフッ素の結合を持つ人工的な化学物質群を指します。1940年代から実用化が始まり、現在では1万種類以上が存在するとされています。
撥水・撥油性、耐熱性、化学的安定性に非常に優れているため、フライパンのコーティング、防水スプレー、消火薬剤、半導体製造、自動車部品、医療機器など、現代社会のありとあらゆる場面で活用されてきました。一方で、炭素とフッ素の結合が極めて強固なため自然界では分解されにくく、人体や環境に長期間蓄積する性質があります。このため「フォーエバーケミカル(永遠の化学物質)」と呼ばれ、近年は発がん性や免疫低下、コレステロール値上昇などとの関連が指摘されています。
日本のPFAS規制の現状は?国内の最新動向や各省庁の取り組み
日本のPFAS規制の最新動向と各省庁の取り組みを解説。環境や健康への影響、今後の対応について詳しく紹介します。
www.eurofins.co.jp
特にPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は毒性が高く、国際がん研究機関(IARC)は2023年にPFOAを「発がん性がある(グループ1)」、PFOSを「発がん性の可能性がある」と分類しました。これ以外にも血中コレステロール値の上昇、消化管の炎症、免疫力の低下、ワクチン反応の弱まり、胎児や乳幼児の発育への影響など、多岐にわたる健康リスクが報告されています。
PFASが社会問題として大きく注目されるきっかけになったのは、米軍基地周辺の地下水汚染です。日本国内でも沖縄県、東京都多摩地域、神奈川県、愛知県、大阪府など多数の地域でPFASによる地下水汚染が確認されており、住民の血液検査でも基準値を超えるPFAS濃度が検出される事例が相次いでいます。これが各地の自治体・住民を巻き込んだ「PFAS問題」となり、規制強化の社会的要請が一気に高まっていったわけです。
ただし、PFASは1万種類以上が存在する物質群であり、その全てが同等の毒性を持っているわけではありません。フッ素樹脂(PTFE、FEPなど)のように、高分子化されているために体内に蓄積しにくいと考えられているPFASも存在します。このため規制議論では「全PFASを一括規制すべきか、毒性の高い特定物質に限定すべきか」という論点が続いており、半導体業界からは「不可欠用途として一定の使用を継続させてほしい」という声が強く出されています。
1-2. 日本国内の規制 ― 2026年4月から水質基準が「法的義務」に
日本国内では、これまで暫定的な目標値として扱われてきたPFOS・PFOAの合計濃度「50ng/L以下」が、2026年4月1日から水道水質基準として法的義務化される見通しです。これにより、全国の水道事業者には原則3か月に1回以上の定期検査が課せられ、基準を超えた場合は法的に改善措置を取る必要が生じます。
この「50ng/L」という基準値は、水道水1リットルあたり0.00000005グラム(0.05マイクログラム)という極めて微量な濃度であり、検出にも極めて高精度な分析機器が必要です。全国の水道事業者がこの体制を整えるためには、機器導入から技術者育成まで多大なコストが発生します。これだけでも分析機器メーカーや受託分析企業には大きな商機となります。
また水質汚濁防止法においても、PFOSとPFOAは「指定物質」に追加されており、排出事故時の応急措置や行政報告が義務化されました。これにより、PFASを取り扱う製造業者は、漏出事故や排水超過時の対応コストが大幅に増加することになります。
さらに2026年1月には厚生労働省・経済産業省・環境省が共同で、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)と関連物質117種類を化学物質管理法の特定第一種化学物質に指定する省令案を公表しました。施行は2026年6月の予定で、製造・使用が原則禁止になります。これは2023年6月のストックホルム条約締約国会議でPFHxSが規制対象物質に追加されたことを受けたもので、国際的な規制協調の流れの一環でもあります。
2026年PFAS水質基準義務化 完全対応ガイド|水道事業者・自治体向け
2026年4月1日に施行されたPFOS・PFOA水質基準義務化(50ng/L)について、水道事業者・自治体担当者が知るべき
pfasreach.jp
日本は117のPFHxS物質を禁止リストに追加予定、2026年6月施行 | ニュース | ChemRadar
日本はペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)および関連物質を厳格な規制管理下に置きました。
www.chemradar.com
1-3. EUの包括規制 ― 2026年に最終局面、決着は2028年前後
世界で最も注目されているのが、EUによるREACH規則に基づくPFAS包括規制案です。ドイツ、オランダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの5か国が2023年1月にECHA(欧州化学品庁)に提出したもので、約1万4000種類のPFASを規制対象とする極めて広範な内容になっています。
これはREACH規則の歴史の中でも、過去最大規模かつ最も包括的な制限提案であり、文字通り化学業界全体に影響を及ぼす制度設計です。これまで多くの化学物質規制は「物質ごと」に行われてきましたが、本提案では「PFAS全体」をひとまとめにグループとして規制するという、規制哲学そのものの転換が含まれています。
この規制案については、ECHAのリスク評価委員会(RAC)が2026年3月2日に最終意見を採択し、社会経済性分析委員会(SEAC)も同年3月10日に意見書草案で合意しました。SEAC草案については2026年3月26日から5月25日まで第二回パブリックコメントが実施されており、最終意見書は2026年末に欧州委員会に提出される予定です。その後、欧州委員会から制限案が提示され、欧州議会・理事会の協議を経て、最速で2028年頃に官報公布される見通しとなっています。
RACの最終意見では、既存の規制措置だけでは不十分であり、EU全域での追加措置が必要であると結論づけられました。同時にRACは「除外措置を設ける場合でも、排出を最小化するためのリスク管理措置を併せて講じるべき」と勧告しており、具体的にはサイト別のPFAS管理計画、サプライチェーンでの情報伝達、消費者向けラベリング、ECHAへの排出量報告などが挙げられています。
SEAC草案では、「全用途即時禁止」ではなく「用途別の段階的禁止と適用除外」を組み合わせる方向性が示されました。代替品が技術的・経済的に未だ実現可能でない分野については、より長い経過期間を設けるとしており、半導体・電子機器分野はこの「より長い経過期間」が認められる方向で議論が進んでいます。
https://www.echa.europa.eu/-/echa-to-launch-consultation-on-draft-seac-pfas-opinion
有機フッ素化合物(PFAS)規制化の最新動向 | JAIMA 一般社団法人 日本分析機器工業会
一般社団法人日本分析機器工業会(JAIMA)は、分析機器に関する技術の向上と産業の高度化を通じて、科学技術および日本経済の
www.jaima.or.jp
また、SEAC草案では「リスク管理が可能な場合に市場投入や使用継続を認める新たなオプション(RO3)」が、PFAS製造・輸送、電子機器・半導体、エネルギー部門、シーリング用途、機械用途、テクニカルテキスタイル用途などの特定セクターに対して検討されています。これは単純な全面禁止ではなく、産業界の実態に配慮した実務的な落とし所と言えます。
SEAC草案では、半導体やエレクトロニクス分野については「不可欠用途(Essential Use)」として一定の適用除外や経過措置が認められる方向が示されていますが、それでも管理計画の策定、排出量モニタリング、ECHAへの報告などが義務化される見通しです。
1-4. 米国の動き ― 州別の規制が先行
米国では連邦レベルの動きに加えて、州単位の規制が先行しています。メイン州では2030年以降、不可欠用途以外でのPFAS使用を禁止する法律が成立し、ミネソタ州でも段階的全面禁止法案が成立しています。輸出企業にとっては州ごとの規制対応も大きな課題となっており、サプライチェーン管理コストの増加要因になっています。
特に米国では各州が独自に動いているため、企業はカリフォルニア州、ニューヨーク州、ワシントン州、ミネソタ州、メイン州など、それぞれの規制水準と施行時期に合わせた対応が必要になります。グローバル展開する日本の素材メーカーにとっては、規制対応のためのコスト負担が無視できないレベルに達しつつあります。
2025年11月時点で、米国環境保護庁(EPA)のサイトには21州における「PFOA、PFOSおよびその他のPFAS」対応の取り組みが掲載されており、規制の対象も飲料水・環境排出から、カーペット、繊維製品、食品包装、子供向け製品といった消費者向け製品へと広がる傾向が顕著です。
第2章 半導体業界はPFAS規制で「悲鳴」を上げています
2-1. 半導体製造のあらゆる工程にPFASが入り込んでいます
PFASは半導体製造において、フォトレジスト、反射防止膜、ArF液浸用トップコート剤、CMPスラリー、半導体封止材、エッチングガス、洗浄液、装置のOリングやシール材、配管材料など、ほぼ全工程で使用されています。半導体製造装置の中だけでも、テフロン(PTFE)などのフッ素樹脂は耐熱・耐薬品・低摩擦・絶縁といった特性で「万能素材」として長年活躍してきました。
具体的には、半導体製造プロセスの中で以下のような場面でPFASが使われています。フォトリソグラフィー工程ではArF液浸用の撥水ポリマーや光酸発生剤としてPFASが活用され、ナノレベルの微細パターン形成を可能にしています。エッチング工程ではPFCエッチングガス、HFCエッチングガスなど、フッ素を含むガスが不可欠です。洗浄工程ではフッ素系の洗浄液が使われ、CMP(化学機械研磨)工程ではフッ素系界面活性剤を含むスラリーが使用されます。
半導体製造装置側でも、薬液配管はPFAやPTFE樹脂、Oリングやシール材はFFKM(パーフルオロエラストマー)、装置内の冷却液もフッ素系冷媒が使われるなど、装置部品の隅々までPFASが浸透しています。サーバー用の冷却水もPFAS系が一般的で、AI時代のデータセンター冷却ニーズの拡大とともにPFAS需要は増えていく構造でした。
つまり半導体製造は「PFASなしには成り立たない」と言っても過言ではない状況であり、これに対する規制強化は業界にとって極めて深刻なインパクトを持ちます。
PFAS規制の強化で半導体業界から悲鳴、代替品や無害化技術が急務
「PFAS」は、有機フッ素化合物のうち、半導体製造などに使われるペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合
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日経クロステックの記事では、ある半導体関係者が「(輸出規制などの)経済安全保障の問題よりもPFAS対応の方が深刻」と語ったと報じられており、業界内での危機感の強さがうかがえます。
2-2. 「不可欠用途」として除外されるとしても、影響は甚大
EUの規制案では半導体分野が「不可欠用途」として除外される方向ですが、これは「使用してよい」ということではなく、「使用を続けたいなら厳格な管理を行う必要がある」という意味合いです。具体的には、サイトごとのPFAS管理計画、排出モニタリング、サプライチェーン情報の透明化、ECHAへの定期報告などが課されます。
加えて、SEAC草案では用途別に経過措置の期間が個別に設定されています。最大18か月以上の猶予期間が想定されており、一部用途では最大12年の除外期間が提案されているものの、半導体材料各社は今のうちから代替品開発を進めなければなりません。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/76/6/76_260/_pdf/-char/ja
2-3. 規制と増産の「ねじれ」がもたらすチャンス
ここで重要なのが、日本政府は同時並行で半導体産業への巨額支援を続けているという点です。つまり「PFASは減らさなければならない。しかし半導体生産は増やさなければならない」という、一見矛盾する二つの要請が同時に走っているのです。
この「ねじれ」を解消するのが、後述するPFASフリー素材、代替材料、PFAS処理技術といった分野であり、ここに巨大な投資機会が眠っています。
第3章 半導体補助金 ― 2026年度に過去最大の支援が動き出します
3-1. ラピダスへの累計支援額は2.9兆円へ
経済産業省は2025年11月、最先端半導体の量産を目指すラピダスへの政府支援を2026年度〜2027年度に約1兆円追加すると明らかにしました。これにより累計の支援額は2.9兆円規模に膨らみます。2026年度には約6300億円を技術開発補助金として支援するほか、情報処理推進機構(IPA)を通じて1500億円以上を出資する計画です。
ラピダスはトヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、ソフトバンク、キオクシア、デンソー、NEC、三菱UFJ銀行という日本企業8社が出資して設立した会社で、北海道千歳市の工場で2ナノメートル世代の最先端半導体の量産を目指しています。2027年度に2ナノ半導体の量産を開始し、続いて1.4ナノ半導体の量産も視野に入れています。ラピダスは2030年度ごろに営業黒字を達成、2031年度の株式上場を目指す事業計画を経産省に提出済みです。
政府のラピダス支援、1兆円上積み方針 累計2.9兆円に – 日本経済新聞
経済産業省は21日、最先端半導体の量産を目指すラピダスへの政府支援を2026〜27年度に約1兆円追加すると明らかにした。技
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さらに、2026年4月には経産省は富士通や日本IBMのAI半導体設計など3事業に最大約900億円を補助すると発表し、両社が手掛けるAI半導体をラピダスへ製造委託することを後押ししています。これはラピダスの顧客開拓を政府がバックアップするという、製造側と需要側の両面から支援する仕組みになっています。同時にラピダスや東京大学などが参画し、ベルギーの半導体研究機関imecと連携する最先端半導体技術センター(LSTC)が手掛ける後工程の技術開発も支援対象となっています。
富士通・IBMなどに900億円補助、ラピダスの顧客開拓を支援 経産省 – 日本経済新聞
経済産業省は11日、富士通や日本IBMの人工知能(AI)半導体の設計など3事業に最大約900億円を補助すると発表した。両社
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3-2. 「AI・半導体産業基盤強化フレーム」で累計7兆円超
政府が2021〜2026年度の6年間でAI・半導体分野へ投じる支援額は累計7兆円を超える見通しで、2026年度にはソフトバンクや鴻海精密工業の国産AI計画支援を含めて関連予算は1兆円規模を超える見込みです。日本のAI主権を確立する「ソブリンAI」の方針が明確になってきました。
これまでの半導体支援は、TSMCの熊本工場(JASM)に対する累計1兆2080億円の補助金、ラピダスへの累計2.9兆円、その他キオクシア、マイクロン、PSMCなどへの個別支援といった「工場建設・量産支援」に偏っていました。しかし2026年度以降は、ソブリンAI構築のためにAI基盤モデル開発、データセンター建設、AI半導体設計といった「上流」への支援が大幅に増額される見通しです。
これは投資家の視点でも極めて重要な変化です。これまでは「製造装置メーカー」「半導体材料メーカー」が補助金恩恵株とされてきましたが、これからは「AI関連サービス」「データセンター運営」「電力インフラ」といった周辺領域にも資金が流れる可能性が高まっています。半導体業界の「裾野」が一気に広がるイメージです。
3-3. 経済安保推進法による「特定重要物資」の認定が続いています
経済安全保障推進法に基づく半導体関連の「特定重要物資」認定も続いています。希ガス(ネオン、クリプトン、キセノン)の国内生産、ヘリウムの備蓄、リン酸のリサイクルなどが認定対象となっており、それぞれに数十億〜数百億円規模の補助金が交付されています。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/economic_security/semicon/index.html
ラサ工業が手掛ける高純度リン酸のリサイクル事業(2027年4月稼働予定、960トン/年)もこの認定対象に含まれており、約16億円の補助金交付が予定されています。
第4章 「日本版グリーンケミカル革命」のメカニズム
ここまでの整理を踏まえて、私の考える「日本版グリーンケミカル革命」のメカニズムを言語化してみます。
第一に、PFAS規制の強化により、フッ素系素材を使ってきた既存ビジネスは縮小圧力を受けます。これはネガティブな側面です。
第二に、しかし半導体製造、自動車、リチウムイオン電池、医療機器、データセンター冷却など、PFASを使ってきた市場そのものは縮小しません。むしろ拡大基調です。となると、PFASを使わずに同等の性能を実現する「代替素材」への需要が爆発的に増加します。
第三に、既に環境中に拡散してしまったPFASや、工場排水・地下水に含まれるPFASを除去・分解する「処理技術」の市場が立ち上がります。富士経済グループの予測では、2035年には国内のPFAS浄水システム需要は173億円、工場用水処理の民需は88億円規模に達するとされています。世界市場で見ると、PFAS代替化学品市場は2035年に323億米ドル(CAGR11.7%)に達する見込みです。
PFAS処理技術が続々登場、30億米ドル市場へ挑戦 再資源化も加速
PFASの処理技術に対する関心が高まっている。活性炭やイオン交換膜を使ってPFASを吸着・分離して焼却する一般的な手法に
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PFAS代替化学品の市場 | 市場規模 市場動向 予測 2026 – 2035年
世界のPFAS代替化学品市場は、2025年に109億米ドルと評価され、2035年までにCAGR 11.7%で成長し、323
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第四に、半導体補助金により、これら代替素材や処理技術を国内で量産するための設備投資が、補助金で大幅に加速されます。経済安保の観点からも、PFASに依存しない半導体製造体制の構築は国策の中核に位置づけられつつあります。
つまり「規制で需要が生まれ」「補助金で供給が立ち上がる」という、極めてわかりやすい構造が成立しているわけです。これが筆者の言う「日本版グリーンケミカル革命」の正体です。
第5章 注目銘柄5選 ― あまり知られていないが、実力派の企業群
ここからは、PFAS規制×半導体補助金というテーマに本質的に絡む銘柄を5つ厳選してご紹介します。トヨタやNTTのような誰でも知っている銘柄ではなく、個人投資家が「発掘」する楽しみを味わえる中堅・準大手クラスを中心に選びました。
5-1. セントラル硝子(4044) ― 「PFASフリー半導体材料」の本命
ガラス業界3位として知られるセントラル硝子は、実は化成品事業が利益の柱であり、半導体向け電子材料に強みを持つ会社です。同社は2025年2月、半導体露光工程で使うフォトレジスト材料について、PFASを使わない代替品(ArF液浸レジスト用光酸発生剤および撥水ポリマー)を開発したと発表しました。世界的な半導体研究機関であるベルギーimecと2017年から共同開発を進めてきた成果で、まさに10年単位の長期視点で勝負している企業です。
PFAS規制の強化で半導体業界から悲鳴、代替品や無害化技術が急務
「PFAS」は、有機フッ素化合物のうち、半導体製造などに使われるペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合
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半導体ウエハー洗浄工程における回路パターン倒れ防止剤(PK剤)についても非PFAS化に取り組んでおり、フォトレジスト周辺材料を中心にPFASフリー製品ラインナップの拡充を進めています。半導体材料は採用までに時間がかかる代わりに、一度採用されれば長期にわたって安定供給が続くビジネスモデルであり、いち早く代替品を市場投入した企業の競争優位は数年単位で続くのが特徴です。
2026年3月期決算では電子材料事業が8.1%増収となっており、エネルギー材料事業の不振を補ってポートフォリオ変化が進んでいます。自己資本比率も62.5%と財務基盤は良好です。半導体産業の構造的成長と、PFAS規制対応という二つの追い風を同時に受けられるポジションは魅力的です。
注意点としては、化成品事業の中にフッ素系製品も含まれているため、PFAS規制の進行次第では既存事業の縮小と新規事業の立ち上がりのタイミングがずれる可能性があります。中長期視点で同社の事業ポートフォリオがどう変化していくかを継続観察する必要があります。
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5-2. 日本ゼオン(4205) ― ゴム・樹脂のPFAS代替で世界に挑む
日本ゼオンは古河グループの化学メーカーで、合成ゴムと高機能樹脂の世界的なプレーヤーです。同社の合成ゴム「ゼットポール」は、自動車用フッ素ゴムのPFAS代替品として注目されています。さらに、2023年12月にはPFASを含まないリチウムイオン電池の新たな電極製造法を確立したと発表しており、EV・蓄電池分野でもPFAS代替の最前線に立っています。
社名のゼオンはギリシャ語の「ゼオ(大地)」と「エオン(永遠)」の合成語で、「大地の永遠と人類の繁栄に貢献する」という企業理念を持っています。PFASが「永遠の化学物質」として問題視される中、これを代替する材料を作る企業として、ある意味で名前負けしない展開になっています。
同社は2024年12月にAIによる物性予測に秘密計算を活用するなど、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の活用にも積極的で、新素材開発のスピードを大幅に高めています。MIによる候補材料のスクリーニング、物性予測、特許検索、各国法規制の調査による開発ターゲット絞り込みなど、PFAS代替素材の開発に必要なプロセスを高速化する取り組みも進めています。
2026年3月期第3四半期累計では純利益が40.7%増と顕著な伸びを示し、高機能材料事業の好調が業績を牽引しています。同社は大型テレビ向けの高機能フィルム製造ライン増設も発表しており、ディスプレイ市場向けでも事業拡大が続いています。
ROE・ROAは8〜10%水準で推移しており、財務体質も安定しています。テーマ性と財務健全性を兼ね備えた、本テーマの「コア銘柄」と位置づけられる存在です。
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5-3. ラサ工業(4022) ― 高純度リン酸の世界シェア首位、経済安保認定銘柄
ラサ工業は、半導体製造のエッチング工程に使われる高純度リン酸で世界シェア首位(国内シェア5割超)の中堅化学メーカーです。日本、台湾、韓国に製造拠点を持ち、2027年には米国にも新工場が稼働する4か国体制となります。AIブームによる半導体需要拡大が直接の追い風になっており、TSMCも顧客に含まれています。
事業構成は化成品84%、機械10%、電子材料4%、その他2%となっており、半導体向け高純度リン酸が連結売上高の約3分の1を占める主力製品です。海外売上比率は41%に達しており、グローバル展開が進んでいる点も特徴的です。
注目すべきは、経済安全保障推進法に基づく「特定重要物資」として高純度リン酸のリサイクル事業が認定されており、約16億円の補助金交付対象になっている点です。原料の黄リンを全量輸入に頼る中、使用済みリン酸を回収・再生する事業は経済安保上の意義が極めて大きく、政府の手厚い支援を受けながら成長できる稀少な銘柄と言えます。
ラサ工業 (Price Discovery) | Omega Investment (JP)
Buy on Weakness Profile ラサ工業は、半導体向け高純度リン酸を主力とする化成品メーカーであり、凝集
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台湾子会社では約30億円を投じて生産能力を4割増強する計画で、2026年3月期の完工を予定しています。米国では韓国持分法適用会社が2027年前半の完工予定でテキサス州に新工場を建設します。世界各国・地域で半導体関連企業が投資を続ける中、地産地消体制を強化して顧客の供給要請に応える戦略です。
2026年3月期第3四半期は売上高352億円(前年同期比5.5%増)、営業利益45億円(同47.6%増)と大幅な増収増益で、通期予想も上方修正されています。配当も128円へ増配されており、財務面でも株主還元の姿勢が明確です。AI半導体需要の拡大と政府の経済安保支援という二重の追い風を受けており、本テーマの中核銘柄の一つです。
みんかぶ銘柄ページ:
ラサ工業 (4022) : 株価/予想・目標株価 [Rasa Industries] – みんかぶ
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5-4. 室町ケミカル(4885) ― PFAS吸着剤の隠れた専門企業
室町ケミカルは、医薬品原薬の製造販売を主力とする福岡県北九州市の中堅企業ですが、液体処理用イオン交換樹脂事業を併せ持ち、PFAS除去用吸着剤の開発を進めている隠れた専門企業です。東京学芸大学と共同研究契約を締結し、PFAS分析・除去技術の高度化にも取り組んでいます。
注目したいのは、同社が単に「PFAS関連株」というテーマで取り上げられるだけでなく、医薬品原薬という安定収益基盤を持つ会社である点です。テーマ性だけに左右される脆弱な銘柄ではなく、本業が堅実だからこそPFAS関連事業の立ち上がりを「上乗せ」として享受できる構造です。
時価総額が小さい分、PFAS規制関連のニュースに対する株価感応度が非常に高く、テーマ株として注目されやすい銘柄です。実際、過去にもPFAS関連ニュースが報じられた際にストップ高となった経緯があり、本記事執筆時点でも直近の決算上方修正を受けてストップ高で終えた日があります。
2026年5月期第3四半期累計では売上高56.51億円(前年同期比16.8%増)、営業利益5.46億円(同59.1%増)と大幅増益となっており、半導体関連需要の拡大と原薬需要の増加が成長を牽引しています。通期予想も上方修正・増配が決定済みです。
注意点としては、時価総額が小さいため出来高が薄い局面では値動きが極端になりやすく、流動性リスクがある点です。短期的なテーマ株として狙う場合は、利確と損切りのルールを明確にしておくことが特に重要です。
みんかぶ銘柄ページ:
室町ケミカル (4885) : 株価/予想・目標株価 [MUROMACHI CHEMICALS] – みんかぶ
室町ケミカル (4885) 今日の株価、予想(AI株価診断など)、チャート推移、ニュース、その他にも今後の見通しや買い時・
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5-5. 応用地質(9755) ― PFAS地下水汚染対策のパイオニア
応用地質は地質調査の最大手で、PFASによる地下水汚染への対策支援サービスを手掛けています。沖縄県内でPFAS汚染水の浄化実証試験を実施し、国の暫定指針値の12倍にあたる634ng/Lの汚染水を40分間で1ng/L以下まで浄化処理することに成功した実績があります。
同社は防災・インフラ事業と環境・エネルギー事業の二本柱で展開しており、PFAS対策はその中でも成長性の高い領域です。日本各地でPFAS汚染が発覚するたびに、自治体や水道事業者からの調査・対策の引き合いが増加する構造になっており、2026年4月からの水道水質基準義務化はこの動きをさらに加速させると見込まれます。
PFAS汚染が発覚した地域では、まず実態調査(土壌・地下水の汚染範囲確認)が必要となり、次に対策計画の策定、最後に浄化処理という一連の業務が発生します。応用地質は地質調査のノウハウを活かしてこの全工程に対応できる点が強みです。
2025年12月期は売上高762億円(前期比3.0%増)と堅調で、財務体質の改善も着実に進んでいます。自己資本比率は高水準で推移しており、キャッシュフローも大幅に改善しています。
「PFASフリー素材」「PFAS処理装置」とは別の角度から、「汚染地の調査と浄化」というニッチ領域で確固たる地位を築いているのが特徴です。同テーマの中で異色の組み合わせとして、ポートフォリオに加える価値があると考えます。
注意点としては、同社は本業として防災インフラ事業の比率が高いため、PFAS関連事業の貢献度はまだ全体の中では限定的という現実があります。テーマ性で短期的に評価される側面と、業績の実態が見合うかどうかは継続的に確認する必要があります。
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応用地質 (9755) : 株価/予想・目標株価 [OYO] – みんかぶ
応用地質 (9755) 今日の株価、予想(AI株価診断など)、チャート推移、ニュース、その他にも今後の見通しや買い時・売り
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第6章 関連テーマ ― 周辺領域でも投資機会が広がっています
6-1. 水処理・分析機器分野
PFAS分析や除去には超純水製造装置や分析機器が不可欠で、超純水の大手であるオルガノ(6368)や栗田工業(6370)、分析機器の島津製作所、日東精工アナリテックを擁する日東精工(5957)も関連銘柄として注目されています。特に日東精工は2020年に三菱ケミカルアナリテックを買収して分析事業を強化しており、PFAS分析機器を提供している点が地味ながら見逃せません。
オルガノが手掛ける超純水製造装置は、PFAS分析の試料調整に必要な「分析対象物質を含まない高純度水」を提供するためのキーとなる装置です。半導体製造の前工程でも超純水は不可欠であり、PFAS規制対応と半導体投資の両方の追い風を受けるポジションにいます。栗田工業も同様に、半導体製造向け超純水とPFAS除去用の水処理装置で実績があります。
水処理装置メーカーの中では、流機エンジニアリングという未上場企業も注目されます。同社の「ECOクリーンLFP」はPFASに対して99.997%という極めて高い除去率を実現しており、国内メーカーとして初めて公園内の湧水浄化に採用された実績があります。今後、上場すればテーマ株として注目を集める可能性があります。
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6-2. 半導体材料の大手・準大手
半導体後工程材料で世界トップシェアを持つレゾナック・ホールディングス(4004)も、PFAS規制対応では先行している企業です。同社はPFAS代替素材の開発企業として富士経済グループの調査でも名前が挙がっており、フッ素フリー素材の供給体制構築を進めています。2025年12月期は減損計上の影響で減益となりましたが、2026年12月期は半導体関連事業の成長とケミカル事業の回復で増益見通しです。
DIC(4631)はPFASフリーの界面活性剤「MEGAFACE EFSシリーズ」を開発し、2024年に「半導体・オブ・ザ・イヤー2024」半導体用電子材料部門で優秀賞を受賞しました。フッ素系製品と同等以上の表面張力低下能を持つPFASフリー界面活性剤は世界的にも数少なく、独自の競争力を持っています。2025年12月期は売上高微減ながら営業利益17.2%増、純利益51.8%増と大幅増益を達成しており、構造改革の成果が顕著に表れています。
PFASフリー界面活性剤が「半導体・オブ・ザ・イヤー2024」半導体用電子材料部門で優秀賞受賞 | ニュース 2024年 | DIC株式会社
DIC(旧 大日本インキ化学工業)2024年のニュース「PFASフリー界面活性剤が「半導体・オブ・ザ・イヤー2024」半導
www.dic-global.com
三菱ケミカルグループも、2023年9月にPFASフリーで高難燃性のポリカーボネート樹脂「XANTAR XFシリーズ」を発表しています。電子部品の軽量化・省スペース化に貢献する高付加価値素材で、PFAS代替の高機能エンジニアリングプラスチック分野の有力銘柄です。
6-3. PFASフリーフィルム・包装材
東レ(3402)は2024年5月にPFAS不使用の半導体製造工程用フィルム(ポリエステル樹脂製の封止フィルム)を発表し、すでに販売を始めています。2030年に売上高で40億円を目指す事業計画で、AI向けなど先端半導体製造での採用拡大が期待されます。さらに東レは水素製造に使う電解質膜について、PFASを含まない炭化水素系の電解質膜の開発も進めており、グリーン水素時代に向けた布石も打っています。
クレハ(4023)はフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)の大手として、リチウムイオン電池バインダー材として世界的な注目を集めてきた企業です。ただしEV市場の停滞により2026年3月期は減損計上を余儀なくされており、業績の足元は厳しい状況ですが、2027年3月期は増収増益を見込んでいます。PFAS規制の影響を最も受けやすい銘柄であると同時に、技術ポジションも高いという両面性のある投資対象です。
6-4. 防災・消火薬剤関連
PFASは長らく泡消火薬剤の主成分として使われてきたため、防災機器メーカーもPFAS規制の影響を受けます。火災報知器・消火設備大手のホーチキは、2024年2月にPFASを含まない環境配慮型の泡消火薬剤を開発したと発表しており、業界の脱PFASをリードする存在です。高発泡消火設備「Perf-Ex」用として開発され、PFAS非含有でも高い発泡性能と消火性能を実現しています。
6-5. PFAS分解・無害化技術
クレハやセントラル硝子のような大手だけでなく、無害化技術を開発する新興企業も注目されています。クレハは米国のオン株式会社(Oxby)と共同開発契約を結び、PFASを吸着して二酸化炭素やフッ素などに変換する無害化プロセスの開発を進めています。「PFASを集めて燃やす」だけでなく「化学的に分解する」技術が確立されれば、汚染地浄化のコストを大幅に下げることができ、社会的なインパクトも大きいでしょう。
第7章 投資戦略の組み立て方 ― 個人投資家として何をすべきか
7-1. テーマ全体ではなく「機能」で分解する
「PFAS関連株」と一括りにしても、実は中身は大きく分かれています。投資判断をするうえでは、以下のような機能別の分類を意識すると整理しやすくなります。
第一に「代替素材を作る企業」です。これにはセントラル硝子、日本ゼオン、DIC、東レ、レゾナックなどが該当します。技術開発に時間がかかるものの、成功すれば長期的に高い参入障壁を築けます。
第二に「分析・検査を担う企業」です。PFAS規制で需要が増える分野で、日東精工や島津製作所、応用地質などが該当します。規制施行のタイミングに合わせて確実に需要が立ち上がります。
第三に「除去・浄化を担う企業」です。栗田工業、オルガノ、室町ケミカル、流機エンジニアリングなどが含まれます。
第四に「PFAS依存度が高く、規制の逆風を受ける可能性のある企業」です。ダイキン工業や旭硝子グループのフッ素化学事業、クレハのPVDFなどが該当します。ここは銘柄選定を間違えるとマイナスのインパクトを受けかねないので注意が必要です。
7-2. 補助金の流れを「タイムライン」で読む
半導体補助金や経済安保認定は、いつ・誰に・いくら出るかが事前にある程度公表されます。経済産業省の半導体政策ページやプレスリリースを定期的にチェックすることで、新たな認定が出る前にポジションを取ることができる可能性があります。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/economic_security/semicon/index.html
また、EU規制についてはECHAの公式サイトでスケジュールが詳細に公表されており、2026年末の最終意見書提出、欧州委員会の制限案提示、欧州議会・理事会の協議といった節目ごとに材料が出る可能性があります。
https://echa.europa.eu/-/highlights-from-december-2025-rac-and-seac-meetings
7-3. テーマ株の「波」を意識する
PFAS関連株は、過去にも規制関連ニュースが報じられるたびに大きく動意づいてきた経緯があります。例えば室町ケミカルや応用地質、流機エンジニアリングといった時価総額の小さい銘柄は、ニュース発表時に短期間で大きく株価が変動することが珍しくありません。
このため、テーマ株としての値動きを取りに行く短期投資と、技術競争力で長期的に勝てる企業を選別する長期投資を明確に分けて考えることが重要です。短期戦略では時価総額の小さいPFAS処理関連銘柄を、長期戦略では半導体材料のPFASフリー化に本気で取り組んでいる中堅化学メーカーを、というように使い分けるのが現実的でしょう。
7-4. リスク要因も冷静に見ておく
このテーマには明確なリスクもあります。まず、EUのPFAS規制案は最終決定までまだ時間がかかり、半導体分野が「不可欠用途」として広く除外される可能性も残されています。その場合、思ったほど代替素材への移行が進まず、代替品ビジネスの立ち上がりが遅れる可能性があります。
PFAS規制と半導体産業:脱テフロンの難しさと代替素材の可能性 | 株式会社フジワラケミカルエンジニアリング
PFAS規制が半導体産業に影響を与え、テフロン代替が課題となっています。PFAやETFE、PEEKなどの新素材による脱フッ
fuji-chemicaleng.co.jp
また、半導体補助金についても、ラピダスの量産立ち上げが計画通りに進むかは不透明で、政治的な情勢変化によって支援額の見直しが行われる可能性もゼロではありません。野村総合研究所のレポートでも、安易な公的支援が事業失敗のリスクを高め、国民負担増となる懸念が指摘されています。
ラピダス支援を念頭に政府は10兆円の半導体・AI支援を決定:安易な支援がむしろ事業失敗のリスクを高め、国民負担増とならないよう慎重な対応が求められる
www.nri.com
さらに、PFAS代替素材の開発には数年から十年単位の時間がかかるため、研究開発費の負担が先行して業績を圧迫するリスクもあります。化学メーカーの研究開発投資は通常、売上高の5〜8%程度ですが、PFAS代替素材のような長期テーマでは、これに加えて追加投資が必要になります。結果として短期的には利益率が低下する可能性があるため、決算発表時のガイダンスや中期経営計画を丁寧に読み込む必要があります。
また、テーマ株特有のリスクとして「材料出尽くし」も意識すべきです。PFAS関連株は2024年から2025年にかけて何度か大きく動意づきましたが、その後の調整局面では半値になる銘柄もありました。テーマが浸透すれば、新しいニュースが出ても株価が反応しにくくなる「織り込み済み」の段階に入ることもあります。
投資家としては、これらのリスクを認識したうえで、過度な集中投資を避け、複数のポジションを組み合わせていくことが望ましいと考えます。
7-5. 長期投資と短期投資の使い分け
本テーマは10年単位で進行する構造変化であり、本来は長期投資に適したテーマです。一方で個別銘柄の値動きは規制ニュースや決算発表によって短期的に大きく振れます。
この特性を考慮すると、ポートフォリオの一定割合(例えば全体の10〜20%)を本テーマ関連銘柄に配分し、その中で「コア銘柄(中長期保有)」と「サテライト銘柄(短期回転)」を分けて運用するのが現実的だと思います。コア銘柄としてはセントラル硝子、日本ゼオン、ラサ工業のように財務健全性と技術競争力を兼ね備えた中堅化学メーカー、サテライト銘柄としては室町ケミカルや応用地質のようにテーマ性が強く値動きの大きい銘柄、というイメージです。
第8章 マクロ視点 ― 「日本版グリーンケミカル革命」の射程
8-1. 化学産業の競争軸が変わります
これまで日本の化学産業は、製品の品質や信頼性、コスト競争力で勝負してきました。しかしPFAS規制を契機に、「環境負荷の少ない素材を、半導体級の品質で、安定的に供給できるか」という新しい競争軸が前面に出てきます。これは欧米の競合に対して必ずしも不利な軸ではなく、むしろ品質管理に強みを持つ日本企業が再評価される可能性を秘めています。
脱PFAS相次ぐ半導体材料、規制で加速する代替品開発
有機フッ素化合物(PFAS)の世界的な規制の強化が、新たな事業機会を創出している。様々な分野でPFASを含まない(PFA
xtech.nikkei.com
8-2. データセンター冷却・水素・LIBバインダーへの波及
PFAS規制の影響はさらに広範囲に及びます。データセンターの冷却液、燃料電池の電解質膜、リチウムイオン電池のバインダー、医療機器のチューブ、半導体製造装置のシール材など、それぞれの分野で代替品の開発競争が始まっています。グリーン水素やデータセンターといった成長テーマと密接に絡む点も、本テーマの懐の深さを物語っています。
8-3. 国際的にも「日本の出番」になる可能性
EU規制が施行されると、欧州の化学メーカーも代替素材を求めることになります。日本企業がいち早く代替品を市場投入できれば、欧州市場への輸出が拡大する可能性があります。グローバルなサプライチェーンの中で日本が果たす役割が大きくなる契機にもなりえます。
PFASフリーに商機あり、自動車や日用品にも代替品開発の波
材料・加工技術の発達が、規制強化が進む有機フッ素化合物(PFAS)の代替を後押ししている。自動車業界では一部のメーカーで
xtech.nikkei.com
8-4. グリーンサステナブル半導体製造の潮流
半導体業界全体としても、Appleの2030年カーボンニュートラル宣言を契機に、SEMIや産業技術総合研究所が「グリーンサステナブル半導体製造技術」の共通指標づくりを進めています。PFAS規制対応は、この大きな潮流の一部として位置づけられており、長期的な構造変化として捉えるべきテーマと言えます。
第9章 投資家としての心構え ― 「テーマ」と「企業価値」の見極め
9-1. テーマだけで買わない、企業価値も見る
PFAS関連株は短期的にニュースで値動きが激しくなりがちですが、本当に長期的に成長できるのは「技術的優位性」「財務健全性」「経営の継続性」を兼ね備えた企業に限られます。決算短信や有価証券報告書を読み込み、PFAS関連事業が全体に占める比率、研究開発費の規模、特許出願状況などを確認することをお勧めします。
ヤフーファイナンスや会社四季報、みんかぶといった情報サイトを活用すれば、決算AI要約や同業他社比較が手軽に確認できますので、銘柄選定の初期段階で大いに役立つはずです。
Yahoo!ファイナンス – 株価・最新ニュース
リアルタイム株価、最新ニュース、株式掲示板などを提供する、投資やマネーの総合情報サイトです。株価指数、外国為替相場、日本株
finance.yahoo.co.jp
9-2. 政府の発信を直接チェックする
経済産業省、環境省、厚生労働省の公式発表は、テーマ株投資において一次情報として極めて重要です。特に半導体関連の補助金認定や、PFAS関連の省令改正は、報道よりも先に公式サイトで公表されることが多いため、習慣的にチェックすることをお勧めします。
トップ
環境省のホームページです。環境省の政策、報道発表、審議会、所管法令、環境白書、各種手続などの情報を掲載しています。
www.env.go.jp
9-3. 海外規制の動向を見逃さない
日本市場の投資家にとっても、EUのECHAやアメリカのEPAの動向は無視できません。特にECHAは2026年に最終意見書を取りまとめる予定で、ここからの数か月は半導体・化学業界にとって最も重要な期間になります。英語情報ではありますが、ECHAのプレスリリースは定期的にチェックしておく価値があります。
9-4. テーマ株ランキングや関連株情報も活用する
みんかぶの「PFAS対策」テーマページでは、関連銘柄が一覧で整理されており、市場の注目度合いを把握するのに便利です。新興銘柄やテーマ株の出遅れ銘柄を発掘する際の出発点として活用できます。
【PFAS対策】が株式テーマの銘柄一覧 – みんかぶ
株式テーマ「PFAS対策」に関連する銘柄一覧です。このテーマに関連する24銘柄の株価、前日比、関連度を掲載しています。有機
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9-5. 半導体業界の専門メディアも要チェック
半導体業界の専門メディア、特に日経クロステックやSEMIの発信は、技術トレンドと規制動向を同時に追えるため、投資判断の材料として非常に有用です。とりわけPFAS規制と半導体産業の関係性については、SEMIが発行している解説資料が業界全体の現状を把握するのに最適です。
https://www.semi.org/jp/ehs_PFAS/PFAS_in_Semiconductor_Mfg
第10章 2026年下半期に向けて ― 押さえておくべきイベント
最後に、2026年下半期に向けて押さえておくべき主要イベントを整理しておきます。
第一に、2026年5月25日にEUのSEACパブリックコメントが締め切られます。これを受けてSEACが最終意見書をまとめ、年末までに欧州委員会に提出されます。半導体や電子機器分野の経過措置がどのように決まるかが焦点となります。
第二に、2026年6月にPFHxSと関連物質117種類の国内規制が施行される見通しです。これにより国内のPFAS関連企業の事業環境は一段と厳しくなります。
第三に、2026年度後半に向けて、経済安全保障推進法に基づく追加の「特定重要物資」認定が行われる可能性があります。半導体材料・装置分野での新たな認定銘柄が出てくれば、株価への影響は大きいでしょう。
第四に、ラピダスの量産開始時期(2027年)を意識した投資資金の流入が続く見通しです。半導体製造装置・材料メーカーは、年度後半に向けて受注動向に注目が集まります。
第五に、各企業の2026年度中間決算(11月発表)の内容次第で、PFAS代替素材ビジネスの実態が明らかになっていきます。決算説明資料を読み込むことで、各社の取り組みの本気度を判断する材料が得られるはずです。
おわりに ― 「規制」は「機会」の母である
本記事では「PFAS規制と半導体補助金が引き起こす日本版グリーンケミカル革命」というテーマで、規制の最新動向、政策の中身、関連市場、注目銘柄、投資戦略まで幅広く解説してきました。
規制強化というと、どうしてもネガティブなイメージが先行しがちですが、実はこれまでにも規制が新しい産業を生み出した例は数多くあります。自動車の排ガス規制が触媒メーカーを育てたように、PFAS規制は次世代の素材メーカーを育てる可能性を秘めています。脱炭素規制がEV関連株の上昇を生み出したように、脱PFAS規制は次のグリーンケミカル銘柄群の上昇を生み出す可能性があります。
ましてや日本では半導体補助金という強力な追い風が同時に吹いており、「規制で需要が生まれ、補助金で供給が立ち上がる」という極めて投資家フレンドリーな構造が成立しています。トヨタやNTTのような誰でも知っている銘柄ではなく、セントラル硝子、日本ゼオン、ラサ工業、室町ケミカル、応用地質のような中堅・準大手の中に、これからの主役候補が眠っているはずです。
2026年下半期は、こうした「次の主役」を発掘するための絶好のタイミングです。本記事が、皆さまの銘柄発掘の参考になりましたら望外の喜びです。投資は最終的には自己責任ですが、丁寧な情報収集と論理的な分析を積み重ねることで、勝率を高めることは十分に可能です。
最後に、本記事で取り上げた銘柄や情報源は、執筆時点での情報をもとに整理したものです。投資判断にあたっては、必ず最新の情報をご自身で確認していただき、企業のIR資料、決算短信、有価証券報告書などにも目を通したうえで、複数の情報を照らし合わせて判断するようにしてください。テーマ株はトレンドが急変することもあり、規制動向や政府の政策変更にも常に目を配る必要があります。
最後までお読みいただきありがとうございました。良い投資ライフを送られることを願っております。
(本記事は投資勧誘や特定銘柄の推奨を目的としたものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください)

| 銘柄コード | テーマ関連性 | 備考 |
|---|---|---|
| 4044 | PFAS規制と半導体補助金が引き起こす「日本版グリーンケミカ関連 | 本記事で言及 |
| 4205 | PFAS規制と半導体補助金が引き起こす「日本版グリーンケミカ関連 | 本記事で言及 |
| 4022 | PFAS規制と半導体補助金が引き起こす「日本版グリーンケミカ関連 | 本記事で言及 |
| 4885 | PFAS規制と半導体補助金が引き起こす「日本版グリーンケミカ関連 | 本記事で言及 |
| 9755 | PFAS規制と半導体補助金が引き起こす「日本版グリーンケミカ関連 | 本記事で言及 |
| 6368 | PFAS規制と半導体補助金が引き起こす「日本版グリーンケミカ関連 | 本記事で言及 |



















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