- 「食はディフェンシブ」という思い込みから始めましょう
- 外食株が売られるカラクリ①:増収の正体は「値上げ」だった
- 外食株が売られるカラクリ②:原価・人件費・光熱費・家賃の四重苦
- 外食株が売られるカラクリ③:最後の値上げに踏み切れない
「食べ物に関する会社は、不景気でも強い」。投資を始めて間もない頃に、一度はこう教わった方が多いのではないでしょうか。人は不況でもご飯を食べます。だから食品や外食は景気に左右されにくい、いわゆるディフェンシブ銘柄だ、という説明です。
ところが、実際の株式市場をのぞいてみると、この「常識」はきれいに半分だけ裏切られます。同じ「食」というくくりの中で、株価が右肩上がりに評価される会社と、業績は決して悪くないのに株価がさえない会社とに、はっきりと明暗が分かれているのです。とくに外食企業の株は、売上が過去最高圏を更新しているのに、なぜか買われない――そんな場面が珍しくありません。
この記事では、「食はディフェンシブだから安心」という思い込みがなぜ外食株では通用しないのか、その意外なカラクリを五つに分けて丁寧に解きほぐしていきます。そのうえで、同じ「食」の中で投資家のお金がどこへ向かっているのか、決算書のどこを見れば明暗を見分けられるのか、そして発掘して楽しい関連銘柄を五つご紹介します。あまり名前を聞かない会社ばかりを選んでいますので、銘柄探しのヒントにしていただければうれしいです。
ひとつだけ先に、象徴的な対比を示しておきます。この数年、外食企業の多くがコスト高に苦しみ、値上げで何とか売上を保つ防戦を強いられてきました。その同じ時期に、コンビニの棚に並ぶおにぎりや弁当を裏で作っている、ある食品メーカーの株価は、半年ほどで一・八倍になったと報じられました。私たちが毎日のように手に取る食べ物の世界で、これほど明暗が分かれている。その理由を知っておくことは、投資家にとって大きな武器になります。それでは本題に入りましょう。
「食はディフェンシブ」という思い込みから始めましょう
ディフェンシブ銘柄という言葉は、景気が悪くなっても需要が大きく減らない業種を指します。電気・ガス・水道、医薬品、生活必需品などが代表例で、食品もそこに含めて語られることが多い分野です。
確かに、食そのものへの需要は景気に対して鈍感です。リーマンショックでもコロナ禍でも、人々が食事の回数を半分にしたわけではありません。問題は、「食への需要が減らないこと」と「食関連企業の利益が減らないこと」は、まったく別の話だという点にあります。
需要が安定していても、その需要を奪い合うプレーヤーは食品メーカー、卸、スーパー、コンビニ、そして外食と幅広く存在します。同じ一万円の食費でも、それが家で作る食材に向かうのか、スーパーの惣菜に向かうのか、コンビニ弁当に向かうのか、レストランでの食事に向かうのかで、潤う会社はまったく変わります。さらに、原材料や人件費といったコストの上がり方も、業態によって受ける打撃の大きさが違います。
つまり「食」という大きな箱の中では、需要が安定しているからこそ、限られたパイの取り合いと、コスト負担の押し付け合いが静かに進んでいます。外食株が売られるカラクリは、この「箱の中の力関係」を理解すると、すっきり見えてきます。順番に見ていきましょう。
外食株が売られるカラクリ①:増収の正体は「値上げ」だった
まず押さえておきたいのは、外食産業の売上そのものは、見出しの数字だけ見るととても好調だという事実です。
日本フードサービス協会がまとめている外食産業市場動向調査によると、外食全体の売上は長期にわたって前年同月を上回り続けています。たとえば二〇二五年十一月度の全店売上は前年同月比でおよそ一〇八・七%となり、前年比プラスは四十八か月連続に達しました。数字だけ見れば、まさに絶好調です。
二〇二五年の年間動向を伝える協会の資料は、このプレスリリースで確認できます。
https://www.jfnet.or.jp/wp/wp-content/uploads/2026/01/nenkandata-2025.pdf
ところが、ここに最初のカラクリが潜んでいます。協会の分析では、二〇二五年の売上を押し上げた主役は「客単価の上昇」で、その伸びはおよそ一〇四・三%とされています。値上げによって一人あたりの支払額が増えたことが、売上全体をかさ上げしている構図です。そして同じ資料は、客数については前年を上回れない企業が出てきていると指摘しています。来店客数という、いわば実際の需要そのものは、もう力強くは伸びていないのです。
四十八か月連続増という景気のよい見出しの裏側を読み解いた記事も参考になります。
2026年4月度外食産業売上プラス8.0%…53か月連続の前年比プラス : ガベージニュース
日本フードサービス協会は2026年5月25日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、
garbagenews.net
ここで投資家として立ち止まりたいのは、「増収」という言葉の中身です。同じ前年比プラス八%でも、客数が八%増えて達成した八%増と、値上げによる客単価上昇で達成した八%増とでは、意味がまったく違います。前者は事業が広がっている証拠ですが、後者は値上げで何とか前年並みの客数を維持し、見かけの売上だけを膨らませている可能性があります。
もうひとつ、協会の調査を読むときに知っておきたいのが、全店データと既存店データの違いです。協会が公表しているのは、新しく開いた店も含めた全店ベースの数字です。新規出店が多ければ、それだけで売上は前年を上回ります。しかし投資家が会社の本当の体力を測りたいときに見るべきなのは、新規出店ぶんを除いた既存店の売上です。前からある店だけで前年を超えているか、その中でも客数が伸びているのか、それとも値上げで何とか保っているのか。同じ「増収」でも、ここまで分解して初めて意味がわかります。
外食企業の決算で「過去最高売上」という見出しが出ても、その内訳が客単価頼みで、客数は横ばいか微減であれば、市場はそれを成長とは評価しません。むしろ「値上げの限界が来たら、売上はすぐに頭打ちになる」と警戒します。これが、好調な売上のわりに外食株が買われにくい、第一のカラクリです。見出しの数字に安心せず、その一段下の客数までのぞき込む癖をつけると、外食株の評価が市場の目線に近づいていきます。
外食株が売られるカラクリ②:原価・人件費・光熱費・家賃の四重苦
第二のカラクリは、コスト構造です。外食はコストの上昇に対して、業態の中でもとりわけ打たれ弱い構造を持っています。
外食の費用は、大きく分けて食材の原価、人件費、水道光熱費、そして店舗の家賃という四つの柱でできています。近年は、この四本柱がそろって重くなる「四重苦」とも言える状況が続いてきました。
食材については、円安と世界的な原料高が長く重しになりました。帝国データバンクの食品主要各社を対象にした価格改定調査によると、値上げ要因はここ数年、原材料の高騰など「モノ由来」のコストが圧倒的な比率を占め続けています。最新の調査では、二〇二六年の値上げ要因のうち原材料高がおよそ九九・七%を占めると報告されています。
詳しい調査結果は帝国データバンクのレポートで確認できます。
「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2025年12月/2026年|株式会社 帝国データバンク[TDB]
帝国データバンクによる、注目の経済・経営トピックに関するレポートです。国内83拠点の調査網、国内最大級の企業データベース、
www.tdb.co.jp
二〇二六年に向けては値上げ品目数そのものは前年より大きく減るペースとされていますが、それは値上げ圧力が消えたからではなく、消費者の値上げ疲れが強まり、これ以上の一斉値上げが難しくなってきたことの裏返しでもあります。食品メーカーですらこうなのですから、最終消費者と直接向き合う外食は、なおさらコストを価格へ反映しづらい立場にあります。
人件費はさらに深刻です。二〇二五年度の地域別最低賃金は、全国加重平均でおよそ千百二十一円となり、前年度から六十六円、率にしておよそ六%の引き上げとなりました。これは現行方式になってからの過去最大の上げ幅で、しかも全都道府県で初めて時給千円を突破しました。
最低賃金引き上げの背景と企業への影響については、マイナビの調査レポートを基にした解説が分かりやすいです。
企業視点の2025年度最低賃金改定-賃上げ負担と今後の対応- | マイナビキャリアリサーチLab
2025年度の最低賃金が各都道府県で順次発効されている。かつてないペースで上昇する賃金水準に対して、企業はどのように受け止
career-research.mynavi.jp
最低賃金の推移という大きな流れは、中小企業庁の白書でも確認できます。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/chusho/b1_1_7.html
外食はパートやアルバイトに支えられた労働集約型のビジネスです。最低賃金の大幅な引き上げは、人件費の直接的な増加に加えて、人材獲得競争の激化という二重の負担になります。実際、最低賃金の引き上げが飲食業界の経営戦略の練り直しを迫っているという指摘もあります。
飲食店が最低賃金の上昇にどう備えるかを論じた記事も参考にしてください。
2025年度の最低賃金、全国平均時給は1,118円。過去最大の上げ幅に、飲食店はどう備えるか
過去最大の上げ幅となった2025年度の最低賃金。全国平均時給は1,118円に達した。今回の引き上げの背景と共に、飲食店への
www.inshokuten.com
食材の中でもとくに外食を苦しめたのが、主食であるコメの価格上昇です。牛丼や寿司、定食、ラーメンといった業態は、コメの値段が直接コストに響きます。コメや牛肉といった主要食材の高値が長引いていることを値上げの理由に挙げる外食企業も増えました。米飯はメニューの中心であるだけに、ここが上がると逃げ場がありません。為替も重しでした。円相場が一ドル百五十円前後で推移する局面が続き、輸入に頼る食材や包装資材、燃料のコストを押し上げてきました。水道光熱費の高止まりも、厨房を長時間動かす外食には効いてきます。
人件費の重さは、時系列で見るといっそうはっきりします。地域別最低賃金の全国加重平均は、二〇二四年度がおよそ千五十五円、率にしておよそ五%の引き上げでした。それが二〇二五年度にはおよそ千百二十一円へと、過去最大の上げ幅で引き上げられました。さらに政府は、二〇二〇年代のうちに全国平均で千五百円を目指す方針を掲げています。到達時期は経済状況によって前後しますが、賃金が一段ずつ階段を上がっていくこと自体は、もはや前提になりつつあります。労働集約型の外食にとって、これは毎年のように人件費が押し上げられ続けることを意味します。
加えて、外食は人手不足が全業種の中でも上位に位置し続けている業界です。人手が足りなければ営業時間を短くせざるを得ず、せっかくの来店機会を逃します。原価が上がり、時給が上がり、光熱費が上がり、人も採れない。この四重苦が利益率をじわじわと削るのが、第二のカラクリです。食への需要が安定していても、利益が安定するとは限らない、という冒頭の話が、ここで具体的な数字になって表れます。
この四重苦は、体力の弱い企業から順に、廃業や倒産という形で表に出てきます。売上自体は業界全体で前年を上回り続けているのに、その内側ではコストを吸収しきれない店が静かに姿を消し、経営の体力差が広がっています。人手不足の深刻さは全業種の中でも上位が続き、人材確保や生産性向上のための事業の譲渡や統合の動きも活発になっています。市場全体が堅調という見出しの裏で、勝ち残れる企業とそうでない企業の選別が進んでいるのです。投資家がひとくくりに「外食は好調」と判断できない理由が、ここにもあります。飲食業界の人手不足や原価高騰、再編の動向をまとめた解説も参考になります。
【最新版】飲食店M&Aが急増中|人手不足と原価高騰を乗り越える“譲渡・売却”戦略 | M&A・事業承継なら「たすきコンサルティング」
人手不足、原材料費の高騰、そして経営者の高齢化。2025年の飲食業界は、かつてない構造的課題に直面しています。帝国データバ
www.tasuki.pro
外食株が売られるカラクリ③:最後の値上げに踏み切れない
第三のカラクリは、価格転嫁の難しさです。コストが上がったぶんを価格に乗せられれば、利益率は守れます。ところが外食は、その「最後の一押し」が構造的にやりにくいのです。
理由はいくつかあります。まず、外食のメニュー価格は、お客さんの頭の中に強く刻まれています。いつもの牛丼が四百円台なのか五百円なのか、定食が八百円なのか千円を超えるのか。こうした価格は来店動機に直結するため、少し上げただけで足が遠のく心理的なハードルが高いのです。
外食の値上げが客足にどう影響しているかを業種別に整理した解説が参考になります。
相次ぐ外食の値上げ 何が上がっている?顧客離れへの影響は? | 知る-コラム | Money Canvas(マネーキャンバス) 三菱UFJ銀行
原材料や人件費、光熱費の高騰が続く中、外食産業では相次ぐ値上げが進行しています。 ハンバーガーや牛丼、ラーメン、ファミリ
moneycanvas.bk.mufg.jp
次に、競争の激しさです。同じ駅前に似たような価格帯の店が何軒も並んでいると、一社だけ値上げに踏み切るのは勇気が要ります。価格を据え置いた競合に客が流れるリスクがあるからです。地域相場や近隣店とのバランスを気にして値上げに踏み切れない、という事情は、実は大手チェーンでも中小店でも変わりません。
そして三つめが、消費者の値上げ疲れです。物価高に賃金の伸びが追いつかない局面では、消費者は値上げに対して敏感になります。値上げ後に購入点数や来店頻度が落ちたり、より安い選択肢へ乗り換えたりする動きが強まります。食品全体でこの傾向が強まっていることは、二〇二六年の値上げ動向を分析した記事でも触れられています。
2026年も値上げは続く?食品値上げ動向と家計への影響 ‣ 福利厚生研究所
2025年に相次いだ飲食料品の値上げを受け、2026年の動向を解説。値上げ予定品目や背景、家計への影響を整理し、生活者・企
www.shinko-jp.com
このため外食企業は、値上げを小刻みにしたり、看板商品の価格は据え置いて目立たないサイドメニューだけ上げたり、量を少し減らして実質的に値上げしたりと、苦心を重ねています。価格を変えずに内容量を減らす手法は、しばしばステルス値上げやシュリンクフレーションと呼ばれます。値札の数字を据え置くことで値ごろ感を守りつつ、実質的にはコスト増を吸収する苦肉の策です。けれども、こうした工夫にも限界があります。盛りが減ったことに客が気づけば、満足度が下がって足が遠のくおそれがあるからです。
ここで意識したいのが、消費者の頭の中にある値ごろ感という見えない壁です。ワンコインで食べられるかどうか、千円を超えるかどうかといった心理的な節目を越えると、たとえ数十円の差でも来店をためらう人が増えます。外食の価格は、単なるコストの足し算では決められず、この節目をにらみながら設定せざるを得ません。だからこそ、コストが節目を押し上げても、価格はその手前で踏みとどまろうとし、差額が利益を圧迫します。それでも、コストの上昇ペースに価格の引き上げが完全には追いつかないことが多く、利益率は薄く保たれたままになりがちです。
ここで先ほどのカラクリ①が効いてきます。客単価を上げて売上は維持できても、それはコスト増を相殺するための、いわば守りの値上げです。利益を伸ばすための攻めの値上げではありません。市場はこの違いを見抜きますから、値上げで増収を続けても株価が評価されにくい、という第三のカラクリが生まれます。
外食株が売られるカラクリ④:外食は真っ先に削られる「ぜいたく」
第四のカラクリは、需要の質です。冒頭で「食への需要は景気に鈍感」と述べましたが、正確には「家で食べること」への需要が鈍感なのであって、「外で食べること」への需要は、実はかなり景気や物価に敏感です。
食事のとり方は、大きく三つに分けて考えると整理しやすくなります。家で材料から作る「内食」、惣菜や弁当を買って家で食べる「中食」、そして店で食べる「外食」です。
この三つの市場規模を比べた調査によると、内食の市場が最も大きく、外食、中食と続きます。コロナ禍を経て、内食と中食はコロナ前の水準を超えて拡大した一方、外食はコロナ前を一度大きく割り込みました。
内食・外食・中食それぞれの市場規模と将来性を調べた富士経済の調査が参考になります。
https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=23138&la=ja
ここで大事なのは、家計が苦しくなったときに何から削るか、という順番です。多くの家庭では、まず外食を減らします。週に二回の外食を一回にする、ランチを社員食堂やコンビニに切り替える、といった節約です。削られた外食需要は消えてなくなるのではなく、より安い中食や内食へと移っていきます。これがトレードダウンと呼ばれる動きです。
ここで知っておくと便利なのが、食の外部化という考え方です。家庭の中で完結していた調理を、どれだけ外部のサービスに頼るようになったかを表す言葉で、中食と外食を合わせた市場の大きさで測られます。長い目で見れば、共働きや単身世帯の増加を背景に、食の外部化は進んできました。ただし、その外部化の受け皿が外食なのか中食なのかは、景気や物価によって揺れ動きます。家計が苦しくなると、外部化そのものはやめずに、より安い中食へと比重を移すのです。
家計が苦しくなったときに何から削るか、その順番を具体的に思い浮かべてみてください。多くの家庭では、まず外食を減らします。週に二回の外食を一回にする、夜の外食をやめて家で惣菜にする、ランチを店からコンビニのおにぎりや社員食堂に切り替える、といった節約です。削られた外食需要は消えてなくなるのではなく、より安い中食や内食へと移っていきます。これがトレードダウンと呼ばれる動きです。一杯の食事に払うお金を、店からスーパーの惣菜へ、惣菜から手作りへと一段ずつ落としていくイメージです。
外食は、生活に欠かせない必需品というより、ひと手間やひとときの体験に対してお金を払う、半ば裁量的な支出です。だからこそ、物価高で家計が圧迫されると真っ先に節約の対象になります。食への総需要は安定していても、その中で外食という業態は、景気や物価の波をもろにかぶる位置にいるのです。同じディフェンシブという言葉でくくられていても、内食を支えるスーパーと、裁量的支出である外食とでは、景気感応度がまるで違うことがわかります。
コロナ禍の中食マーケットの変化を論じた資料は、外食から中食への需要のシフトを考えるうえで参考になります。
コロナ禍における中食マーケットの変化と課題|農畜産業振興機構
独立行政法人農畜産業振興機構は、農畜産業及びその関連産業の健全な発展と国民消費生活の安定のために価格安定業務,補助事業,情
vegetable.alic.go.jp
外食の売上が値上げで何とか伸びていても、その足元では客数の頭打ちという形で、このトレードダウンが静かに進んでいます。これが第四のカラクリです。
外食株が売られるカラクリ⑤:中食という追い風が、外食の客を吸い取る
第五のカラクリは、第四の裏返しです。外食から逃げた需要の受け皿になっている中食市場が、構造的な追い風を受けて伸び続けている、という点です。
日本惣菜協会の調査によると、二〇二五年の惣菜市場規模はおよそ十一兆七千億円となり、前年比でおよそ三・七%の増加となりました。原材料高や人件費の上昇という逆風の中でも、即食性や利便性に優れた惣菜への需要は根強く、市場は堅調に伸びています。
惣菜市場の最新動向は、日本惣菜協会のプレスリリースで確認できます。
(一社)日本惣菜協会
(一社)日本惣菜協会は1979年に設立された「中食」の中核となる全国規模の業界団体です。その他:【プレスリリース】2025
www.nsouzai-kyoukai.or.jp
中食が伸びる理由は、一過性の景気要因だけではありません。単身世帯や共働き世帯の増加、高齢化といった社会構造の変化が、調理の手間を省きつつ食事の質は確保したいというニーズを底支えしています。少人数の世帯では、材料を買って作るより惣菜を買うほうが食材を無駄にしにくい、という経済合理性もあります。物価が上がる局面では、外食より割安で、内食より手軽な中食が、ちょうどよい着地点として選ばれやすいのです。
しかも近年は、惣菜市場の中でも業態間で勢いの差が出ています。これまで中食を牽引してきたコンビニの伸びがやや鈍る一方で、スーパーマーケットの惣菜が市場を引っ張る存在になってきました。スーパーが惣菜の品ぞろえを強化し、内食のついでに惣菜も買う、という消費行動が定着しつつあります。コメや生鮮品の値上がりで、少人数の世帯では作るより買うほうが無駄が出ない、と評価されている面もあります。
カテゴリー別に見ると、その変化はさらに具体的です。手軽に食べられる調理パンや調理麺といった主食系が高い伸びを示し、市場全体を引っ張る構図になっています。オフィスでのランチ需要の回復や、時間を節約したいという消費者の増加が背景にあると見られます。中食のカテゴリーごとの動きを詳しく分析した資料も参考になります。
【2025年最新】中食の市場規模推移と今後の動向を徹底解説
中食市場が11兆円突破!2025年最新の中食動向を分析。成長要因、業態・商品トレンド、今後の展望まで。事業拡大・参入のヒン
crexgroup.com
つまり、外食でランチを食べていた人が、調理パンや調理麺を買ってオフィスや家で済ませる。この一杯ぶんの移動が、外食には客数の頭打ちとして表れ、中食には市場の拡大として表れているのです。同じ食事の機会をめぐって、外食と中食はゼロサムに近い綱引きをしている、と考えると、なぜ両者の株価が逆を向くのかが腑に落ちます。
ここまでをまとめると、こうなります。外食は、コスト高に直撃され、価格転嫁も難しく、景気や物価の波で客を中食に奪われやすい。一方で中食やそれを支えるメーカー、スーパーは、構造的な追い風を受けて需要を取り込んでいる。同じ「食」でも、お金とお客さんの流れがまったく逆を向いている。これが、外食株がむしろ売られる五つめの、そして最も本質的なカラクリです。
それでも「食」の中で買われているものは何か
ここまで外食の苦しさを五つのカラクリで見てきました。では、同じ「食」の中で投資家のお金はどこへ向かっているのでしょうか。大きく四つの方向に整理できます。
価格転嫁できる食品メーカーとB2B
第一は、価格を上げる力を持つ食品メーカーや、業務用に商品を供給するB2B型の企業です。
外食が値上げをためらう理由のひとつは、消費者と直接向き合っているからでした。逆に、外食やコンビニ、スーパーに対して原材料や半製品を供給するB2B型の企業は、契約や仕様の見直しを通じてコスト上昇を取引先へ転嫁しやすい立場にあります。最終消費者の値上げ疲れの矢面に立たずに済むぶん、利益率を守りやすいのです。
また、強いブランドや独自の製法を持ち、多少値上げしても客離れが起きにくいメーカーも、価格決定力という意味で投資家に好まれます。値上げが増益に直結する会社は、物価高の局面でむしろ追い風を受けます。特定の分野で高いシェアを握るニッチトップ企業は、その代表格です。地味な調味料や加工原料でも、その分野で他に代えがたい存在になっていれば、取引先は値上げを受け入れざるを得ません。誰もが知る大企業でなくても、こうした隠れた価格決定力を持つ会社は、食という巨大市場のあちこちに潜んでいます。
構造成長が続く中食・惣菜
第二は、中食や惣菜を手がける企業です。前章で見たとおり、中食市場は社会構造の変化に支えられて構造的に伸びています。外食からのトレードダウンの受け皿になりつつ、内食をしのぐ手軽さで需要を取り込む、いわば食の流れの真ん中に陣取るポジションです。
惣菜を作るメーカーや、コンビニ向けに弁当や惣菜を供給する裏方の企業は、業態としての追い風と、コンビニやスーパーという安定した販売先を持つ強みを兼ね備えています。外食のように一店一店で集客に苦しむ必要がなく、全国に広がる販売網に乗せて商品を流せるのも魅力です。家で手軽に食べたいという需要が構造的に増え続ける限り、その需要を作って届ける側は、息の長い成長を享受できる可能性があります。外食からこぼれた需要の受け皿という守りの側面と、社会構造の変化に乗る攻めの側面を、同時に持っているのです。
内食と節約の受け皿になるスーパー
第三は、内食と節約志向の受け皿になる食品スーパーです。物価高で家計が外食を控え、内食へ回帰すると、スーパーの食品販売は底堅く推移します。とくに、惣菜の品ぞろえを強化したスーパーは、内食回帰と中食拡大の両方の波に乗ることができます。
ただしスーパーは利益率の薄い商売ですから、効率的な店舗運営や独自の出店戦略で差別化できているかどうかが、投資家としての見極めどころになります。
外食の中の勝ち組――安さと立地で二極化
第四は、外食の中にもいる勝ち組です。外食が全滅しているわけではありません。むしろ、外食の中で二極化が進んでいます。
日本フードサービス協会の分析でも、相対的に価格が安いファストフードや、低価格帯のファミリーレストランが堅調だと繰り返し指摘されています。物価高で財布のひもが固くなると、消費者は外食を完全にやめるのではなく、より安い外食へと移ります。だからこそ、もともと安さを武器にしている業態や、立地と回転率で稼ぐ業態は、節約志向の追い風を受けることがあります。インバウンド需要を取り込める都市型の業態も、外食の中では明るい部類です。
二〇二五年は四月から十月まで大阪・関西万博が開かれ、関西圏の外食需要を押し上げる要因にもなりました。同じ外食でも、立地や価格戦略、インバウンドの取り込みによって、明暗がくっきり分かれています。
視点を変える:外食が「買い」に転じるとしたら
ここまで外食の弱さを強調してきましたが、投資の世界では、悪材料が出尽くした業種にこそ反転の芽が潜んでいることもあります。フェアに考えるために、外食株がむしろ買いに転じる逆のシナリオも頭に置いておきましょう。バランスよく両面を見る姿勢は、思い込みで売買して損をしないための保険にもなります。
第一のシナリオは、価格転嫁が社会に定着するケースです。値上げが当たり前という空気が広がり、消費者がそれを受け入れるようになれば、外食はコスト増を素直に価格へ乗せられるようになります。守りの値上げが、利益を伴う攻めの値上げに変わる瞬間です。長く続いたデフレからの脱却が本物なら、メニュー価格を上げても客が離れない世界が訪れ、外食の利益率はむしろ改善に向かう可能性があります。
第二は、賃上げが消費者の側にも回ってくるケースです。最低賃金や春闘の賃上げは、外食にとっては人件費という重荷ですが、同時に世の中の人々の手取りを増やす要因でもあります。物価の上昇に賃金の伸びが追いつき、実質賃金がプラスに転じれば、節約していた家庭が再び外食に戻ってきます。コストとして効いていた賃上げが、需要として返ってくる。この順番が整えば、外食は重荷を需要回復で相殺できます。
第三は、インバウンドという外からの需要です。訪日外国人は記録的な水準まで回復し、都市部や観光地の外食にとって大きな追い風になっています。国内の節約志向とは無関係に消費してくれる客層を取り込めれば、外食の中でも立地に恵まれた企業は、国内消費の弱さをはね返すことができます。
第四は、原材料高や円安の一服です。為替が円高方向に振れたり、世界的な原料価格が落ち着いたりすれば、外食のコスト構造はぐっと楽になります。コストが下がっても値上げした価格を据え置ければ、その差はまるごと利益になります。
大切なのは、これらのシナリオが現実になりつつあるのか、まだ気配にとどまっているのかを、決算の数字で確かめることです。客数が反転し始めたか、営業利益率が底打ちしたか。逆風一色に見える業種でも、数字の変化を先に捉えられれば、世間が悲観している間に仕込む、という投資の醍醐味につながります。
中食やメーカーにも死角はある
逆に、追い風を受けている中食やメーカー、スーパーにも死角はあります。買われている側を手放しで礼賛しないことも、冷静な投資家の条件です。
まず、中食もメーカーも、原材料高や人件費高という同じ逆風の中にいます。外食ほど打たれ弱くはないとはいえ、コスト増と無縁ではありません。価格転嫁が進まなければ、こちらの利益率も削られます。
次に、販売先への依存というリスクがあります。コンビニ向けに弁当や惣菜を供給する企業は、特定の大手コンビニへの依存度が高いことが少なくありません。取引先の販売政策や値下げ要請、プライベートブランドの拡大によって、納入価格を抑え込まれる可能性があります。安定した販売先は強みであると同時に、力関係しだいでは弱みにもなります。
惣菜や中食の分野は、参入が比較的しやすく、競争が激しい点にも注意が要ります。スーパーが自前で惣菜を強化したり、新しいブランドが次々と登場したりすれば、既存の惣菜企業のシェアは脅かされます。差別化できるブランド力や製造のノウハウを持っているかどうかが、生き残りを分けます。
食品を扱う以上、品質事故という共通のリスクもあります。食中毒や異物混入は、規模の大小を問わず深刻な打撃になりえます。買われている側だからといって万能ではない、という前提を忘れずに、こちらも一社ごとに弱点を点検する必要があります。
つまり、外食が一律にだめで、中食やメーカーが一律によい、という単純な話ではありません。あくまで構造的な追い風と向かい風の差があるという話であり、最後はやはり、一社ごとの数字と中身を見るしかないのです。その見方を、次の章で具体的にまとめます。
個人投資家が決算で必ず見たい5つの数字
ここまでの話を、実際の銘柄選びに落とし込んでみましょう。食関連企業の決算書を見るとき、明暗を見分けるために注目したい数字を五つに絞ってご紹介します。難しい計算は不要で、決算短信や有価証券報告書、各社の決算説明資料を見れば確認できるものばかりです。
1.既存店売上高(客数と客単価を分けて見る)
外食やスーパー、小売を見るときに最も大切なのが、既存店売上高です。新規出店ぶんを除き、前からある店だけで売上が前年を上回っているかを示す指標で、事業の本当の体力が表れます。
そして必ず、客数と客単価を分けて見てください。既存店売上がプラスでも、客単価の上昇だけで支えられ、客数がマイナスなら、それは値上げで保っている守りの状態です。逆に客数が増えているなら、その店は本当に支持されている証拠です。カラクリ①で見たとおり、外食全体は客単価頼みになりがちなので、客数がきちんと伸びている会社は希少で、評価に値します。たとえば、既存店売上が前年比一〇五%でも、その内訳が客単価一〇七%かつ客数九八%であれば、実は来店客は減っていることになります。同じ一〇五%でも、客単価一〇一%かつ客数一〇四%なら、値上げに頼らず客を増やしている優良な状態です。多くの外食企業は月次で既存店の客数と客単価を開示していますから、毎月チェックすれば、値上げの効き目が薄れて客数が落ち始める兆しを、株価が動く前に察知できることもあります。
2.原価率
売上に対して、食材などの原価がどれくらいかかっているかを示すのが原価率です。原材料高の局面では、この比率がじわじわ上がりやすくなります。原価率の上昇を価格転嫁や調達の工夫で抑え込めているかどうかが、利益を守れる会社かどうかの分かれ目です。たとえば、前の期に三十六%だった原価率が三十八%、三十九%と切り上がっているのに、決算説明では原材料高のせいだと繰り返すばかりで対策が見えない会社は要注意です。逆に、原材料が上がっている環境でも原価率を横ばいに保てている会社は、メニューの見直しや仕入れ先の分散、内製化などで上手にコストを管理している証拠です。仕入れの工夫やメニュー構成の最適化は、地味ですが利益を守る生命線になります。
3.売上高人件費率
売上に対する人件費の割合です。最低賃金が過去最大ペースで上がる中、労働集約型の外食ではこの比率が上がりやすくなっています。省人化の設備投資やセルフレジ、券売機の導入などで人件費率の上昇を抑えられている会社は、賃上げ時代を生き抜く力があります。注目したいのは、賃上げで時給が上がっているのに人件費率が悪化していない会社です。これは、一人あたりが生み出す売上、つまり生産性を高めている証拠だからです。配膳ロボットやモバイルオーダー、調理の標準化などで少ない人数でも店を回せる仕組みを持っている会社は、時給が上がっても利益を守れます。賃上げをコスト増としてだけ受け止めるのか、生産性向上のきっかけに変えられるのか。その姿勢の差が、人件費率の推移にはっきり表れます。
4.営業利益率の推移
売上がいくら伸びても、営業利益率が下がり続けているなら、それは値上げやコスト増の押し付け合いに負けている可能性があります。逆に、売上の伸びが小さくても営業利益率がじわじわ改善しているなら、その会社はコストを価格や効率で吸収できている強い会社です。単年ではなく、数年の推移で見るのがコツです。とくに気をつけたいのが、増収減益という組み合わせです。売上は値上げで増えているのに利益が減っている場合、それはコスト増を価格でカバーしきれていないサインで、まさに外食が陥りやすい状態です。決算の見出しが増収でも、利益の行を必ず確かめてください。反対に、売上はほぼ横ばいなのに増益という会社は、効率化やコスト管理が効いている可能性が高く、地味ながら投資妙味があります。
5.出店と退店のバランス
成長の中身を見るために、出店と退店の数も確認しましょう。出店だけを追うと、不採算店を抱え込んだまま見かけの売上を伸ばしているだけかもしれません。不採算店をきちんと閉め、収益性の高い立地に絞って出店している会社は、規律ある経営をしています。退店を恐れずに新陳代謝を進めているかどうかは、経営の質を映します。
この五つの数字を、これから紹介する銘柄に当てはめながら読むと、同じ「食」の中の明暗が、ぐっと立体的に見えてくるはずです。
発掘して楽しい関連銘柄5選
ここからは、これまでの話に関係する銘柄を五つご紹介します。誰もが知る大型株ではなく、少し掘り下げて初めて面白さがわかる、発掘する楽しみのある会社を選びました。いずれも、外食の苦しさの裏側で需要を取り込んでいる立場だったり、外食の中の勝ち組だったりと、今回のテーマを体現する顔ぶれです。
各社のみんかぶのページを銘柄ごとに付けていますので、株価やチャート、業績予想を確認しながら読んでみてください。なお、ここで触れる業績や株価の数字は執筆時点で確認できた範囲のものであり、最新の状況や正確な数値は必ずご自身で各社の開示資料を確認してください。特定銘柄の売買を勧めるものではありません。
①わらべや日洋ホールディングス(2918)
最初にご紹介するのは、コンビニの棚を裏から支える中食の黒子、わらべや日洋ホールディングスです。一九六〇年代創業の老舗で、全国の工場で二十四時間体制でおにぎりや弁当、調理パン、惣菜などを製造し、コンビニへ供給しています。とりわけ最大手コンビニ向けの売上比率が高いのが特徴です。
この会社は、今回のテーマをほぼ完璧に体現しています。外食が客を中食に奪われて苦しむ一方で、その中食を作っている黒子は、コンビニという安定した販売先を背景に、原材料高を価格に反映する力を発揮しました。報道によれば、同社の株価は二〇二五年の半年ほどで一・八倍ほどに上昇したとされ、業績面でも増収増益が続いたと伝えられています。外食の値上げが守りなら、こちらは販売先への価格転嫁が利益増につながる攻めの値上げに近い構図です。同社は近年、採算の合わない工場を閉鎖し、生産体制を効率化する取り組みも進めてきました。さらに、北米など海外でのコンビニ向け製造にも展開しており、国内の中食拡大に加えて成長の余地を持っています。着眼点としては、最大手コンビニへの依存度の高さが安定と隣り合わせのリスクである点、工場の稼働率や生産性の改善が利益率にどう効いているか、といったところを見ていくとよいでしょう。コンビニ弁当の値上げに少し驚いた経験のある方なら、その値上げが誰の利益になっているのかが見えてくるはずです。
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わらべや日洋ホールディングス (2918) : 株価/予想・目標株価 [WNH] – みんかぶ
わらべや日洋ホールディングス (2918) 今日の株価、予想(AI株価診断など)、チャート推移、ニュース、その他にも今後の
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②ロック・フィールド(2910)
二社目は、デパ地下惣菜の代名詞ともいえるロック・フィールドです。サラダやフライ、コロッケなどの洋惣菜を中心としたブランドを百貨店や駅ビルで展開しており、惣菜を上質な中食として確立してきた会社です。冷凍の惣菜ブランドにも力を入れています。
中食市場の中でも、即食性に加えて「ちょっといいもの」を求めるニーズの受け皿になっているのがこの会社の立ち位置です。物価高で外食を控えても、家でちょっと贅沢をしたい、手間はかけたくないという需要は根強く残ります。そうした気分のトレードダウンを取り込めるのが惣菜専門店の強みです。一方で、惣菜は新興勢力の参入も相次ぐ競争の激しい分野ですから、ブランド力や立地の質を保てるかが見どころになります。同社は冷凍惣菜という新しい売り方にも力を入れており、店頭での購入だけでなく、家庭の冷凍庫を起点とした需要の取り込みを狙っています。中国での展開も持っています。着眼点としては、主力の販売チャネルである百貨店や駅ビルの集客力に業績が左右されやすい点、そして冷凍など新業態が利益の柱に育つかどうかです。決算では、客数や客単価の動き、そして百貨店という販売チャネルの集客力を合わせて見ると面白いでしょう。
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ロック・フィールド (2910) : 株価/予想・目標株価 [ROCK FIELD] – みんかぶ
ロック・フィールド (2910) 今日の株価、予想(AI株価診断など)、チャート推移、ニュース、その他にも今後の見通しや買
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③ケンコーマヨネーズ(2915)
三社目は、業務用調味料という、まさに食の黒子の中の黒子、ケンコーマヨネーズです。社名のとおり業務用マヨネーズが出発点ですが、現在はドレッシングや卵加工品、サラダや惣菜まで幅広く手がけ、外食チェーンやコンビニ、量販店へ供給しています。
この会社が面白いのは、外食にもコンビニにもスーパーにも商品を納めているため、食の流れがどこへ向かっても恩恵を受けやすい点です。外食が好調ならその厨房に、中食が伸びればコンビニやスーパーの惣菜に、自社の調味料や加工品が使われます。いわば、食という金鉱で誰が掘り当てても売れる、つるはしとシャベルを売る立場に近いビジネスです。投資の世界で言うピック・アンド・シャベル戦略の好例として考えると、理解が深まります。B2B企業ですから、原材料高をどれだけ取引先に転嫁できているか、原価率と利益率の推移に注目するのがよいでしょう。とくにこの会社は卵を大量に使うため、鳥インフルエンザなどによる卵相場の急変が業績の振れにつながりやすい点は、覚えておきたいリスクです。外食やコンビニ、量販という幅広い販売先のどこが伸び、どこが鈍っているか、納入価格の改定が利益にどう反映されているかを追うと、食の流れ全体を映す鏡のように使えます。
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ケンコーマヨネーズ (2915) : 株価/予想・目標株価 [KMC] – みんかぶ
ケンコーマヨネーズ (2915) 今日の株価、予想(AI株価診断など)、チャート推移、ニュース、その他にも今後の見通しや買
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④ハローズ(2742)
四社目は、内食と節約の受け皿である食品スーパーから、岡山や広島など瀬戸内沿岸を地盤とするハローズです。二十四時間営業を主体とする食品スーパーを地域に集中して出店するドミナント戦略で知られ、長年にわたって増収を続けてきた、知る人ぞ知る優良企業です。
スーパーは利益率の薄い業界ですが、ハローズは特定地域に店舗を密集させて物流や認知の効率を高め、二十四時間営業で来店機会を広げることで、地道に成長を重ねてきました。物価高で外食を控え、内食へ回帰する流れや、惣菜という中食の拡大は、地域スーパーにとって追い風になりえます。全国区の知名度はありませんが、こうした地方のローカルチェーンにこそ、効率経営に裏打ちされた成長が眠っていることがあります。地域に深く根を張るドミナント戦略は、配送効率や知名度で優位を生む一方、地盤とする地域の人口動態や、ディスカウントストアや業務用スーパーといった新たな競合の進出には影響を受けます。出店と退店のバランス、既存店の客数、そして地域での競争環境を確認しながら見ていくと、銘柄発掘の醍醐味を味わえるはずです。地元のスーパーが実はずっと増収を続けている優良企業だった、という発見は、生活者の目線が投資に生きる好例でもあります。
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ハローズ (2742) : 株価/予想・目標株価 [HALOWS] – みんかぶ
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⑤ハイデイ日高(7611)
最後は、外食の中の勝ち組を代表して、首都圏で熱烈中華食堂日高屋を展開するハイデイ日高です。直営中心で数百店規模を持ち、低価格と都市型の好立地を武器にしてきたチェーンです。
外食が一様に苦しいわけではない、という今回の二極化の話を、最も分かりやすく示してくれるのがこの会社です。物価高で消費者が外食を完全にやめるのではなく、より安い外食へ移るとき、もともと安さを売りにしている業態は受け皿になります。駅前や繁華街の人通りの多い立地で、手頃な価格と高い回転率で稼ぐビジネスは、節約志向の中でも底堅さを発揮しやすいのです。一方で、最低賃金の上昇は労働集約型の外食に重くのしかかりますから、人件費率をどう抑えるかは引き続き課題です。この会社は都心の駅前やオフィス街への依存度が高いため、在宅勤務の広がりや、人々がどれだけ街へ出てくるかという人流の回復度合いも、業績を左右します。逆に言えば、オフィス回帰やインバウンドで都心の人通りが戻れば、その恩恵を受けやすい立地でもあります。安さで戦う会社が、賃上げ時代にどう利益率を守るのか。その答え合わせをしながら決算を読むと、外食という業態の難しさと面白さの両方が見えてきます。
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ハイデイ日高 (7611) : 株価/予想・目標株価 [HIDAY HIDAKA] – みんかぶ
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日常の観察を投資のヒントに変える
ここまで数字や指標の話をしてきましたが、食の銘柄を発掘するうえで、実は私たちの日常そのものが、とても優れた情報源になります。著名な投資家の中には、消費者として身近に観察できることこそ、専門家のレポートに勝る生きた情報だと説く人もいます。食は、まさにその観察が誰にでもできる分野です。
たとえば、いつも行くスーパーの惣菜売り場が、いつの間にか広くなっていないでしょうか。コンビニの弁当やおにぎりの種類が増えたり、価格が静かに上がっていたりしないでしょうか。お気に入りの定食屋の盛りが、少しだけ減った気がしないでしょうか。ランチタイムに、オフィス街の安い中華や立ち食いそばに行列ができていないでしょうか。こうした小さな気づきは、すべて今日お話ししたカラクリの現れです。惣菜売り場の拡大は中食の追い風を、盛りの減少はステルス値上げを、安い店の行列はトレードダウンを、それぞれ物語っています。
大切なのは、その気づきを「へえ」で終わらせず、「これを作っているのはどこの会社だろう」「この値上げで得をするのは誰だろう」と一歩踏み込むことです。コンビニのおにぎりの製造者表示を見れば、裏方のメーカーの名前がわかります。よく行くスーパーが上場企業なら、その業績を調べてみる。気になった会社が見つかったら、今日紹介したみんかぶのようなサイトで株価や業績を確認し、決算資料で既存店の客数や利益率を点検する。この流れを習慣にすると、街を歩くこと自体が銘柄探しになります。
もちろん、身近な観察だけで投資を決めるのは危険です。一店舗の印象が会社全体を代表しているとは限りませんし、自分の好みが市場全体の好みと一致するとも限りません。観察はあくまで出発点であり、最後は必ず数字で裏を取る。この順番を守れば、生活者としての実感と、投資家としての分析が、うまくかみ合っていきます。専門家ではない個人投資家にとって、毎日の食卓や買い物の風景は、誰にも負けない情報のアドバンテージになりうるのです。
まとめ:「食」をひとくくりにしない目を持つ
最後に、今日の話を整理します。
「食はディフェンシブだから安心」という言葉は、半分は正しく、半分は危ういものでした。食への需要そのものは確かに安定しています。しかし、その安定した需要をめぐって、メーカー、卸、スーパー、コンビニ、外食がパイを奪い合い、原材料高や人件費高の負担を押し付け合っています。同じ「食」でも、力関係しだいで潤う会社と削られる会社にくっきり分かれるのです。
外食株がむしろ売られるカラクリは、五つに整理できました。一つめは、増収の正体が値上げによる客単価上昇で、客数という実需はもう伸びていないこと。二つめは、原価・人件費・光熱費・家賃という四重苦がそろって利益率を削ること。三つめは、消費者と直接向き合うがゆえに、最後の値上げに踏み切れないこと。四つめは、外食が景気や物価の波で真っ先に削られる裁量的な支出であること。五つめは、外食から逃げた需要を、構造的な追い風を持つ中食やスーパーが吸い込んでいることです。
だからこそ、同じ「食」の中でも、価格転嫁できるメーカーやB2B、構造成長が続く中食、内食と節約の受け皿になるスーパー、そして外食の中でも安さと立地で勝つ二極化の勝ち組に、投資家のお金は向かっています。今日ご紹介したわらべや日洋ホールディングス、ロック・フィールド、ケンコーマヨネーズ、ハローズ、ハイデイ日高は、いずれもその流れのどこかに、しっかり足場を持つ会社です。
改めて並べてみると、五社それぞれが今日のカラクリのどこに位置しているかが見えてきます。わらべや日洋とロック・フィールドは、外食から逃げた需要を受け止める中食の担い手です。ケンコーマヨネーズは、食の流れがどこへ向かっても商品が使われるB2Bの黒子です。ハローズは、内食回帰と節約志向の受け皿となる地域スーパーです。そしてハイデイ日高は、外食の中でも安さと立地で戦う二極化の勝ち組です。外食という一業態の苦しさを入り口にしながら、その周りで需要を取り込む会社へと視野を広げていく。この発想こそが、今日いちばんお伝えしたかった考え方です。もちろん、これらが唯一の正解というわけではありません。同じ発想で探せば、まだ世に知られていない有望な会社が、ほかにもきっと見つかるはずです。
そして、明暗を見分ける道具として、既存店売上を客数と客単価に分けて見ること、原価率、売上高人件費率、営業利益率の推移、出店と退店のバランスという五つの数字を挙げました。これらを手にすれば、「食はディフェンシブ」という大ざっぱな言葉に頼らず、一社一社を自分の目で評価できるようになります。
「食」をひとくくりにせず、その箱の中の力関係を読む。それができるようになると、世間がディフェンシブだと安心している裏側で、本当に強い会社を発掘する楽しみが生まれます。コンビニのおにぎり、デパ地下の惣菜、近所のスーパー、駅前の中華。あなたの毎日の食卓の風景の中に、次に伸びる一社のヒントが、きっと隠れています。
最後にもう一度だけお願いです。この記事は特定の銘柄の購入を勧めるものではなく、投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。気になった会社があれば、必ず最新の決算資料や開示情報を確認したうえで、ご自身でじっくり調べてみてください。銘柄を掘り当てる過程そのものが、何より楽しい投資の醍醐味です。

| 銘柄コード | テーマ関連性 | 備考 |
|---|---|---|
| 2918 | 同じ「食」でも明暗が割れる――外食株がむしろ売られる、意外な関連 | 本記事で言及 |
| 2910 | 同じ「食」でも明暗が割れる――外食株がむしろ売られる、意外な関連 | 本記事で言及 |
| 2915 | 同じ「食」でも明暗が割れる――外食株がむしろ売られる、意外な関連 | 本記事で言及 |
| 2742 | 同じ「食」でも明暗が割れる――外食株がむしろ売られる、意外な関連 | 本記事で言及 |
| 7611 | 同じ「食」でも明暗が割れる――外食株がむしろ売られる、意外な関連 | 本記事で言及 |



















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